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ギックスの本棚/「好き嫌い」と経営(楠木 建著|東洋経済)

AUTHOR :  網野 知博

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網野 知博
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すべては「好き嫌い」から始まる

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 「ストーリーとしての競争戦略」で一世を風靡した経営学者の楠木建教授。当時から経営は嗜好品であるがゆえ、正しい・間違っているではなく、好き・嫌いであるべきだと主張されておりました。いざ自分で経営者をやってみると、意思決定の最後の拠り所が好き・嫌いに依存するということはよくわかります。正しい判断と間違った判断なら迷うことはありませんが、正しい判断、どちらも成功の可能性が同程度、と言う意思決定は頻繁に起こります。その時には何を拠り所に判断するのでしょうか。人によっては企業理念と言うかも知れません。その企業理念こそが人の好き嫌いの根底にあるものではないかと思います。

目次だけでここまでワクワクする本も珍しい

この本の特徴は著名な経営者を集めて来たゆえに、目次の「経営者」×「◯◯が好き、☓☓が嫌い」と言うタイトルだけで、「ほうほう、なるほど。」と思えてしまう点でしょうか。

タイトルを幾つか掲示していきましょう。

日本電産 永守重信氏 「何でも一番」が好き

ファーストリテイリング 柳井正氏 「デカい商売」が好き

日本マクドナルドホールディングス 原田泳幸氏 「雷と大雨とクライシス」が好き

ローソン 新浪剛史氏 「嫌いなやつに嫌われる」のが好き

サイバーエージェント 藤田晋氏 「今に見てろよ!」が好き

スタートトゥデイ 前澤友作氏 「人との競争」が嫌い

もうこのタイトルだけでも、中身は見ないでどういうことかと解釈をしながら議論を進められるくらいに秀逸な目次構成になっています。

では実際に中身はどうでしょうか?

成功者の自己啓発本に辟易している人でも大丈夫

事業として成功した方々の本でありがちなのが成功した背景を読み取り、そこから○◯すべきなどと訓辞を述べることではないでしょうか。私は成功者の物語を読むのは大好きですが、そこに書かれている事をそのまま鵜呑みにして行動を真似ることはありません。なぜなら同じことをしても失敗した経営者は五万と存在しますし、悪く言えば勝てば官軍、勝者の成功要因だけを聞いても、敗者の要因と比較しないことにはそれが勝因だったかはわからないからです。すべての経営者に対してどのタイミングにでも使える絶対的な処方箋なんていうものは存在しないというのが本質でしょう。

一方、この本は「好き嫌い」にスポットを当てているため、「これが正しい」や「こうすべし」と言った押し付けがましさは全くなく、経営者の人生や経営に対するフィロソフィーを垣間見ることができます。また、内容もあまり歯に衣着せぬ感じで、酒でも一杯飲みながら経営者から直にリアルな話を聞いているような錯覚も覚えます。もともとはテレビの対談内容だったことが信じられないくらいのぶっちゃけぶりです。笑

第一話の永守氏の対談を少し抜粋しながらこの本の面白さを紹介しましょう。

松下幸之助の本はキレイ事

永守氏は経営の神様と言われる松下幸之助さんに関しても持論をぶつけて、熱く話を進めております。

経営なんて本に書いてあるようにキレイ事ではできない。多分若い頃はかなり厳しいことをやっておられるわけですよ。それでも最後は天国に行きたいから、仕上げは神様みたいに良い人になる。年配の経営者が心の話をするようになるのは、仕上げの段階に入った人間の性質じゃないかな。僕は仕上げの幸之助さんは好きじゃない。「儲けろ、もっと儲けなあかん!」とガンガンやっていたときの幸之助さんが好きです。

ここまで読むとなるほど、永守氏が経営の神様と言われた松下幸之助さんに出会ったのは彼がガシガシ攻めていた時のことであり、その時の成長に向けて攻めている時が好きだったために、マズローの欲求5段階説の最上位に行ってしまったような晩年の時は見ていてもどかしかったのかな、などと推察してしまいます。そこにこの一言が入ります。

でもまあ、僕は自分には会ったことのない人には、あまり尊敬心を持たないから、面識のない松下幸之助さんは別にいいのです。

ここまで熱く語っておきながらこの展開。「なんだ、会ったことないんかい!」と言うツッコミを入れた読者は少なくないのではないでしょうか。笑

そして、そのすぐ後から、「株主総会のマイクは誰にも渡さない」「永遠に、上を目指すのが好き」と言うこれまた読者を魅了するサブタイトルが続いていきます。

身近に感じられる著名な経営者の好き嫌いだからこそ感じる「あの人が言いそうだわ〜」と言う感覚

第1話の永守氏からこの展開で続いでいくので、この書籍がつまらないはずがありません。第2話の柳井氏では、「勝負事だから、商売が好き」「ニッチが嫌い、スケールが大きいビジネスが好き」「成長しない起業家が大嫌い」と続きますし、第4話の新浪氏ではローソンという小売業を営む立場ながら、「小売が嫌い」から始まります。そして、「くだらない人間を飛び越えるのが好き」「バカにはバカだという」などとこれまたジャイアニズム宣言が繰り出され、楠木氏にも一般的な経営者と比べて「ジャイアン系」であるとのツッコミも受けております。笑

コンサルタントとしての守秘義務から、私がこの書籍に出てくるどの経営者と面識があり、誰と一緒に仕事をしたことがあるかは記載できませんが、それでも実際にお会いしたことがない経営者でも、想像通りな一面が垣間見れて非常に楽しめました。おそらくこの本は、著名な経営者の意外な一面を掘るのではなく、想像通りの一面を深く具体的に掘っているからこそ、読者に「あの人が言いそうだな〜、分かるな〜」と言う面白さを提供しているのではないでしょうか。

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 「好き嫌い」と経営(楠木 建著|東洋経済)

 

 

 

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