プロフェッショナル・ビジネスマンになろう(5)|スピード感を養おう

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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「井の中の蛙」の王様を目指しても海にはでられない

プロ、即ち、プロフェッショナル、という言葉を「知らない」という人はいないでしょう。しかし、プロとは何か、ということに関する明確な定義を持って、その言葉を使っている人は少ないと思います。

本連載では、プロフェッショナルとは何か、について考え、そして、プロフェッショナル・ビジネスマンとして生きるためには、どうすればよいのかについて論考を進めます。

前回は「あるべきQuick & Dirty」について考えました。今回は、「スピード感」について考えてみたいと思います。

「スピード」は、「品質」よりも分かりにくい指標

「品質」というのは、理想とするアウトプットを見れば、だいたいアタリがつきます。(正確には、理想とするアウトプットをキチンと要素分解して、それぞれの要素に関して現在の自分とどれくらいギャップがあるかを分析することが重要なのですが、そのあたりは別稿に譲ります。)

しかし、「スピード」は、イメージするのが難しいです。というのも、「目の前で圧倒的なスピード」を見る機会がそもそも少ないからです。

例えば、小学校で一番足が速い男子、をイメージしてみましょう。仮に井上君とします。そのほかの生徒は「井上君は早いなー」と思っています。そうすると、その世界の理想の速さは「井上君」です。頑張って努力しても「井上君と同じくらい早くなりたい」がゴールとなります。

同じことが、いわゆる事業会社さんの上司部下、先輩後輩の間で起こっています。つまり、部下や後輩は、上司や先輩の「井上」が理想形になってしまうわけです。これは、非常にもったいないです。

圧倒的なスピード感の違いを知ろう

コンサルタントが幸運なのは(あるいは、不幸なのは)、上司・先輩が、圧倒的なスピードで仕事をこなしてくれることです。そして、さらに幸運(あるいは不幸)なことに、彼らは、部下・後輩にも、同じスピードを要求してきます。ええ、ほんとに死ぬかと思います。具体的な例を挙げてみましょう。

  • クライアントである重機メーカーの、競合リスト作成および各社の概況調査、クライアント企業との戦略の違いを調べてまとめる。
  • 世の中にある「サプライチェーン改革」の事例を収集し、カテゴライズして、クライアントに提言する価値のあるものをまとめる。
  • 飲料メーカーの1年間の新商品の洗い出し、それらを売上の大きい順に並べる。その上で、上位10商品については主要なマーケティング施策を整理する。

みたいな感じでしょうか。

さて、これらを聞いて、どれくらいの時間でできたら合格点だと思いますか?

僕の周囲に聞くと、3日後、とかって答えが返ってきます。一般的な企業に勤める人たちでは、それくらいが妥当だと思います。イメージでいうと「今週中にやっといて」って感じですよね。

尚、コンサルタントは、30分、とか、1時間、とかって答えます。もし2時間も与えれば、それなりのパワポ資料になって、何らかのメッセージくらいだしてくるでしょう。

果たして、この差は何なのでしょうか。僕は、前述した「本当に早い人を見たことが無い」ということ以外にも、二つの理由があると思います。

理由1.「納期」と「作業時間」を混同している

「どれくらいかかる?」という質問を受けたとき、事業会社の方は、最初に「納期」について考えます。それは、つまり「いま抱えている他の作業にどれくらい時間を取られるか」を考えることです。要するに「空き時間をどれくらい作れるか」を考えて、それである程度時間を作れれば、きっと週末までには完成する、という目算を立てるわけです。

しかし、コンサルタントは、先に「作業時間」を考えます。その際、まず、タスクを分解して、それぞれにどれくらい時間がかかるか考えます。上記の重機メーカーの例だと、「重機メーカー」という業界を検索して概況をつかむ=競合洗い出し(10分)→エクセルでまとめ方を決める(10分)→各社(3社くらい?)の過去3年分の有価証券報告書or決算短信の入手(10分×3)→クライアント企業の戦略理解のための資料読み込み(10分)と考えれば、「1時間」が答えになります。

業界やクライアント企業に関して既にある程度の知見があれば、競合洗い出し・クライアント企業の戦略理解の時間が不要なので、20分ほど短くなりますし、競合の有価証券報告書も手元にあるのであれば、さらに時間は短縮されるでしょう。(もちろん、ここで完璧なものを出す必要があるかどうかは別の話です。以前述べた「顧客=依頼者の要求レベル」をキチンと理解しておきましょう)

もちろん、コンサルタントは、作業時間=納期となるのですが、一般の事業会社の方が、そうならないという事情は重々承知しています。しかし「どのくらいの時間でできるか」というときに、最初に作業時間を考える癖をつけることが重要です。

また、ここで問題になるのは、「納期」から考え始めた人は「作業時間」を見積もらないケースが多い、ということです。また、さらに悪いことに「いま抱えているほかの作業」についても、同様に作業時間を見積もっていないケースが散見されます。これは「見積もった意味がない」ということになり、結果的に、キャパシティ以上のタスクを抱え込むことにもつながります。

理由2.「効率的に考えること」を軽視している

また、別の理由として考えられるのは、「効率的に考えること」について深く意識も理解もしていない、ということです。

先ほどの例でいうと、コンサルタントが、最初に「タスクを要素分解している」のが「効率的に考える」ための準備です。つまり作業に入る前に「何をどう考えるのか」を考え、そして、「やるべき作業とその順番」を考え、「どうしたら各タスクの作業効率が良いか」を考えるわけです。

このあたりは思考の型ということで、関連記事をUPしています。ご興味のある方は、そちらをご参照ください。(具体的には「思考のショートカット」「地図を描く」あたりをお勧めします。)

こういう「効率的に考えるための工夫」を怠ると、スピードが上がりません。その結果、だらだらと作業する、手戻ったりやり直したりして余計時間がかかる、というようなことになりがちです。例えば、先ほどの重機メーカーの競合調査の場合、前述した作業手順は「業界の全体像を知らないと、まとめ方が決まらないだろう」とか、「業界に詳しくないなら、他社の有価証券報告書をざざっとなめてからの方が、クライアントの戦略の際立つポイントがわかるだろう」とかいうことを考慮した作業順序になっています。(ちなみに、仮説思考という意味で言えば、先に「クライアントの戦略に関する資料を読んでから他社の資料を見るべきだ」という考え方もあります。)

目指す速度を「高く」設定しよう

いずれにしても、自分自身の考える「スピード」が、世の中で一番早いものではない、ということを自覚することが大切です。先の例だと「井上君基準」ではだめ、ということです。「ウサイン・ボルト君」とかいますからね、世界には。

そして、その「高い基準」を理想として掲げましょう。具体的な目標をつくりにくいなら、とりあえず「10分の一の時間でやりきる」ということで考えてみてください。10時間かけていたことを”8時間”にするのであれば「改善」の積み重ねで辿り着くかもしれませんが、それを”1時間”でやろうとすると抜本的な「革新」が必要なはずです。その際に、おそらく「効率的に考えようとしている自分」に気づけるでしょう。

 

今回は「スピード感」について解説しました。これで本連載の【第一部】に相当する「プロの持つべきコダワリ」に関しては語りつくしました。次回からは【第二部】として、不肖、田中が、日々どういうことを「行動指針」に据えているのかをご紹介していきたいと思います。

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