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セミナー発言録(2)「成果出す会社に学ぶデータサイエンス講座|440万会員のビッグデータ分析で成果を出す」第1部 ビューカード会田常務 講演内容|日経情報ストラテジー

AUTHOR :  網野 知博

ギックスCEO網野 /取締役 花谷が【成果出す会社に学ぶデータサイエンス講座】に登壇(2014/6月)

日経情報ストラテジー主催のセミナーに株式会社ビューカードの会田雅彦常務取締役と共に、弊社網野と花谷が登壇しました。先日速報でお知らせした第3部のパネルディスカッションに続いて、第1部の講演録を紹介致します。

開催日時:2014年6月24日(火)13:00~14:25 「チームCMO」と1年で結果を出したビューカード 440万会員のビッグデータ分析で成果を出す

第1部「中期経営構想2020」に向けた取り組み 発言録

会田常務:

本日の講演は3部構成となっております。

第1部:「中期経営構想2020」に向けた取り組み(講演者:会田雅彦常務取締役)

第2部:ビューカードでのマーケティング改革(講演者:網野)

第3部:パネルディスカッション「マーケ会議」でのその時 意思決定者とデータサイエンティストに聞く(モデレータ:網野、パネラー:会田雅彦常務取締役、花谷)

私は事業者側からGiXoの分析結果をどのように社内で展開し、どのように実行していったかという点を、”第1部:「中期経営構想2020」に向けた取り組み”としてお話したいと思います。第3部のパネルディスカッションの頃には私も緊張感が解けていると思いますので、色んなことが話せるのではないかと思います(笑)。まずは株式会社ビューカードのご紹介から始めさせて頂きます。

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現在の会員数は445万人、取扱高は1.4兆円となっております。クレジットカード業界では、12、13番手というところですね。ビューカードの知名度が上がったきっかけは、2003年の「ビュー・スイカ」カードサービスです。JRの子会社という強みを生かし、クレジットカード業界初となるSuicaをクレジットカードに搭載するというサービスを提供しました。2003年のサービス開始以来、約10年間で265万人程会員数が増えました。成長のエンジンはやはり「Suica」でした。

では、商品としてのビューカードを紹介させて頂きます。

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一番の強みは「Suica一体型」であることです。Suicaのチャージやきっぷの購入でポイントが3倍付与されるというサービスがメインです。提携カードでは、女性にはルミネでの買い物が5%オフになるルミネカード、男性にはビックカメラでのお買い物でポイント還元率が高いビックカメラSuicaカード、ご年配の方には吉永わゆりさんがCMをしている大人の休日倶楽部カード等が人気です。これらのカードによって、会員数は伸びてきていましたが、2つの経営課題がありました。

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1つ目の経営課題は商品に関することです。「Suica一体型」、「きっぷ・定期の購入やチャージでポイント3倍」はこの10年間は成長エンジンでしたが、Suicaを始めとした電子マネーを持っていない人はいないという世の中になったことで、今後の「Suica一体型」であるということが成長エンジンで在り続けるのは難しいと思っていました。

2つ目の経営課題は、経営資源です。社内に目を向けた時に、「人の量と質が共に不足している」ということでした。人命にかかわる鉄道という事業に携わっていたJRからの出向者が多数だったために、全く毛色の違うクレジットカード業界に来ても、リスクに対する危機感が強い、中途採用者もそのような雰囲気にのまれてしまうという状態でした。

この2つの経営課題に対して、成し遂げたいことがありました。

商品に関しては、「多くの消費者に支持して頂ける商品・サービスを提供し続ける。その結果、JR東日本グループの成長に寄与する企業にすること」

経営資源という点に関しては「目標を決め、事実に基づき論理的に目標実現のための方策を考え実行すること」、「その後、結果をトレースして新たな施策を実行することを繰り返す企業文化をつくること」、要はPDCAをちゃんと回すという初歩的なことをしっかりやっていきたいということですね。というのは、ビューカードに来た当初に感じていたのは、声の大きい人が勝つということ。つまり、正しいことを言った人の意見ではなく、立派に話すもしくは偉い人の意見が通りやすいということです。その状況を変える為に、事実に基づいて合理的に考えて行動に移し、結果をちゃんと見るという当たり前の環境を作りたいな思っていました。例を挙げるならば、中学や高校の部活のような会社にしたいと思っています。つまり、「県大会に優勝するんだ!」というような明確な目標があり、負けたらその原因をみんなで考える、守備が弱いなら守備練習を増やそうという改善をする。当たり前のことだと思われるかもしれませんが、会社に入ると人間関係や社内文化が重要視されて、目標が曖昧になりがちだというのが私が感じていたことでした。

