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ギックスの本棚 古典を回想する/経営パワーの危機 会社再建の企業変革ドラマ

AUTHOR :  網野 知博

事業企画者必読の一冊

”経営パワーの危機 会社再建の企業変革ドラマ” 三枝匡
経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

初心者が読みやすいビジネス書と言われたら、未だに三枝匡氏の三部作を推薦する方も多いのではないでしょうか。私も三枝三部作はとても気に入っており、事業会社の経営企画時代は事業計画を作る際に必ず三枝三部作のどれかを読んでから事業計画作成に入ったものです。笑

三枝三部作の中で本日紹介するのは『経営パワーの危機 会社再建の企業変革ドラマ』になります。

この本を特に読んで頂きたいのは「経営企画部」になります。三枝三部作に共通する事ですが、本書もまた小説仕立てなのでとても読みやすいのですが、ページ数が多く長いという難点があります。内容はおもしろい本なので、休日に1日もあれば読み切れてしまいますが、特に意識して読んで頂きたい点は「あまりにも当たり前の商売の基本サイクル」になります。

製造業にとっての商売の基本があります。

「開発⇒生産⇒営業⇒客先(アフターセールス)」

商売は「作って、売って、お客の要望を聞き、そこで商品を改善して、またそれを作って、売って、改善して、、、」と言うサイクルを回すのが原点。

本書では、「創って(開発)、作って(製造)、売る(販売)」と表現されております。はっきり言って「名言」です。この「創って(開発)、作って(製造)、売る(販売)」の何たるかを具体的に知り、擬似的に学ぶためにこの500ページにも及ぶ物語と小説が存在しているのです。

「創って、作って、売る」の循環をがんがん回せる企業が強くなり、がんがん回せない企業は弱くなる。実はこの考え方は製造業のみならず、サービス業でも当てはまりますし、同じコンサルタントや事業企画部署が作る戦略にも当てはまります。

「戦略を創って、実行計画を作って、実際に実行する。」

そのため、私はコンサルティングを行う際にはいつも頭の中で「創って、作って、売る」と言う言葉がぐるぐると回っております。そのくらい私にとっても影響力のある言葉です。そして、 実は我々が提唱している大きなPDSサイクル/小さなPD(CA)∞サイクルは「創って、作って、売る」に発想の起源があります。

本書の紹介では、「創って、作って、売る」を紹介したらほぼ全てと言ってしまってよいのですが、もう一つだけ言及したい点があります。4章の後半にさらっと出て来る節になります。

「ビジネスはドラマだ」

本部より抜粋。

 皆が取り組んでいることにストーリー性があるんだ。本人たちは改善のシナリオなんて呼んでいたけど。一人の話が、前の人の話と必ずどこかでつながっているんだな。だから、聞いて行くと、カチカチ山じゃないが何か紙芝居を見ているみたいに会社全体が一つの物語で包まれているようなイメージを受けたんだ。
最近の経営に欠けていたのは、このストーリー性だと。昔は私も「ビジネスはドラマだ」なんていっていたくせに、いつのまにかそれがなくなっていたんだよ。そのドラマというかシナリオを作り出すのは、結局トップ一人のリーダーシップしかないということだね。

私も自分の書籍の中で「儲け話のメカニズム」と「キードライバー」と言う言葉を使っておりますが、ここで書かれている「ストーリー性」「シナリオ性」も同様の意味合いだと認識しています。

「創って、作って、売る」と言う企業の当たり前の活動にも、その企業の強み、競合企業との相対差、市場環境などを鑑みて、それこそ勝てる戦略を創っていくのですが、その戦略には「ストーリー性」「シナリオ性」があることが望ましいわけです。

この「ストーリー性」「シナリオ性」は、その時々で変わりゆくものなので連続性の中で体験すると良いのですが、こうしたものはなかなか体験できるものではありませんし、戦略書などであるように、スナップショットでその時の断面を切り、ケーススタディで紹介されてもなかなか「ストーリー性」「シナリオ性」を体験できるわけではありません。ですが、この小説は500ページと非常に長いのですが、これらを擬似的に体験することで理解して行くことができますので、是非一読をお勧め致します。

 

経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)
経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

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