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ギックスの本棚/申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 ~コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする~ (カレン・フェラン著|神崎朗子訳)

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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コンサルがどう、とかじゃなくて、組織ってこう、って話

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

最近はやりの「センセーショナルなタイトル/キャッチコピーで煽る」系の本です。(関連記事:ギックスの本棚/1億人のための統計解析

内容は、

  • 世の中に万能なソリューションなんかない
  • だから、それを振りかざすコンサルタントは信用するな

という2点に尽きます。ぶっちゃけ、当たり前の話です。そういう意味では、誰が読むべき書籍なのかの判断に迷う本です。

自分の成長に迷ってる人は読んでみよう

コンサル嫌いの方が「この本を読んで溜飲を下げる」という使い方も可能ではありますが、あまり生産的な時間の使い方だとは思えません。また、コンサルタントがこれを読んでも「まぁ、普通の事でしょ」となるような気がしますので、これもあまり有益ではない。(ならないコンサルタントは、それはそれで問題ではなかろうかと・・・)それよりはむしろ「成長に迷ってる事業会社の方が、自己実現本の一種として読む」ということをオススメします。

この本では「すべての課題解決は社内の”人間関係”、”コミュニケーション”、”組織運営”にあり、コンサルタントを入れても、それらの課題が解決しないどころか却ってぐちゃぐちゃになってしまう」ということが語られています。(副題も「コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする」ですので、組織というテーマの色が非常に強いです)

例えば「サプライチェーン改革」がプロジェクトの主題であっても、結局は社内コミュニケーションの問題・組織間の壁の問題・人材育成/評価の問題などに帰結する、という主張です。

”絶対”の評価指標なんてない

本書を「成長に迷う人」に進めるのは、「評価が絶対じゃない」という言葉に安らぎを覚えられるのではないか、と思うからです。

第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち から引用します。

上司の評価は複数の偏見に左右されることが、この分野の研究によって明らかになっている。例として次のような偏見が挙げられている。

  • えこひいき - 自分の気に入っている部下にはより高い評価を与える。
  • 価値観や人付き合いの仕方が似ている - 自分と似ている部下は好ましく、より高い評価を与える
  • 年齢、人種、性別による差別 - やはりこの場合も自分と似ている人や、既成概念によるイメージのこのましいほうに、より高い評価を与える
  • ハロー効果/ネガティブ・ハロー効果 - ある分野における良い業績あるいは悪い業績が、関係のない、他の分野の業績に対する評価に影響を及ぼす。たとえば、無精ひげを生やしているだけで、スピーチは苦手だろうと思われたり、決めつけられたりするなど
  • 自分自身の処遇 - 自分に与えられた評価を基準に、部下に評価を与える

非常に端的ではありますが、評価と言うものは、どれだけ「綺麗なフレーム」で整理・定型化したとしても、恣意性によって大きく変わる、というお話です。さらに・・・

  • 上司の期待値が低すぎて、当たり前の業務に対して異常なほどの高評価を貰ってしまい、喜ぶどころか反対にデモチベートする
  • 社員の98%は自分の業績は平均以上だと認識しており(また、80%の人は、上位1/4に入ると認識している)評価が低すぎると感じる傾向が強い
  • とても優秀な社員は、評価が「最高でない」ということに対して不満足を覚える(平均より優れているかどうか、では満足しない)

というような事例が挙げられています。

向き・不向きを考えよう

では、それらの「世の不公平」を本書に解き明かしてもらったとして、それで終わりでは救いがありません。

本書で語られる「職務適正」の議論についても一読すべきです。

職務適正が発揮される場合には、どのような基本要素が組み合わさっているかについて、私の考えを説明したい。(中略)

左の2つは、会社のカルチャーとの相性と、上司や同僚との相性で環境的な要素だ。右の2つは各社員に固有の要素であり、だからこそ本人も交えて話し合う必要がある。

職務内容は本人のスキルや興味に合ったものであるべきだ。社員全員にピッタリの職務を見つけることはできないかもしれないが、たとえ半数でも自分の適性に合った職務を見つけられたら、どれだけの効果が表れるか想像してみてほしい。(中略)

職務適正について話し合えば、タレントマネジメントの問題の多くは解決される。誰にでもある程度の才能があり、さらに伸ばす余地があるという前提の下で話し合う。そうすれば、各自の才能を活かして業績を上げることが可能になる。(中略)

もっとも重要なのは、社員のキャリア開発が本人以外の者たちの手に委ねられることなく、社員自身が責任を持って自分のキャリアを形成していけることだ。

要するに「向いてる仕事をみつけよう(まずは社内で、無理なら社外で)」という話です。

先述したとおり、本書を「コンサル批判」ではなく「自己実現の手引き」と扱うならば、「自分をどうやってモチベートするか」を考えるための良いインプットとなると思います。(尚、本書のテーマは「他人をどうやってデモチさせずに組織力を高めるか」なので、”評価者視点”の記述を”被評価者視点”で捉え直す必要があります。)

