clock2014.10.01 09:02
SERVICE
home

第0回(番外編):本を書くとはどういう事かを振り返る/「会社を強くするビッグデータ活用入門」を振り返る

AUTHOR :  網野 知博

342
網野 知博
eyecatch_book_readwith

たいして売れていない自分の本を、あえて振り返ってみる

私は2013年の11月下旬に著書「会社を強くするビッグデータ活用入門」を出版致しました。準実用書と言う位置づけで出版しており、商業的には成功も失敗もしていない予定通り淡々と細々と出荷されている本ですが、読んでもらう人を明確に定義したため、”読んで頂いた方からは”比較的好評を得ております。

この本のおかげで、企業向けのクローズドセミナーも含めて多数のセミナー講演をさせて頂きました。また、この本で記載しましたデータ活用のVery Basicな部分に共感を持って頂き、案件のご相談も頂いております。タイトルに「ビッグデータ」と言うある種の流行ワードを使いながらも、実は良くも悪くも全く流行の先端を追っておらず、昔からある古くて新しい”とっても基礎的な部分”だけを触れているため、1年経った今も変わらないまま古くて新しい問題として読んで頂けているようです。笑

会社を強くする  ビッグデータ活用入門  基本知識から分析の実践まで

本を書くと言う事を振り返る

初回にも関わらず、いきなり本の内容に関する本論に入らずに、初回から番外編と言う事で「本を書くと言う事がどういう事なのか」を振り返ってみようと思います。笑

もともと文章を書く事はあまり苦手ではなく、今までも東洋経済のTHINK!に8,000文字程度の寄稿記事を2度程書くなど、多少は文章を書いては来ましたが、自分で本を出す事になるとは想定していませんでした。では、本を出すきっかけは何だったのか? 世の著名人ならいざ知らず、このような凡人がなぜ本を書くことになったのか?結論から言うと、たまたまです。笑

出版社から声をかけられる

その日は突然やってきました。初夏を迎える6月下旬のこと。最高気温26度、湿度73%と比較的と過ごしやすい日の夕方の事です。今まではメールでの適当なやり取りだけさせて頂いていた日本能率協会マネジメントセンターの久保田女史は初対面の日にとっても無茶な事を言い始めました。

「ビッグデータ流行ってきていますよね。実は弊社もビッグデータの本を出したいと考えております。ビッグデータ本は既に数冊出版されており、出版数を重ねる毎に、より深くおもしろいものがでてきています。でも、読んでおもしろいなー、と言う本ではなくて、実務担当者が実戦に役立ててみようと言う本を出したいと考えています。御社(ギックス)のホームページを見たら、相棒総研とか、市場調査課とかおもしろくて分かりやすい記述が多く、この人達だったら、難しいビッグデータを分かりやすく書いてくれるのではないかと思って訪ねて来ました。」

私は心の中で思いました。「いやいや、それは3つの無理が。。。」

  1. 「ギックス総研のソーシャルリスニングレポートは、レポートとして内容をおもしろくする事が目的だからおもしろく書いているけど、本は何かを主張し伝えるものだし、役割違うでしょ。」
  2. 「しかも、ギックス総研のおもしろレポートを書いているのは大半が田中氏だし。」
  3. 「それに、極めつけとして、俺は、実はビッグデータって言葉が嫌いなんだもん。」

しかし、そこは非常に大人な対応。弊社の田中からも、常に周囲の皆様に優しく対応するように嗜められています。そこで、(笑顔で、)「それはもの凄くチャレンジングな内容ですね。」と答えてみました。ちなみに、コンサルティングの世界では、「チャレンジングな内容ですね」とは「え、、それは無謀と言うか、結構無理な感じですよね。」と言う事を意味する大人ワードです。ところが、業界のルールを知らないのか、空気を読まない方なのか、強引な方なのか、やり手の編集者だからか分かりませんが、多少話が盛り上がった瞬間を久保田女史話は逃しません。「なんか丸投げですみませんけど、じゃあ、とりあえず、企画書を書いてみて下さいよ。」と言う無茶な一言を押し込んで帰り支度をしていきます。

「実際に企画が通ったら、後でちゃんと考えよう。」と言う感じでやっつけ仕事で書いた企画がそのまま通ってしまい、まさに夏本番を迎える瞬間に暑い日々が始まろうとしておりました。当時は「まあ、なんとかなるだろう。」と思ったのですが、まさかその後、あんなに大変な時間を過ごす事になろうとは思ってもおりませんでした。THINK!の記事が1万文字で1〜3日程度で仕上がっていたので、じゃあ、15万文字なら1ヶ月もあれば楽勝だな、程度に思っていたのですが、自分の見込みと見積能力の低さを呪う事になります。

お作法を知らない事による紆余曲折

今から思えば、本を書く入門書みたいなものに目を通しておくべきだったのかもしれませんが、当時は通常のコンサルティングレポートと同じ論理構成で書いて行けば良いよね、程度に甘く見ていました。そして、まず一番最初のテーマで悶々とする日を過ごします。(数日ですが・・・)

手段を主役に据える事の気持ち悪さ

「ビッグデータ」をテーマにした本と言われて、正直何を書いて行くべきか迷いました。ギックスの基本アプローチとして「アナリティクス」や「ビッグデータ」はあくまで手段であり、主役はビジネス。つまり経営や事業の高度化が主役であり、「アナリティクス」や「ビッグデータ」なんて所詮手段の脇役にすぎないと言うスタンスです。そこに突然、手段の位置づけである「アナリティクス」や「ビッグデータ」にスポットライトをあてて、彼らを主役として本を執筆する事なんてこの自分にできるのか?