この状況を変えるために、最初にやったことは目標設定です。

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まずは、2020年の目標を立てることにしました。優秀な部下に依頼をしたところ、彼は様々な外部要因・内部要因を考慮し「会員数:524万人、取扱高:1.7兆円」という目標を提出してきました。その時に私は彼にこう言いました。「これはきっと正しい数字なんだろうけど、これは今までと同じ努力で達成できる目標だろ?俺が部下に説明する時に”2020円の目標は524万会員だ!”なんてキリの悪い数字は言いたくない。もっとキリのいい数字にしようぜ。」そういう話を経て、会員数は600万人、取扱高2兆円という数字を掲げました。そういう意味では、考えているようで考えていないと言われるかもしれませんね(笑)

しかし、「緻密な目標は、目標設定時には頭を使うけど、スタートしてからは頭を使わない。ストレッチした目標を作ると今までのやり方を変えなければいけないと考える。」というのが私の持論です。そして目標を立てて、そこに向かって一丸となって進み始めた時に改めて気づいたことがあります。1年ほど前にビューカードはテレビCMを放映しました。きっかけはある広告代理店が「ビューカードの会員を増やすには第一想起を高める必要があります。」という提言でした。第一想起というのは、クレジットカードを作ろうと思った時に思い浮かべるカードはなんですか?と消費者の方に聞いた際にビューカードが頭に浮かぶかどうかということです。

「最初に思い浮かばれないカードは永遠に選ばれません。第一想起を上げる必要があり、第一想起を上げる為にはテレビCMです!」と言われ、1カ月に数億円の予算を投じてCMを放映しました。事後のアンケートの結果、第一想起は0.2%アップという結果でした。正直「誤差じゃねーのか?」と聞いてしまいました。もちろん誤差ではなかったんですけどね(笑)。そういった失敗を経て、辿り着いたのは「誰が言ったかではなく、何を言ったか」、「事実は何なのか」、「何をやりたいのか」、「現状はどうなっているのか」、「どういうプロセスで考えていけばいいのか」ということを愚直に進めていかないといけないということでした。そのような経緯でGiXoの力を借りることにしました。

しかし社内からは「自分たちでも頑張ればできますよ」という声が上がったのも事実です。これは外部からモノを言われる恐怖感・抵抗感すなわち新参者のギックスに対する不安、過去の自らの仕事を否定されるかもしれないという恐怖・抵抗の表れでした。当然のごとく社内で相当な議論があり、すんなりはいきませんでしたが、最終的には社内の関係者が集まるオープンな場で社長に判断を仰ぎ、GiXoにチームCMOを依頼することとなりました。GiXoに入ってもらってから、「マーケティング会議」というものを実施しています。

このマーケティング会議のルールとして

  • 社長は絶対参加
  • 社員は誰でも参加可能
  • マーケティング会議で決めたことは必ず実施(参加せずに後から異を唱えることは禁止)

ということを掲げました。結果として、オープンにしたことにより社内的にはこんな成果がありました。

  • 若い社員も数字をもとに意見を出すようになった
  • 数字(事実)に基づく意見が出ることで職位に関わらず生産的な議論ができるようになった

GiXoのリードのもと、データを見ながら、マーケティング手法に基づいて何をすべきか考え、意思決定を下し、実行した後に結果を確認し、次のアクションを考えるというサイクルが回るようになりましたね。

更にこんな変化があったかなと思っています。

  • 解決策を考えるにあたって、客観的なデータに基づき論理的に考える癖がつき始めた(”誰が言ったか”からの脱却)
  • マーケティングは営業部門だけでなく全社的に取組むべきことだという一体感が強くなってきた

2つ目に関しては、クレジットカードの限度額等を決める与信部門も「マーケティングは営業だけじゃない。営業部門で会員獲得にそんなに苦労しているなら、与信の限度額を上げる方法を考えますよ。」という意見を出してくれるようになったんです。以前は与信部門のメンバーは「自分達のミッションは”貸し倒れ”を防ぐことだ」と考えていたのですが、「収益を最大化することなんだ」というように考え方が変わってきました。このような社内の変化に加えて、「SuicaにViewをonしたら乗っているだけで得をする」という告知もあいまって、2014年3月に月間の新規加入会員数8万人という過去最高の結果を出すことができました。

今後の課題・取り組みとしては

  • ギックスの知見を獲得し、ビューカードが自前で仮説・分析できるようにすること
  • 「何を言ったか>誰が言ったか」の価値観を社内に植えつけること
  • 「PDCAサイクルを回して成果を出す」ことを習慣化し、企業文化にまで高めること

と進めていきたいと思っています。

まとめると、正しいかどうかに職位、年齢等の誰が言ったかは関係なく、正しいことを最も証明しやすいのが数字だったということにつきます。全社で数字をもとに何が正しいかを議論し、次に何をするべきかを考えられるようになったというのは弊社の状況であります。

以上です。

[第二部に続く]

【成果出す会社に学ぶデータサイエンス講座:記事リスト】
  1. パネルディスカッション(ビューカード×ギックス)
  2. ビューカード会田常務 講演内容 【当記事】
  3. ギックス網野・花谷 講演内容(前編)
  4. ギックス網野・花谷 講演内容(後編)
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