【”考え方”を考える】物事を「要素分解」する

AUTHOR :  田中 耕比古

「言葉」を具体的に捉えることから始めよう

以前「プロセスで考える」というお話をしました。今回ご紹介する「要素分解する」は、その「プロセスで考える」も包含した”思考の型”だと言えます。

分解する というと・・・

分解する、というと最初に思い浮かぶのは、ロジックツリー、イシューツリーでしょう。これは基本のキとなる考え方です。この辺りは、世の中に良書がたくさんあるのでそちらをご参照ください。(バーバラミントさんのコレとか、齋藤嘉則氏のコレとかがいいんじゃないでしょうか。)

しかし、本稿では、もう少しカジュアルに「要素分解」していきたいと思います。(もちろん、ロジックツリー、イシューツリーでMECEに砕く、ということが”できるにこしたことはない”という前提です)

文章を分解する

文章を分解する、これが最も汎用性が高い「分解」です。

例えば、課題に対する打ち手を考える際に「その打ち手は課題にミートしているのか?」をチェックするような場合、「文章を分解する」がオススメです。

具体例を出しましょう。業務改善について討議している際に、チームメンバーから下記の 【課題】→【打ち手】 が提出されたことがあります。

  • 課題:OUTPUTイメージが共有されていないので、作業後にズレていることが判明して手戻る
  • 打ち手:依頼されたら、OUTPUTイメージを速攻で打ち返す

課題は一旦良しとして、打ち手を分解します。

「依頼されたら」「OUTPUTイメージを」「速攻で」「打ち返す」

となります。つまり

  1. 「依頼されたら」「打ち返す」
  2. 「OUTPUTイメージを」「打ち返す」
  3. 「速攻で」「打ち返す」

という構造になっているわけですね。これを読み解くと

  1. 「依頼されたら」「打ち返す」 ←依頼されることが前提になってて良いの?
  2. 「OUTPUTイメージを」「打ち返す」 ←”OUTPUTイメージ”ってなんなのかよくわからないけど、大丈夫?
  3. 「速攻で」「打ち返す」 ←スピードって重要なの?

というような疑問を感じます。このケースでは、スピードは重要ではなく、また、自発的な行動も求められていたため「打ち返す」という表現も不適切でした。

従って、レビューの結果、この打ち手は

  • 打ち手①:作業着手前に「狙い、仮説、現状分かっている情報、現時点で必要と認識している追加調査項目、関連情報・補足情報」を一覧にして擦り合わせ
  • 打ち手②:上記の追加調査完了時点で、仮説の見直しの要否について再検討し、骨子を設計

ということになりました。

事象を手段に分解する

続いては、事象を分解する、です。こちらの方が、イシューツリーやロジックツリーの思想に近いのですが、今回は、もう少しラフでOKです。

例えば「社員のクリスマスパーティーを企画しろ」と言われたときに何をどうするのか、というようなことです。

まずは、前掲の”文章”で分解します。「社員」「クリスマスパーティー」「企画」ですね。(このタイミングで、例えば「社員」の定義が不明確なことが分かりますので、「正社員だけ?」「契約社員・アルバイトも?」「家族なども対象?」などを決めておかないといけない、ということもわかります。)

ここで、事象を明確にします。こういう場合、事象をうまく分解してあげることが必要です。(僕は、冒頭で書いた通り「プロセス」に砕いていくことを推奨してます)では、「クリスマスパーティーの企画」とは具体的にどういうことなのでしょうか?プロセスに分解してみましょう。

例1:「クリスマスパーティー」 のプロセス分解

幹事をやったことのある人なら常識でしょうが、「パーティー」を時系列で砕くと、下記のような流れになります。

周知・集客→受付→乾杯→偉い人の挨拶→歓談・食事→現地イベント(ゲストなど)→閉会→追い出し→支払

閉会後に会場から追い出すのが大変なんですよねー。などという苦労話は置いておいて、これらを見ると、必要な「タスク」が洗い出せます。

非常にザックリですが、こんな感じでしょうかね。

  • 周知・集客 →参加者への周知が必要
  • 受付 →当日支援メンバーが必要
  • 乾杯 →お酒が必要、偉い人への依頼が必要
  • 偉い人の挨拶 →偉い人への依頼が必要
  • 歓談・食事 →食事の手配が必要、会場内の配置確認(椅子の要否など)が必要
  • 現地イベント(ゲストなど)→イベント手配が必要、会場内の設備・配置確認(プロジェクターなど)が必要
  • 閉会 →時間設定(会場打ち合わせ)が必要
  • 追い出し →当日支援メンバーが必要
  • 支払 →人数の確定、予算等の検討が必要(会費の要否も含めて)
例2:「企画」 のプロセス分解

あるいは「企画する」という業務の流れを時系列で砕いても構いません。こんな感じでしょうか。

人数・予算の概算把握→会場仮押さえ→参加者向け周知→現地でのイベント検討・手配→会場との打ち合わせ→参加人数確定→当日受付→当日進行→会計処理→次回申し送り事項の確認

こう砕いても、だいたい同じ「タスク」が出てきています。どちらでも、自分がイメージしやすい方で砕けば大丈夫です。

基本的に世の中の大抵の「依頼事項」は「ゴールイメージ」だけを伝えられます。依頼した本人でさえ、プロセスについてはあまり深く考えていない場合が多いのです。(忙しくて手が回らないから依頼している、という場合もありますし、そもそも、そういうのを考えるのが不得意な人もいます。)

そういう依頼事項に対応する際には、このように「手段に分解する」ということを心がけると、何をしなければいけないのか(あるいは、何はしなくて良いのか)が明確になりますし、依頼者に対しても報告・共有が可能になります。

無意識で「要素に分ける」癖をつけよう

【言葉】は「抽象」と「具体」の間を行き来するものですが、多くのひとは、そんなことをあまり意識していません。(関連記事:ギックスの本棚/読むだけですっきりわかる国語読解力

基本的に、意識して行う場合には「抽象化」の方が、「具体化」よりも難しいです。(意図せずに「抽象化」”しか”できない、という人は結構いますが・・・迷惑な話ですよね(笑))今回ご説明してきた【要素分解】もそうですが「具体化」の方がテクニックとして身につけやすいと僕は思っています。

誰かから、なんらかのボールが飛んできたら「とにかく【要素】に分ける=具体化する」ということを徹底して行うことで、具体化力が高まります。

そして、事象を具体的に捉えるという事は、言葉に対してキチンと向き合う、ということを意味します。そもそも、言葉と言うのは抽象概念を、先人たちが頑張って形にしてきたものです。「言葉で正確に表現する」ということが、コミュニケーションの基本です。ここを鍛えることが思考力の底上げにつながります。

さらに、「抽象」→「具体」の一方通行を徹底的に練習することで、「抽象」と「具体」をつなぐバリエーションを蓄積できます。バリエーションの蓄積によって「逆向きの矢印」を想像することができればしめたものです。難易度が非常に高い「意識して抽象化する」というスキルに一歩近づくことができます。

というわけで、みなさん、レッツ要素分解で、楽しいロジカルライフを!!!

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