セブンイレブンのドーナツは、いつ「ミスタードーナツ」を超えるのか?:経験曲線を駆け下りろ|ニュースななめ斬りbyギックス

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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大量生産の威力を舐めてはいけない

本日は、噂の、と言うには既に人口に膾炙した感のある話題「セブンイレブンのドーナツ」について考察していきます。

セブンイレブンのドーナツはミスドに似ているのか

セブンイレブンがドーナツを販売しているのは、皆様ご存知のことと思います。

セブンイレブン公式サイトのドーナツ情報はコチラ。→ http://www.sej.co.jp/sej/html/products/ff/doughnut/

この話題では、既に多くの記事が書かれており、「ミスド(ミスタードーナツ)に似ている」といった話が非常に多いです。

実際、購入してみましたが、確かに「似てます」。

どれくらい似ている?

というわけで、スペック比較表です。(写真は、ミスタードーナツおよびセブンイレブンのサイトより取得しています)

seven_donuts

写真の撮り方として、ミスタードーナツに一日の長があるのはさておきまして、まぁ、かなり似ていますね。おそらく「だいたい同じような感じで、最大3割安い」というのが訴求ポイントになってるのだと思います。

食べた感想は?

尚、弊社メンバーでセブンドーナツをモグモグ食べて、ミスタードーナツと比べてみた感想は、

  • 全般的に、甘さ控えめ
  • ちょっとボソボソしてるかも
  • 揚げてから時間がたってる感じが否めない

という感じでした。実際、店舗にはこんな感じで届いているので、製造後に時間がたってる感は仕方ないですね。

seven_donuts_2

 

さらに、今後の購入意思については、

  • ミスドが100円キャンペーンをしてたらそっちを買うが、そうでなければ安さは魅力
  • ミスドが近所になければ、これで十分かも
  • ミスドと比べなければ、別に違和感ない
  • 甘さ控えめだし、ミスドにはいかないオヂさんとかが買っちゃうかも

というものでした。

実は、ミスドはウカウカしていられない

というわけで、正直な感想として、「セブンイレブンのドーナツは、ミスドには及ばないが、まぁ、マズくはない(値段の割には美味い)」という感じだといってよいでしょう。それも踏まえてか、先ほどご紹介した記事では、「ミスドも歓迎」として、こんな事が書かれています。

そもそもマネされたミスド自身がまったく問題視していない。それどころか、今回のセブン参入に対してはむしろ歓迎モード。

「(ミスドは)専門店として40種類の製品を常時店舗に置いており、店内で調理して揚げたてを提供している。店内での居心地も追求しており、テイクアウトメインのセブンとは対象にしている市場が違うから、競合はしない。(セブンの)参入によってドーナツへの関心が高まることを期待している」(ミスド広報)

出所:まるでミスド…セブンの新主力ドーナツ、ここまで似てると問題では?ミスドは歓迎の謎(ビジネスジャーナル)

確かに、セブンイレブンという「全国1万7,277店舗」で「ドーナツ」が売られることで、ドーナツの国民食化が進めば、同じドーナツ屋さんとしては「パイが広がる」と歓迎するのも分かります。

しかし、だからといって、ミスドがウカウカしていていい、ということにはなりません。

経験曲線を駆け下りろ

みなさんは、経験曲線というものをご存知でしょうか。「累積生産量に従って、単位コストが低下する」というアレです。

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出所:コトラー&ケラーのマーケティングマネジメント 基本編(第3版) p.272

要するに、つくればつくるほど、安くつくれるようになる、ということです。このポイントは「一回あたりにたくさん作れば安い」というボリュームディスカウントの話とは違い、「累積生産量(期間に関わらず、トータルでどれくらいつくったか)」が鍵となるということです。

そして、これは、「大量に作れば、安くつくれるようになる」ということと同時に「大量に作れば、同じコストで、より高品質なものを作れる」ということを意味します。

ミスタードーナツの生産量

ミスタードーナツの国内売上は、2014年3月期で、年間約1,000億円*です(海外は140億円ですが今回は無視)。実際には全てがドーナツの売上ということは無いでしょう(ミスター飲茶とかありましたよね)から、3/4がドーナツだとしましょう。そして、ドーナツの単価を平均140円とすると、年間5.4億個のドーナツを売っている計算になります。国内のミスタードーナツの店舗数は、1,350店なので、1店舗あたり年間40万個(=1日あたり1,080個)となります。ふむふむ。