(おまけ)コンサルを志す若者に向けて

尚、上記で僕の言いたいことはほぼ終わったのですが、同じ「コンサル」という業界の片隅にいるものとして、本書の「コンサルに関する記述」についても少しだけ触れてみたいと思います。要するに、コンサルを目指す方にとっての”本書の読み方”です。ご参考になれば幸い。

書いてあることは当たり前。書き方は極端。

本書で書いてあることは、相当極端だなと思います。世の中の「良識ある戦略系コンサルタント」が、こんなにソリューション、型を押しつけてばかりいる、というのは違和感があります。記述された内容が悪いというよりは、単純に煽り過ぎではないかと思います。

個人的には、「ITコンサルティング」は特定のソリューションに落としたがる、という傾向を感じます(し、その是非は別議論だと思います)が、「戦略コンサルティング」は”カスタムメイドであるべき”だと僕は思っています(し、そうであると信じたいです)。

もちろん、極端ではあるものの、読むべき価値のあることもしっかり書いてあります。正確に言うと「当たり前の事が書いてある」=「読む価値のあることが書いてある」ということだと思いますが。

コンサルの仕事の本質は「社内関係強化」

私が自分のやっている仕事をありのままに話せないのは、「貴社の関係者の連携を強化するお手伝いをします」なんて言っても、誰もコンサルティングの仕事を頼んでくれないからだ。

この一文には非常に共感できます。実際のところ(アウトソーシングという手法もあるにはあるが)「実行するのはクライアント」であり、コンサルタントは「お手伝い」「後押し」であるというのは自明です。

従って、本書の末尾近くにある「コンサルタントを雇うべきとは思えない理由」リストに記載されている、下記のような場合には、コンサルタントを雇っても良い結果には辿り着かない、というのも真理です。

  • 意思決定が難しいので、コンサルタントに代わりに決めてもらいたい
  • 自分ではやりたくないが、問題を解決しなければならないのでコンサルタントにやらせたい
  • 魔法のような解決策を期待しているので、社内の人間の提案はどれも気に入らない

しかしながら、だからといって「組織力ですべてが解決する」というのも、乱暴です。

魔法の杖は無い

私の提案は、役に立たない経営理論に頼るのはもうやめて、代わりにどうするかという事だ。とも抱く大事なのは、モデルや理論などは捨て置いて、みんなで腹を割って話し合うことに尽きる。

やや極端すぎるとは思いますが、世の中にある「フレームワーク」や「方法論」「ソリューション」が”万能”なわけがない、というのも自明です。(とはいえ、「話し合ったら全てうまくいく=話し合いこそ”万能”の組織づくりの秘訣」というのは、非常に極端な考え方だと思いませんか?)

もちろん、なんとかとハサミは使いよう、という奴で、それらの『先達の知恵』を上手く活用した方が良い、というのは間違いないので、「全部捨て置け」というのは、乱暴ですよね。フレームワークは「使い方」に意味があるのであって、「知ってる」ということ自体には、さしたる価値はありません。(この辺りは、三谷宏治さんの「経営戦略全史 」を読んでいただくと良いかもしれません。 (関連記事:ギックスの本棚/経営戦略全史))

また、少し毛色は違いますが、ITコンサル系(含むSE)志望の皆さんには、同じメッセージを伝える名著「人月の神話[新装版]」をお奨めします。以前は「狼人間を撃つ銀の弾はない」という、なかなかそそる副題がついていましたが、今は無いんですね。時代を感じます。 (関連記事:本気で読み解く「人月の神話」

そんな奴らもいる、と思って読もう

というわけで、この本を読んでコンサル志望者が知るべきことは一つ

  • 世の中、色んな奴がいる

コレに尽きるのではないでしょうか。

本書を書いている人も極端ですし、本書に登場するコンサルタントも極端です。前者は「組織の強さを育成するのが最善。そのために、コンサルのアプローチは間違っている」主張し、後者は「万能なソリューションに従えば、課題は解決する」と主張します。いやいや、現実世界って、そんな奴ばっかと違うでしょ。

コンサルタントを志す方は、これらを、あくまでも”情報”として頭にインプットするにとどめてください。繰り返しますが、世の中、色んな奴がいるんです。

その上で、コンサル=「格好よくズバッと物事を斬る仕事」「先生と呼ばれる仕事」という幻想は捨てて(いまどき、そんなこと思ってる人がいるとも思えませんが)、その一方「ソリューションを押し付けるだけのつまらない仕事」「クライアントの従業員を”モノ”として捉える冷酷な仕事」だという誤解もしないでいただきたいと思います。

コンサルティングは、人間味あふれる、楽しい仕事ですよ。(もちろん、いろいろ大変ですけど)

ちなみに・・・付録2 は読んでおこう

尚、コンサルタントを志す方は、巻末の付録2:「科学的方法を生かす4つのステップ」(たったの7ページです)は一読しておくことをオススメします。「因果と相関は違う」「検証結果と結論は違う」といった、いわゆる”コンサル思考の基本動作”について語られていますよ。(関連記事:データアーティストとは何か
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

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