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ギックスの本棚/ネアンデルタール人と私たちの50万年史 そして最後に人が残った

AUTHOR :  網野 知博

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網野 知博
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ビジネス書だけでは得られない「気づき」を得られる
一冊

そして最後にヒトが残った―ネアンデルタール人と私たちの50万年史

「ヒト」の進化で「ビジネス」を推敲する

 本書はタイトル通り、ビジネス書ではなく、ジャンルで言えば、生物学であり、生態学、考古学、人類学でもあります。では、なぜそのような本をギックスの本棚で紹介するのでしょうか。

 書籍にはいくつかのタイプが存在すると認識しています。近年の「忙しい」、「時間がない」が口癖になっているビジネスパーソンにとっては、直截的に具体的なノウハウが得られる書籍に人気が集まっているように思えます。書店の人気ランキングなども、”その手”の自己啓発本などが多数存在しています。
 一方で、鋭い考察から抽象化を試みたハイレベルのコンセプトを軸とした書籍もあります。それらの本は解釈や知識の活用方法を読者にゆだねるタイプであるとも言え、言わば「読み手のスキルとセンス」に多くを委ねる本になります。
 本書は生物学の本でありながら、読み手に応じて、「ヒト」ではなく、「企業」の進化と生き残りと捉えるとどうなるでしょうか。本書は「ヒト」の進化の道筋を類人猿から現代人に至まで、1000万年にわたり解説したものになりますが、「ビジネス」を推敲するに十分な示唆を提供してくれます。

 

私たちはどうして生き残ることができたのか

 

 まずは「はじめに」にて、ぐっと心を鷲掴みにする一文が出て来ます。

私たちはどうして生き残ることができたのだろうか?
この問いに対しては「能力と運のおかげ」と答えたい。私たちが適切な時に適切な場所にいることができたのは、ただ運が良かったからにすぎない。この考えに私はいつもはっとさせられ、自分の身の丈を思い知らされるのである。

 生き延びたスタートアップ企業と死に絶えたスタートアップ企業の差はなんであったのでしょうか?多くの企業は与えられた環境でうまく対応しようとしてきたのにも関わらず。生き延びるには十分な能力があったはずの企業も、運によって死に絶えていることは往々にして起こりえます。
 「ヒト」の進化の過程を見る事で、ビジネス生態系への適用を考える事は無謀な試みとは思いますが、それでも生物学から経営学に引き摺り込むのに十分な文章が続きます。
 少なくても、私は35ページほどにわたる「プロローグ」を読む事で思考が、生物学からビジネス生態系へと切り替わってしまいました。

一般に信じられているのとは反対に、歴史は繰り返されない。生命が歩んできた道筋は歴史的・文化的情報の蓄積と消失によって形作られる生き残った物だけを見れば、生命は絶えず発展を続けて来たと考えてしまいがちだ。だが、生命の物語をみても、原始的なものから高等ななものへの直線的な変化は読み取れない。
コンサバティブとイノベーター。コンサバティブは現状維持を望み、イノベーターは何度でも繰り返し役柄をつくり変える能力を持つ。未来が今とあまり変わらない場合はコンサバティブが成功する。反対に、予期せぬ変化が続く場合は、一握りのイノベーターが大成功をおさめるが、残りの多くはコンサバティブと共に姿を消す。
イノベーターとコンサバティブは別の所にいるわけではない。イノベーターはコンサバティブの両親から生まれるし、イノベーターはやがて新しいやり方に慣れてしまい、コンサバティブになろうと努める。未来が分からないとなれば、できるだけ現状にあわせようと努力するが、背景が突如として変わった時には、そうした努力そのものがコンサバティブを滅亡へと導きかねない。
 これらの文章を読むと、主語を「企業」に置き換えても、「ビジネスパーソン」に置き換えてもまったく違和感がないのではないでしょうか。
まず、イノベーターであっても、全員が成功する訳ではない。イノベーターとして違うポジションを築きに行き、その能力もあり、それでも新たな世界で生き残るのは一握り。うまく生き延びた企業はそこに運があった。激変の世界で生き延びた企業だけを見れば、それはイノベーターであったのでしょうが、イノベーターが全員生き延びた訳ではない。残りの多くはコンサバティブと一緒に死に絶える。
 また、大企業が社員に対してベンチャースピリットを持て、などと言うこともありますが、それも全くナンセンスであることも創造できます。つまり、大企業に入る程のとても優秀な能力を持ったヒトは、そこの生態系で最も効率的に効果的にうまく生存することに適合していくわけです。むしろ、そのような環境化において、決まったモノゴトを効率的・効果的に行わないヒトははっきり言って劣等で淘汰される側の弱者に他なりません。ですが、既存の能力を持ち得ないが、そこで生存しようとするイノベーターが現れ、そこで試行錯誤をはじめる。そして、たまたま彼らに有利になる環境変化がおこった際に、彼らが主役となり生き延びることができる。

弱者こそが生き残る

気候変動を受けて生息範囲が縮小したり、場所が変わったりしたとき、中心部を占領していた集団は、望ましい環境を追って移動するか、絶滅するしか無かった。その集団はコンサバティブだったのである。一方、崖っぷちにいた集団は、気まぐれな環境に絶えず適応する必要があった。したがって、どんな事でもこなさなければならない。厳しい状況が続いた時に最もうまくやっていけるのが、そうした「なんでも屋」(つまりイノベーター)で、その成功により数は増加し、生息範囲も広がって行った。
 まさにこの一文からは大企業と創業間もないベンチャー企業の戦い方にも通じる所もあります。ベンチャー企業は生き延びる事自体がイノベーションにつながり、そして環境変化が起こるとともに、虎視眈々とその主役の座を奪う事を狙い続けています。ですが、全てのベンチャー企業が主役の座に立てる訳でもない。

 決してドンピシャのビジネス書ではありませんが、生物学の知的好奇心を満たすだけでなく、「ヒト」の進化からビジネスやベンチャー企業の生き抜き方にまで考察を広げることもできるため、時間が取れる休日などに一気に読むには適した本ではないでしょうか。

そして最後にヒトが残った―ネアンデルタール人と私たちの50万年史
そして最後にヒトが残った―ネアンデルタール人と私たちの50万年史

 

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