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ギックスの本棚/外資系コンサルタントの企画力 「考えるスイッチ」であなたの思い込みを覆す(金巻龍一|東洋経済)

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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噛めば噛むほど味が出る。何度も読み返したい「金巻流思考術」の教科書。

外資系コンサルタントの企画力: 「考えるスイッチ」であなたの思い込みを覆す

本日は、IBM在籍時代および、ギックス創業後も常々お世話になっている、GCAサヴィアン マネージングディレクター金巻龍一氏の著作「外資系コンサルタントの企画力」をご紹介します。

関連記事:金巻龍一の「そもそも論」:コンサルティングファームはなぜ存在するのか?(インタビュー記事)

さぁ、”金巻一門”の門下生になろう

本書は、右脳的としか思えない天才的な閃きを、左脳的に理解可能な言葉を用いて表現する金巻氏が、自らの「”考え方”のコツ」を教えてくれる一冊です。

この本は、300ページの厚さですが、軽妙な語り口で、平易な言葉を使って書かれているため、20~30分程度あれば読み通すことができるでしょう。しかし、一度読んだだけでは絶対に理解できないし、絶対に実践できない、密度の濃い内容になっています。

本書は、「金巻流思考術」とも言うべき思考流派を究める”金巻一門”の門下生になるための入門書だと思えばよいです。そして、入門書であると同時に、何度読み返しても、その瞬間の自分のレベルに応じた新たな発見がある、いわば「金巻流 師範代」へとつながる秘伝書でもあると思います。

コンサルタントはもちろん、事業会社の経営企画部や、戦略スタッフは必ず読むべき一冊です。そして、そのほかの部署に所属する方も、手元に置いておいて損はない一冊です。

世の中の「うすっぺらい本」とは一味違う

本書の「はじめに」で、いきなり金巻節が炸裂します。

昨今、書店の経営書コーナーでは「○○術」「○○法」といった、何かをするにあたって、こうすると成功する、効率的にできるといった「コツ」を書いた本(通称「コツ本」)が平積みなり、売上ランキングを賑わしているという。個人的には、ああいった本が経営書やビジネス書の範疇に入れられていることに、強い抵抗を感じていた。というのも、誰かが発見したコツを読む。そのときは「なるほど」と思うが、実際に使おうとすると、うまくいかない。当たり前だが、使おうとする状況自体が、まずは本で説明されていた状況と微妙に違う。「水を熱して100度になると沸騰する」といった自然科学の公理や定義、あるいは、スキーや水泳上達のための理論と実践のコツであれば、そのまま活用もできよう。しかし、人間関係構築や自分の脳の働かせ方の意識改革ともなれば、コツひとつで急激に変わるのを期待すること自体、無理がある。

書店に平積みになった「ベストセラー本」を、いきなり一刀両断です。ばっさり。

では、この本では、何を教えてくれるのか。

企画のコツというのは(中略)コツそのものが何かを生むのでなく、通常、我々が「わかったつもり」ないしは「考えたつもり」になってしまっているポカに対してアラームをセットするようなものだ。人が見つけたコツをいっぱい覚えても、発想は豊かにならない。なぜそのコツが生まれたのかを理解することが重要だ。そして、「失敗しないためのコツ」というのは見つけにくい。むしろ、過去の失敗がなぜ起こってしまったのかを学べるよう、ある基準をもとに考えていると良いかもしれない。本書ではその基準を「コツ」として整理している。

つまり、「思考結果としてのコツ」ではなく「結果を生むための思考プロセスのコツ」を教える、というわけです。さらに

書き上げてみてわかったことだが、コツを数えてみると、企画内容を練るところよりも、周囲を説得する局面でのものの方が多い。一瞬、企画というとアイディアの素晴らしさが決め手のように思えるが、自分ひとりではできないことを組織の力を借りて行うのが企画だ。アイディアが斬新であればあるほど、周囲の方々を説得し協力を得るための作業が重要であり、難しいということだろう。

ということで、本書の活用シーンは「企画書を作る」というところに留まらず、「企画を通して、成果を生む」というところまでカバーしているわけです。

”本気”で考え抜かれた言葉の宝庫

さらに、本書は、「金巻流思考術」の師範であり、金巻一門の総帥である金巻龍一氏が、その「思考術」を最大限に活用して、考えに考え抜いて纏められています。「おわりに」から引用します。

普段思っていたことをそのまま書けばすぐに終わるだろうと思っていたが、それは相当に甘かった。「企画は、分かりやすく説明できることが重要」とうたっている本なのに、書いたものを見ると、何だかやさしいものを難しそうにこねくり回したようになってしまい、何度も大修正を行わなければならなかった。そして、何となくまとまったものを見ると、今度はあまりにも当たり前のことばかりのような気がしてきた心配になった。

