戦コンスキルは起業に役立つか?(4):行動規範①ファクトにこだわる

AUTHOR :  網野 知博

第4回 戦略コンサルタントの行動規範①:ファクトにこだわる

 この記事は戦略コンサルタントとしての経験が起業の役に立つのかという問いに答えるために、「私がコンサルタント時代に得た教え」をあくまで主観をもとに共有することで、各自の判断材料にして頂くという企画になります。

 そのために、戦略コンサルタントがどのような「前提」で、「心構え」で、「行動規範」で仕事を行っているのかを知って頂くことを狙いとしています。

 今回は第4回目になります。前回は「コンサルタントの心構え」という観点で説明してきました。

 前回の説明により、戦略コンサルタントがワークホリックで、ナルシストで、しかも思い込みが激しい非常識な勘違い集団なので、世間から見たら「気持ちの悪い連中」であることがばれてしまいました。(笑)

 今回から戦略コンサルタントの7つの行動規範に関して説明していきます。

 「行動規範」とは何か

 行動規範とは、ある状況において、どのような行動が適切なのかを定めたものです。つまり、「どのように行動すべきか、もしくは、行動しないべきかの基準」になります。

 戦略コンサルタントとしての行動規範とは、大それた言い方をしてしまえば、戦略コンサルタントとしてどのように行動していくべきか、という基準になります。

 もっと分かりやすく言ってしまえば、戦略コンサルタントとして何にこだわるべきか、とも言えるでしょうか。

 私は入社してから強く感じたのですが、プライベートで付き合うには戦略コンサルタントはもの凄く面倒くさい生き物であるという事です。(笑)

 とにかく、色々な事にこだわります。そして、色々な事も気にします。そして、もはや職業病でしょうが、色々なことに気づいてしまう。

 「そんなのどうでもいいじゃん。」という事が通じない。結局は色々な事にこだわり、こだわる事に対して努力を惜しまないのが戦略コンサルタントであるため、それはある意味避けられない事なのかもしれません。

 そのため、「何かにこだわること」が戦略コンサルタントの行動規範になります。

まずは7つの行動規範をあげてみましょう。

①ファクトにこだわる

②論理にこだわる

③仮説にこだわる

④スピードにこだわる

⑤学びにこだわる

⑥成果物にこだわる

⑦視座にこだわる

「ファクト」とは何か

 「Fact」、「ファクト」

 日本語に訳せば「事実」になります。そして、事実とは、実際に起こった事柄、現実に存在する事柄と言う意味になります。コンサルタントになった時に、とにかく「ふぁくと、ふぁくと」言われていました。日本語では理解しているつもりのこの言葉も、コンサルタントになりたての時には分かったつもりでいるようで、実はあまり分かっていない言葉でした。コンサルティング業界の中ではもっと広義的に使われているのですが、戦略コンサルタントが口うるさく言い続けるファクトとは何なのでしょうか?

 実はファクトというものはある程度広義に使われていると思われますが、大きく3つあると認識しています。

「数字」「事実」「本質」になります。

数字

 まずは数字です。ファクトの中でも数字は絶大なる威力があります。「この商品を欲しがっている人が多いです。」と「この商品を欲しがっている人はターゲット顧客の中で65%です。」と言うのでは全くインパクトが違います。

 数字と言うものは有無を言わさぬ力があります。そして、努力(手間をかける事)で算出できる事が多いのも事実です。そのため、まだコンサルティング駆け出しであり、“切れ”で勝負できない若手コンサルタントは、ファクトの中でも誰もが一目で分かる「数字」に対して、まずは対峙して行くことになります。

 ですが、数字と言うものはそれほど強力な武器になり得る為、言うまでもありませんが、数字は正確である必要があります。

 数字の正確さとはなんでしょうか。

・まずは扱うデータのソースが正確であること。

・分析のロジックが正しいこと。分析の手法が正しいこと。計算式が正しいこと。

・出て来た結果(数字)の読み取り、解釈が正しいこと。

・出て来た数字を活用する場面、結論に用いるメッセージが正しいこと。

 数字はファクトの中でも最も強力な一つなので、コンサルタントが数字を扱う時は「ふぐの肝」を扱っているくらいの万全な注意を持って扱うことが必要とされるのは言うまでもありません。

事実

 まず認識する必要があるのが「事実」と「意見」は違うと言う事です。言われれば当たり前なのですが、報告の時に「事実」と「意見」が混在している人は非常に多いのも「事実」です。

 書かれれば当たり前ですが、実はこれは相当に意識しないとできないことなのです。これが当たり前にできる方と言うのは、相当地頭が良いか、よほど訓練された方になります。

 「XX業界に関して調査して」とお願いした場合、「事実」と「意見」を混同して報告されることが多いです。コンサルタントは「調べた結果こういうことが分かりました。それを受けて、自分はこのように考えます。」と言うことが当たり前の行動規範として必要とされます。

本質

 ファクトの3つ目は本質です。「数字」、「事実」までのファクトは意識をすることと訓練を受けることによりある程度は当たり前に実行することができます。一番難しいのはこの「本質」になります。

 「事実」はある断面での「ファクト」に過ぎません。つまり、起こった結果として現れている事象になります。言い換えれば、おこった事象は表面的に捉えれば「事実」です。ですが、事実の羅列からは本質には辿り着かないことがある事はお分かりになると思います。

 例えば、営業の生産性が低いと言う「事実」があるとします。これは、「数字」による競合との比較や、支店間での「数字」の比較により「事実」か、否かは証明できます。そういう点では営業生産性が低いと言う「事実」になります。

 営業生産性が低いには、低いなりの理由や原因があるはずです。その「事実」になった背景や因果をたどるには、「本質」にまで辿り着かないといけないケースもあります。

 ここまでを広義のファクトと捉えると、「ファクトにこだわる」と言うのは相当にハードルが高いですが、数字や事実だけでなく、本質や原因なども含めてファクトは?と問われる事も多いため、常にここまで考えるのが戦略コンサルタントの行動規範となっているのではないでしょうか。

 今回はコンサルタントの行動規範として「ファクトにこだわる」を紹介しました。

 この時点で既に面倒くさい連中だと思われるのではないでしょうか。(笑)

次回は論理にこだわるを紹介していきます。

次回に続く

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