ギックスの本棚/プロフェッショナルの条件 ~はじめて読むドラッカー【自己実現編】~

AUTHOR :  田中 耕比古

読んでない奴は、黙って読むべし。

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))

先日、弊社の関係者(特に若手)向けに「プロ論 ~プロフェッショナルとは何か~」を語る機会がありました。

で、特に何らかの書籍を引用したり、推薦図書として紹介したりはせずに、敢えて「僕の思いのたけ」を90分話しまくるという、聞いている若手にとっては拷問のような時間を過ごさせてしまったわけですが、そんな僕の「プロフェッショナル観の原点」ともいうべき一冊が、この「プロフェッショナルの条件」です。

社会人1年目。金は無くても、本だけは無尽蔵に買ってたあの頃。

この本の奥付をみると、2000年6月29日 初版発行。2000年10月23日 24版発行。とあります。(ほぼ同時期に買った「イノベーターの条件」は2000年12月14日 初版発行 です。)ですので、正確には覚えていませんが、「2000年末~2001年初に買った」ということだろうと思います。

その頃の僕は、社会人1年目の終わりごろです。2000年4月に新卒入社して、いわゆる「サラリーマン」として生きていました。SEとして、システム開発プロジェクトに関与し、顧客折衝、サブシステムの開発・テスト、協力会社管理に代表されるプロジェクト管理(の真似事)をして1年間を過ごしました。

当時の給料は笑っちゃうくらい安く、昇給幅もボーナス額もたかが知れていて、ひぃひぃ言いながら生活してましたが、とにかく本だけは”可能な限り”買う、と心がけていました。会社にお茶を沸かして持って行ったり、お弁当としてサンドイッチを作ったりしても、本だけは買う。そんな感じでした。

当時の僕の基本思想は「顧客志向であろう」ということと「プロであろう」ということでした。(今から思うと、どちらも全く実践できていませんでしたが、心構えとしては頑張っていたと思います)

アマチュアじゃダメだ

正直なところ、せいぜい300人程度の会社で、社内政治とかやっちゃうのは意味が分かりませんでした。客が評価してくれたら価値があり、客が評価してくれないなら価値がない。そうあるべきだと思っていました。(家業がサービス業だったことが、大きな要因かもしれませんが。)

そして、アマチュアな対応をする人が許せませんでした。定時に会社に来ない。やると言っていた仕事が時間内に上がってこない。残業代が出るからと、やることもないのにずるずると残業している。そんな人たちに流されてしまいそうな自分がとても怖かった。一方、幸いなことに、協力会社さんが皆さん「プロ」でした。そんな年上のプロ達が、新卒の若造をヘッドコントラクター(一次受け)の社員だからという理由で、どれだけ素人くさい質問をしても丁寧に対応してくれるのが、ほんとに申し訳なくてしょうがなかったです。こんなことじゃダメだと日々思っていました。(協力会社さんに可愛がってもらえたのは、本当にありがたかったです)

そんなことを思いながら、1年かけて「顧客志向」な「プロ」であることを志し、地道に努力を積み上げていた僕が出会ったのが、この「プロフェッショナルの条件」でした。

この本を買った当時、ドラッカーという名前も知りませんでした。ただ「プロフェッショナルの条件」を教えてくれるなら、ぜひ知りたいと思ったのです。そして、帯(いまも付いたままですが)に書かれた「どうすれば一流の仕事ができるか?」という言葉も、まさに僕の知りたいことにフィットしました。

週末に新宿で買って、家に帰る小田急線の中で、文字通り貪るように読みました。が、書いてあることの半分も理解できませんでした。そもそも、最初に「ポスト資本主義社会への転換」とか言われても困っちゃいますよ。資本主義の何たるかも、キチンと理解していなかったのに・・・。それでも、自分がどんなにアマチュアなのかを痛感しました。”生産性”の観点や、”プロセス分解”の手法、”成果”の考え方。これらについて、何ら体系的な考えも持たないで「プロになりたい」と言っている自分を恥じました。

今に至る”きっかけ”をくれた本

新卒で入社した会社に在籍し続けていた場合(あるいは、あと数年在籍し続けた場合)、僕の人生は全く異なるものになっていたでしょう。殆どの友人とは出会ってさえもいないでしょう。人生はタイミングですね。

この本と出会って1年後、僕はアメリカ駐在のチャンスを得ます。目指すべきプロになるために必要なスキルを身につけたくて、応募要件を満たしていないにもかかわらず社内公募に手を挙げて、幸運にも認めていただいたのでした。そして、駐在から帰国して1年後、コンサルファームへの転職を決意します。ここでコンサルに転職していなければ、現在の”起業”には、まず辿り着いていないでしょう。現在に至る道筋を選んだ「きっかけ」は、本書だったと言っても過言ではないと思います。

そして、今、再度手に取ってみても、全てのページのあらゆる文言に感銘を受けます。

例えば、part 5 自己実現への挑戦 の 第3章 何によって憶えられたいか から一節を引用します。

自らの成長に責任を持つものは、その人自身であって上司ではない。誰もが自らに対し、「組織と自らを成長させるためには何に集中すべきか」を問わなければならない。(中略)

自らを成果を上げる存在にできるのは、自らだけである。したがって、まず果たすべき責任は、自らの最高のものを引き出すことである。それが自分のためである。人は、自らが持つものでしか仕事ができない。

ええ、まさにそうです。他人じゃなくて、自分なんですよね。ついでに、同じ章よりもう一節。

私が13歳のとき、宗教の素晴らしい先生がいた。教室の中を歩きながら、「何によって憶えられたいかね」と聞いた。誰も答えられなかった。先生は笑いながらこういった。「今答えられるとは思わない。でも、50歳になっても答えられなければ、人生を無駄にしたことになるよ。」(中略)

今日でも私は、この「何によって憶えられたいか」を自らに問い続けている。これは、自らの成長を促す問いである。

いいですね。僕の友人のひとりが、「お前は、何を変えたいの?」という表現を教えてくれたことがありますが、まさに同じことだと思います。「何を変えるために戦ってるの?」そして「実際に何を変えたの?」に答えることは、つまるところ、他人に、何によって憶えられたいのか、ということだと思うのです。

本書を読んだことが無い人(特に若手)は、迷わず手に取るべき一冊です。人は、些細なきっかけでも変われます。すべては、自分次第ですよ。

 

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))

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