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ギックスの”絵”本棚/おやすみなさいダース・ヴェイダー(ジェフリー・ブラウン|辰巳出版|ルーカスフィルム公認)

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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ビジネス的にはわかるが、絵本的にはどうなのだろうか

おやすみなさいダース・ヴェイダー

本日は、ルーカスフィルム公認!と銘打たれた「スターウォーズ絵本」の第三弾。「おやすみなさい ダース・ヴェイダー」をご紹介します。

過去2作とは「別の」作品

本作は、スターウォーズ絵本の3作目ということなのですが、1作目「ダース・ヴェイダーとルーク(4才)」および、2作目「ダース・ヴェイダーとプリンセス・レイア」とは趣が異なります。

過去2作品は「親として子育てに悪戦苦闘する、なんだか憎めないキャラクターのダース・ヴェイダー」を愛でる作品に仕上がっていますが、今回は、そういう視点では描かれていませんので、購入する方は、ご注意ください。

もちろん、設定としては、前の2作と同様、小さな子供であるルークとレイアと、父であるダース・ヴェイダーが登場します。しかし、今回は「寝る」あるいは「夜の過ごし方」について、スターウォーズの世界観を横断していく、という仕立てになっています。そのため、1作目の「ルークの我儘に悩まされるダース・ヴェイダー卿」、2作目の「レイアの恋愛にいろいろ言いたいダース・ヴェイダー卿」は見えてきません。

関連記事:ギックスの本棚/ダース・ヴェイダーとルーク(4才)

絵柄はかわいいし、好感は持てるが、なんだかなぁ。

前作・前々作と同様に、絵柄は非常にかわいく、絵本として眺めるのはよいと思うのですが、正直なところ、この本の伝えたい内容がわかりません。

もっと言えば「誰に読ませたいの?」が見えてこないのです。

いったい、誰がターゲットなの?

過去の2作品は、あの「ダース・ヴェイダー」が父親として抱える苦悩を描く(と言っても、原作のような親子の関係そのものに関するような大きな苦悩ではなく、子育てに対する苦悩、という微笑ましいものなのですが)ことで、おそらく、世の「スターウォーズ好きの父親(あるいは母親)」から絶大なる支持を得てきたのではないかと思います。

また、僕のように、まだ子供はいないけれども、自分自身がいい年になって分別がついた今、ああ、親に迷惑かけたなぁとGrateful DaysのHIP HOP育ちなzeebraさんのように反省してしまうスターウォーズ好きにも、ばっちり刺さってきたと思うのです。

しかし、本作は、そういう「具体的な読者」が見えてきません。いうならば、「スターウォーズ好き」あるいは「スターウォーズ・マニア」に対して広範に網をかけにいった感じがします。

ただ、それって「読者」じゃなくて「購入者」なんじゃないかと思うんですよね。んー。どうなんだろうか、それ。

コンテンツを食い荒らすのは愚の骨頂

本作を読んで僕が思うのは「せっかくのコンテンツを、”消費”してはいけない」ということです。

世の中に、キャラクタービジネスというものが存在します。そして、それ自体は、非常に大きなマーケットを形成しています。

しかし、それをやる際に「ほんとうに、その商品は、その”キャラクター”を活かしきっているのか?」であるとか、あるいは「その商品が”キャラクター”に対して、さらに価値を向上させているのか」を考えるべきだと思うのです。

人気コンテンツがあるからといって、それを、単純にパッケージに印刷しただけのフリカケやカップラーメンにするだとか、ゲーム性はたいしたことないアリキタリなソーシャルゲームにして、ファンから課金ガチャで金を搾り取る、だとか、そういう志の低いことをやってはいけないと思うのです。

仮に、カップラーメンにするなら、ガンダムのシャア=赤い=トマト味or唐辛子味の新商品 ということなら、まだ分かります。でも、ウルトラマンカレーって言われたら「えっ?」ってなりますよね。ゲームも、世界観をきちんと理解し、そのゲームによって原作の魅力がさらに深まるようなものならよいと思うのです。たとえば、ハンターハンターの世界で、新たな「念能力」をつくって戦うカードゲームとかなら(非常に複雑ですけど)面白いだろうなと思います。

本作は「残念な」例

そういう意味で、本作は「残念な部類」に属する作品です。つまり、折角のコンテンツを”消費”してしまっています。(もっというと”浪費”しています)

例えば、スターウォーズの世界観をよく知らない子供に、この本を読み聞かせして、果たして何が伝わるのでしょうか。(いや、もちろん、これが「キリンさんは・・・」「ゾウさんは・・・」「フラミンゴさんは・・・」という動物の睡眠に関する本ならば成立してしまうわけですので、「空想上の人々の”夜”を描いてもいいじゃないか」という気もしなくはないですが、まぁ、ぶっちゃけ、前提知識ゼロでは楽しめないと思うんですよね。)

結局のところ、前述したように、スターウォーズ好きが微笑みながら眺めるだけの本となります。これは「スターウォーズというコンテンツ」を消費しているにすぎません。オリジナルコンテンツに対して、新たな付加価値を与えているのかも疑問です。

さらに、前作・前々作では「子育ての苦悩」と「ダース・ヴェイダー」という、非常に距離のある2つの概念を「父親」という共通項目「だけ」で”一点突破”したことで圧倒的な面白さを獲得しました。折角のこの「一点突破力」を、なぜ今回捨て去ってしまったのか。これによって「4作目」への期待値も下がってしまったように思います。

ビジネス的に「好評だった2冊の勢いで作った」という気持ちは理解できますが、固定ファンを失いかねない失敗、なんじゃないかと思ってしまいます。

やっぱ、”名作”の続編って難しいね。

こういう話をするときに、僕がいつも思い出すのが「グレムリン」です。グレムリンは、1作目はダークな雰囲気が漂うホラーでした。しかし、2作目でパロディーに走ります。パニック映画ではあるが、ダークな雰囲気がなくなってしまい、1作目の雰囲気を期待して観に行ったファンはガックリきたわけです。

これは、ティム・バートンのバットマンシリーズ(バットマン、バットマン・リターンズ)を観た人たちが、バットマン・フォーエバーでは違和感を感じ、そして、バットマン&ロビンで愕然としたのにも似ています。(結局、ダークヒーローとしての魅力に立ち返った、バットマン・ビギンズや、ダークナイトが高い評価を得ているのだと思います。まぁ、興行成績的には、バットマン&ロビンも決して悪くないのですが。)

そういえば、ロボコップも3作目で大コケしましたね・・・。そういう例は、枚挙にいとまがありません。

一方、チャーリーズエンジェルや、ターミネーターのように「”世界観”と”基本設定・基本路線”を継続しつづけた」作品は、シリーズ通して高評価を得続けました。(個人的には、ターミネーターは2で終わっとけばよかったのに、と思ったりはしますが。。。) ※ちなみに、ハリー・ポッターやロード・オブ・ザ・リングなどは原作があるので少し意味合いが違うかなと思っています。

そして、この絵本の元ネタであるスターウォーズも「世界観の継続」と「設定・路線の継続」が高い評価を生み、商業的にも大成功をした作品です。それにもかかわらず、本作が、過去2作の「基本路線」を維持できなかったことは非常に残念だなと思いますね。ただ、「続編を作ることのむずかしさ」を再認識する、非常に良いお手本になっているように思いますので、ご興味のある方は、1作目・2作目と合わせてお読みになると良いと思いますよ。

おやすみなさいダース・ヴェイダー
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