(*:https://www.duskin.co.jp/ir/library/irdata.html

また、店舗数の推移をみると、1971年に1号店を出店し、1980年には300店・1988年に600店・1997年に1,000店に展開**しています。

(**:https://www.misterdonut.jp/museum/history/y1970.html

トータルで見れば、40年間の営業をしているわけですが、この出店速度に鑑みて、荒く試算すると、37,000年店(”人月”的な意味合いです)の稼働となります。これに、1店舗あたり1,087個/日の売上をかけると、トータルの生産数(厳密にいうと、廃棄ロスもあるので販売数なわけですが、まぁいいでしょう)は、146億個となります。

セブンイレブンドーナツの生産量

翻って、セブンイレブンのポテンシャルはどれくらいでしょうか?さすがにミスタードーナツほども売れないだろうな、という感覚はあります。もちろん24時間営業だし、売場としては有利なんじゃないか、というような話もありますが、まぁ、1店舗あたり販売個数がミスドの1/10だとしましょう。先ほど、ミスタードーナツは、1店舗あたり1,087個/日だと設定しましたので、10分の1だと110個となります。

17,277店舗で、毎日110個ずつ休まずに売り続けたとすると、年間販売個数は7億個になります。(ちなみに、セブンイレブンのおにぎりは年間16億個売れている***そうなので、その半分以下という感じです。)

(***:http://www.sej.co.jp/products/trivia/trivia_01.html )

これらの情報を基に、今後20年間の、両者の累積生産量の推移(予測)を見てみましょう。

seven_donuts_graph1

なんと。セブンイレブンは、20年かかっても、累積生産量でミスタードーナッツには追いつけません。

やったね、ミスタードーナツ!これで安泰だ・・・と言いたいところですが、果たしてそうでしょうか?

過去と比べると、グラフが表情を変える

ここで、視点を変えて「ミスドの過去」と「セブンの未来」を比較してみましょう。

先ほど説明を端折った「ざっくり店舗数推移」(って、ここでも詳細には説明しませんが)と1店舗あたり1日1,080個、という数字を基に、ミスドの累計ドーナツ生産量を類推したものと、先ほどのセブンイレブンの累計生産量(予測)の比較です。

seven_donuts_graph2

最も大きな違いは、「垂直立ち上げのセブン」と「徐々に増加してきたミスド」ということになりそうです。

ミスタードーナツの1990年の累計ドーナツ生産量(試算)は23億個です。これは、セブンイレブンが3年後に達成する数字です。あるいは、ミスドの2000年の累計ドーナツ生産量(試算)は61億個です。これは、セブンイレブンが8年後に到達する数字です。

ミスタードーナツの味が「どの時点で完成されたのか」については、いろいろな意見があると思います。(僕の周りでも、「2年前に大きく味が変わった」と言ってる人がいます)しかし、「ミスドとしての味のベース」は、かなり早い段階で出来上がっていたのではないでしょうか。

もし、その味のベースが店舗数の増加率が伸びたところ(=上のグラフの”累計総生産量の傾きの変化”が起きたところ)で完成していたとすると、1990年~95年ころには完成していたのかもしれません。この仮説が正しいとすると、累積ドーナツ生産量が1990年の23億個に到達する3年後(2018年)には「多くの人が子供の頃に食べたミスタードーナツ ”レベル”」のドーナツがセブンイレブンに並ぶことになります。

面で押さえている「セブン」の怖さ

この状況が実現すれば、圧倒的な店舗数を誇るセブンイレブンの、顧客へのリーチ力の強さが物を言います。

24時間営業で、街の至る所に出店しているセブンイレブンで、「ミスタードーナツ”レベル”」のドーナツがいつでも食べられる。(しかも、おそらく、本家より安く)

これは、日本国内の多くの子供の口に入るドーナツが「ミスド」ではなく「セブン」のものとなることを意味します。「ミスドを食べたことないけど、セブンのドーナツは食べたことがある」という人が増加すると、オリジナルと模倣の立ち位置は(認識上で)逆転します。

卑近な例でいえば「セカオワ現象」ですね。

セブンイレブンのようなコンビニチェーンが怖いのは、こういう「経験曲線を圧倒的速度で駆け降りる」ということが可能な”生産網・販売網・物流網”を持っているということですね。このあたりを見誤って(例え、見かけ上だけでも)”歓迎ムード”を醸し出していると、windows登場時に、appleがやった「 C:\ONGRTLTN.W95 」広告の二の舞になるかもしれませんよね。

敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。正しい戦力分析が非常に重要だなと、ダイエットの最中にも関わらずドーナツを頬張りながら、しみじみ感じる今日この頃です。

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