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ギックスの本棚/実践 デザイン・シンキング ~クリエイティブな思考で、ゼロ発想のイノベーションへ(日経デザイン編集部)

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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「やってみなはれ精神」をプロセス化したらこうなる

実践 デザイン・シンキング

本日は、日経デザイン編集部の「実践 デザイン・シンキング」をご紹介します。

デザイン思考とは?

さて、デザイン・シンキングとはなんでしょうか?「はじめに」より引用します。

デザイン・シンキングとは文字通り、優秀なデザイナーやクリエイティブな経営者の思考法をまねることで、これまでとは全く違う新しい発想を生み出そうとする手法である。ビジネスに活用すれば、イノベーションを起こせるようになり、新しい商品やサービスの創造につながると期待されている。

さらに、「あとがき」からも引用します。

「デザイン・シンキング」というと、デザインの領域でデザイナーだけが実行できるものと思われがちであるが、実は全く違う。むしろ企業の経営者やビジネスリーダーが率先して取り組むべき領域なのである。

ビジネスとデザインは同じ社内にありながら、これまでは別々の世界のものと考えられてきたのかもしれない。だが、今後はそうもいかない。既存の延長線だけの発想では新しいものが生み出せなくなった今、デザイナーやクリエイターの発想を多くの企業はもっと積極的に活かすべきであろう。

つまり、「一見、デザインと関係ないと思われる領域においても、デザインするように考えよう」ということなわけです。

デザインするように考える、ってどういうこと?

と、言われても、「それって同義反復じゃん」と思いますよね。ええ。僕もそう思います。

というわけで、本書の冒頭にある「デザイン・シンキング」の概要説明から、幾つかキーワードを引用してみます。

  • デザイン・シンキングとは、「理解」「発想」「試作」を素早く行い、新たな発想につなげる
  • そのアプローチの中心には、生活者の行動や気持ち、想い、考え方など、常に「人間」がある
  • これまでのやり方は、「技術」や「市場」を起点としていた。これは「数字で語れる、ロジカルに推論しやすい、市場性を予測しやすい」というメリットの一方、既存の延長線上で考えるため新しいものが生まれにくかった。デザイン・シンキングは「人間」を起点とすることで、現場の状況を直接的につかむことで「新しい発想に繋がりやすい」というメリットがある
  • デザイン・シンキングを活用すると、従来の「技術」「市場」の重なり部分に対して「人間」が重なる領域が広くなるので、イノベーションが起こりやすくなる

・・・なんでしょうね。わかったような、わからないような感じです。

とりあえず「人を起点にする」「現場感覚を大事にする」「過去からの延長ではなく、過去との連続性を敢えて断ち切って未来を見る」ということだと僕は理解しました。

デザイン・シンキングのステップ

本書のp.10に、まとめの図があります。同じものが、NIKKEI DESIGNのウェブサイトに掲載されていましたので、そちらを引用します。

出所:NIKKEI DESIGN

個人的には、中途半端に「概念化」して語るので、より分かりにくくなっているように思います。こういうときは「具体的」にして理解しましょう。(具体例と概念の関係性について興味のある方は、こちらをご参照ください。)

要は、

  1. フィールド観察・インタビューをする
  2. ブレストをする
  3. プロトタイピングで作ってみる
  4. 1にもどって、フィールド観察やインタビューを通じて、プロトタイプを評価する

ということですね。こう書くと、別に「デザイン」という特別な言葉を使わなくても、良いように思えてきます。

 プロトタイピングをする、が「デザイン」

ただし、この一連のデザイン・シンキングの流れにおいて、非常に重要なポイントが一つあります。それは「プロトタイピング」の重要性です。

解決策をまとめていき、試作品の開発に移る。最初は紙でもいいからすぐに試作品を作り、イメージを確認することが重要だ。生活者に試作品を見せるなどして試作品を検証し、不具合があれば再度試作品をつくったり、解決策を検討したりする。こうしたサイクルを何度も繰り返すことで、次第に完成へと近づけていくのである。

これは、「実際に(具体的な何かを)デザインしている」ということになりますので、「デザイン・シンキング」という言葉がしっくりきます。本書では、この概念に基づいた「実際の、デザイン・シンキングの活用例」を大量に紹介しています。

ソニーの「壁に対して真下から垂直に映像を投影するプロジェクター」、リコーの「360度画像を一回で撮影するカメラ」などを、人間(ユーザー)が、どういうところに不満を感じているのか、あるいは、どういう利活用があると楽しいのか、という視点で着想に至った、ということろは、非常に興味深いです。

経営に活かす、というところの説明が弱い気がするなぁ・・・

しかし、これらの事例の大半が「プロダクト・デザイン(サービス・デザイン、でもいいですけど)」の領域に過ぎないと僕は思います。これは、想定読者が経営者ではなく、デザイン領域に近い人たちだからなのかもしれませんが、残念です。デザイン・シンキングという言葉には、事業を小さく作って実際にやってみる、という「デザイン経営」の思想もカバーしているはずだと思うんですよね。

つまり、戦略コンサルタントである僕としては、この「デザイン・シンキング」を経営に活用してなんぼでしょ?、と思ってしまうのです。そして、この思想は、もはや古典と呼ばれてしまいかねないくらいの名著「リーン・スタートアップ」の思想に通じます。その視点で考えたとき、これって、要は「やってみなはれ」なんじゃないかと思うのです。

サントリー創業者の名言

「やってみなはれ。やらなわからしまへんで。」という言葉は、サントリー創業者である、鳥井信治郎氏の言葉であると言われています。

「やってみなはれ」という言葉に象徴されるように、私たちサントリーには、社員が自由闊達に新たなテーマにチャレンジできる社風があります。そして、こうした風土が活力ある企業活動を生み出す原動力となっています。それは、とりもなおさず社員個々人の多様な能力を認め、引き出し、活かし続けることであり、それこそがサントリーらしさであると考えています。

出所:SUNTORY ウェブサイト

この言葉の解釈にはいろいろあるでしょうが、端的にいえば「とにかくやってみる」「やってみてから、きっちりチェックして改善する」ということだと思うのです。この思想においては、過去からの連続性は分断されます。なぜなら「やってみること」が至上命題だからです。(もちろん、現実的には、いろんな事情があるとは思いますよ。)

経営において、この「プロトタイピング」=「小さく生んで大きく育ったらうれしいけど、育たなかったら、そこで立ち止まってまた考える」という思想を導入することは、非常に重要だと思います。

ちなみに、「経営の視点とデザインの考え方を融合する」という観点では、「CEOからDEOへ:デザインするリーダーになる方法」という本がおすすめです。本書に関しても解説記事を書いていますので、ご興味のある方はあわせてご一読ください。(ちなみに、この書評でも「あえて、Designって言葉を使わなくてもいいんじゃないかなー」と書いていたりします(笑))

 

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