JR西日本の売店 セブン-イレブンに(日経新聞)/ニュースななめ斬り by ギックス

AUTHOR :  網野 知博

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網野 知博
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消費者、生活者には分からない事業運営者の苦悩

消費者にとっては「ついに」、というか、むしろ「やっと」と言う思いが強いかもしれません。駅のキヨスクやコンビニがセブン-イレブンになるようです。

セブンーイレブン、JR西日本と提携 既存売店を切り替え

セブン―イレブン・ジャパンは西日本旅客鉄道(JR西日本)と提携し駅構内にコンビニエンスストアを出店する。今夏から順次、約500あるコンビニ・売店を「セブンイレブン」に転換。1日500万人の乗降客が利用する「駅ナカ」を手中に収める。国内5万店を超えてもなお市場の成長が続くコンビニはより消費者に身近な場所へと立地の開拓を進めている。品ぞろえやサービスが充実した大手コンビニが駅ナカに入ることで消費者の利便性は一段と高まる。
(出所:日経新聞)

新聞記事にも「消費者の利便性は一段と高まる」と書いてある通り、消費者視点から見れば、なぜ大手のコンビニエンスストアが駅に入っていないのかを疑問に思う方も多かったのではないでしょうか。

なぜ鉄道各社は自前にこだわってきたのか

競合店がない駅ナカは乗降客をほぼ独占できる集客力の高さが魅力。1店当たりの1日の客数は東日本旅客鉄道(JR東日本)系のコンビニ「ニューデイズ」で約1600人、ハート・インも1千人以上とみられる。
(出所:日経新聞)

駅は非常に集客力があり、その場所にコンビニエンスストアを出店することは、そこの顧客を独り占めすることができます。そういった美味しい状況を独占するためにあえて自前主義をとってきたのでしょうか?

京浜急行電鉄などの駅でセブンに転換した約60店では売り上げが3~5割伸びている。
(出所:日経新聞)

一方で、既に大手コンビニに切り替えた京急では既存店の売上が3〜5割もアップしたと言う話もある通り、自前でコンビニエンスストアを展開するよりも、大手コンビニエンスストアのフランチャイジーになり、メガフランチャイジーとして事業を行ったほうが事業リスクも少ないし、収益性も高いように思えます。

ではなぜ鉄道会社はリスクを負ってまで、また収益性を犠牲にしてまで、また顧客(消費者)の意向を無視してまで自前でコンビニエンスストアを展開してきたのでしょうか?

駅を「公共性が高い場所」と捉えると見方が変わってくる

駅は鉄道各社の持ち物でありながら、非常に公共性が高い場所だと考えられます。(そもそも、鉄道そのものが、公共サービスに分類されることもあります)

その観点から考えると、顧客(消費者)が望むような店を入店させるという「商業的」な考え方から一歩引いて、「社会的ニーズ」に答えていく必要があるのかもしれません。

10年近く前の話ですが、公共系の事業に詳しい方とお話しする機会がありましたので「どうして鉄道各社は、自前の小売を展開するのか。テナント業に徹した方がビジネス的に低リスクで高収益ではないのか」と伺ってみたことがあります。その方は”あくまで私見”と断りつつ、こういう考え方もあるだろうと仰っていました。

  • ビジネスをドライに捉えると、自前(グループ会社)で小売業や飲食業を展開しないで、場所だけを貸す不動産業に徹する方が事業リスクも低いし、収益性も高い。また、本業に関係のないところに不慣れなリソースを割く必要もないので競争力も高められる。
  • しかし、公共性が高い場所では「公共性>利益」となることが多々ある。(例えば「バリアフリー化」「安全性確保」「分煙推進」などの公共性が高く、対応にスピードが求められる要求事項が出てきた場合、エレベーター、スロープ、喫煙室の設置等で、駅などの建造物の構造を変えなくてはいけないことがありうる)
  • そういう場合に、グループ内で運営している店舗であれば移設・撤退を「社内の優先度」に従って調整することが可能だが、外部のテナントではその機動性が失われる。
  • 「公共性」を重視する、ということは「合理性」だけでは計りきれないのではなかろうか。

駅が極めて公共性が高い場所であるからこそ、”多くの人=ユーザー”のニーズだけではなく、”社会的”なニーズを拾う必要があると言うことなのでしょう。

逆説的に言えば、ある程度 ”機動性を持った変更” が行える契約形態が可能になるならば、駅中に外部資本のテナントが入っても問題はないと言えそうですし、フランチャイザー側もドル箱の駅中に進出したがっているのは想像に難くありません。その両者のニーズの落としどころを見極めた柔軟な契約スキームにより、今後は、駅ナカへの多様な店舗の進出が進んでいくのではないでしょうか。

(尚、余談ながら、変化してこなかった理由が「気づいていなかった」「組織が硬直化してできなかった」ということではなく「違う視点・価値基準で意思決定していた」という可能性に目を配れないのも、”硬直化した思想・思考”なのかもしれませんね。)

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