実はそこからしばらく迷走期間が始まります。「自分が何を書きたいか?」ではなく、「自分が何を書くべきなのか?」が先行してしまいます。また、実は15万~20万文字程書かなくては行けないのではないかと言う勝手なプレッシャー。「何を書かなくては行けないのか」と言う思いばかりが先行して来ます。

  • ターゲットとなる読者は?
  • 目次構成は?
  • 何を主張したいのか?

正論を考えようにも、頭の中に様々なアイデアが産まれては、消えて行きます。書いてはボツの繰り返しが2週間程続いたある日。ここで転機が訪れます。アクセンチュア時代の恩師である三谷宏治さんの登場です。2013年7月下旬の夏真っ盛りのこの日、起業祝いをかねて三谷さんが私と田中(弊社共同経営者)をランチに誘ってくれました。三谷さんは本を何十冊も執筆され、そして「経営戦略全史」と言う大ヒット作を出されたばかりのタイミングでした。

起業したばかりの弊社に事業などの重要なアドバイスを頂いた後に、本の執筆に関してそれとなく相談してみます。ご馳走になっていた天ぷらのコースも佳境にさしかかったその時、目からウロコが落ちるクリティカルヒットの回答が得られます。

本を書くと言う事

「僕も昔はそうだったんだけど、コンサルタントが書く本はさ、良い事とか凄い事をいっぱい入れようとし過ぎて分かりづらいのよ。でも、言いたいメッセージは多くても3つ、できれば1つ、伝えたい事だけを色々な確度から、手を変え品を変え分かりやすく伝えて行く。それが一番分かりやすいし、読んだ人にも伝わる。それに、色々なメッセージをたくさん書いたって、読んでもらえなければそもそも伝わらない。コンサルタントは内容が浅いと思わることの恐怖が付いて回るが。そこは気にせず、非常に簡単に、とにかく伝えたいことを絞って、それを徹底して伝える事。文字数も、今時20万文字とかの本は読者は読まない。8万文字とか、多くても10万文字とかの方が読んでもらえると思うよ。原点に戻ってみなよ。コンサルタント時代の報告書と一緒だよ。伝えたいメッセージを絞ってそれをシンプルに伝えて行く。」

その時本当にほっとしました。五里霧中の状況から、ぱっと霧が晴れた気分です。今回の本が三谷さんにアドバイスを頂いたレベルまで昇華されているとは全く思いませんが、それでも、当時は心理的なハードルが下がった事は事実です。出版社が何を出したいか、もしくは読者が何が知りたいか、を一旦無視して、自分が何を伝えたいかを先に考えてしまう。完全にプロダクトアウト2.0の発想で考えて行くと、今まで「書いては捨て」の繰り返しだった執筆作業のスピードが一気に上がり、実質3週間弱程度で原稿を仕上げる事ができました。

割り切りと拘り

割り切りの一つ目は、ビッグデータを主人公ではなく、手段においた事です。自分やギックスの本来の哲学を貫きました。

「ビッグデータ」と言うタイトルを語っておきながら、所詮は手段に過ぎないよね、と言い切ってしまうのは、それはそれで勇気がいりました。だって、それタイトルだけで買った人を欺く事になりそうだから。でも、私が10年近く携わって来たプロフェッショナルサービス業の観点からは、主人公は「事業」や「経営」であり、「ビッグデータ」はそれを高度化したり強化したりするための一つの手段に過ぎないと言う主張はやはり曲げられないものでした。その時点で、この本を読んで頂くのは経営企画部や営業企画部、マーケティング企画部などの分析の実務を回して頂きたい事業企画部署の方々であると言うことも明確になりました。

すると何が書きたいか。結局私が言いたいのはたった2つです。

  • 企業が一番強くなるポイントでビッグデータを使え。
  • 大量データであってもデータをタイムリーに収集分析できる利点を生かして事業構造を正確に把握し、PD(CA)∞サイクルを高速に何度も回せ。

一つ目の一番強くなるポイントでビッグデータを使えでは、「儲け話のメカニズム」と「キードライバー」が鍵になります。事例収集などをしていても、ビッグデータ活用でキャッチーな事例は多くはありますが、それが事業や経営の高度化であったり、競争力の強化に寄与したものはどの程度あるのか。ビッグデータの活用の仕方が凄いから事業が成功したとなるには、事業上強化して意味がある部分(業務やプロセス、事業領域)に注力するのが一般的です。大学入試で言えば、私立理系を受けるのに、国語や日本史を必死で勉強する人はいないでしょうし、国立でも200点の教科と100点の教科では時間の掛け方は異なるはずです。もしビッグデータを活用して何かをすると言う選択を選ぶなら、そこは自社の競争力強化につながる場所であるべきと考えています。

二つ目はシンプルな分析でも良いから正確に事業構造を理解して打ち手の方向性を考えて行こうよ、それを素早くトレースしてPD(CA)∞サイクルを高速に何度も回して地道に強化して行こうよと言うことになります。昨今は統計解析がブームになりつつあります。ですが、統計に行く前に、加減乗除の世界でもまだまだ有用な分析がある事も事実です。加減乗除を終えてからで無いと統計に行っては行けない訳ではありませんし、それぞれ求められる領域が異なるのでどちらも大切なのですが、それでも基礎的で当たり前な分析からも多くの事がまだまだできると言う事を知って頂きたい、と言うのが二つ目のメッセージになりました。

読んで頂いた読者やセミナーでの質問を答えるうちに、今から振り返るとまだまだ書ききれていない面も多く見えてきましたが、それらを振り返りながら補足して行こうと思います。

次回に続く。

SERVICE

SERVICE

BANNER

graffe

grip

GiXo BLOG

recruit

Aibou

amazon web service partner network

TAG BOX