”考えるプロ”が、”考えに考え抜いた”わけですから、この本の「ヤバさ」が、これだけでもご理解いただけると思います。

具体例と概念化の最適ミックス

本書は、非常にわかりやすく、そして実践的です。そして、先ほど述べたとおり、入門書としても秘伝書としても使えます。それはなぜか。

本書は「具体例」と、それを「概念化」したものがしっかりと組み合わされているからです。これは、非常に大切なことなのですが、ほとんどの書籍やセミナーなどにおいては(残念ながら)実践されていません。

具体例を概念化できる人は少ないし、概念を具体化できる人も少ない

一般的に、世の中の「ノウハウ本を読んだ人」「セミナーに出席した人」の感想は、大半が、以下の2つのどちらかになります。割合的には8割2割という感じです。

  • 具体例が沢山あって面白かったが、自分でどう使えばいいかわからなかった。=8割のセミナー・書籍の感想
  • 話に具体性がなくて、良くわからなかった。もっと事例が欲しかった。=2割のセミナー・書籍の感想

前者は、「具体例」を伝えられたものの、それを自分の場合に転用するための「概念」にすることができなかった、ということです。後者は、「概念」が伝えられた結果、それを読み手/聴衆が解釈して”自分のケース”に当てはめることができなかった ということになります。

これと全く同じことが、コンサル界隈では散見されます。世の中のコンサルティングプロジェクトの多くで「事例を持って来い問題」が起こっています。「他社事例はあるのか?見てみたい。どういう風に他社はやっているのかを”参考”にして考えたい」と。そして、実際に、同業の競合他社事例や、業界は違うが成功している他業界の先行事例を持っていくと「なるほどねー。まぁ、うちとは違うしね」「なるほどねー。まぁ、××さんは、○○が強みだからね」となって終了です。

要するに、

具体例 → <概念化> → 概念 → <具体化> →自社・自分に適用

ということをする必要があるわけですね。

この 具体例→概念の<概念化> も 概念→自社・自分に適用するための<具体化> も、どちらも難易度が高いです。

特に、具体例を渡された場合は「具体例の”本質”を見抜いて”概念”にする<概念化>」+「”概念”を自分の場合に適用するために考える<具体化>」の2ステップ必要なので、より難しくなってくるわけです。

その一方で、具体例の方は、具体例そのものが「わかりやすい」「おもしろい」となるので、世の中のセミナーや書籍は「具体例」を多く記述することで”逃げる”わけです。(概念だと、概念の理解そのものでつまづくと、おもしろくもなんともない、本やセミナーになってしまいますので。)

※概念化についてご興味のある方は、”物事の本質を抽出すること”についての関連記事「アナロジーで考える」「サマライズとはクリスタライズすること」もご一読ください。

具体例も概念も書くから、入門書にも秘伝書にもなる

ほぼすべての項で、具体例と概念の組み合わせが存在します。詳しくは本書を読んでいただけばよいのですが、ひとつ取り上げてみましょう。

「別にやらなくてもいいじゃないか」が新発想を引き出す という項です。

企画の最初の段階において、わたしは決まって、「別にやらなくてもいいじゃないか」と心の中で呟いてみることにしている。この例でいえば、「別に営業部なんか強化しなくてもいいじゃないか」と思うわけだ。そして、もし何もしなかったら会社としてどんな問題が顕在化するだろう、その兆候は、いつごろ、どのような形で見えてくるのだろう、さらに、放置すれば、それはどのくらいの時期にどんな大事件となるのだろうか、などと想像してみる。さぞかし大事件が起こりそうだと思いきや、不思議なことに、すぐにはこれといった大問題は頭に浮かばない。これは、問題がそこにないのではなく、自分自身が状況を把握していないということかもしれない。むろんどんな組織も、強化しないよりは強化した方がいい。でも、なぜ「いま」強化しろといっているのだろうか。「別にやらなくてもいいじゃないか」を考えると、様々な疑問が湧き上がってくる。

ここでもうひとひねり加えて、自分に質問する。「営業を強化しろと言っているが、営業なんかなくてもいいじゃないか」。

これは、具体例です。これだけで、とても面白い。ワクワクする。そして、さらにこの後ろに続けて、本当の「他社事例」として、「メンテナンス要員を営業にシフトさせて成功した機器販売企業」の話がでてきます。さらにさらに、物流というトピックで「別にやらなくてもいいじゃないか」の具体的な例があげられます。それだけ熱く具体例を語り、ぐいぐいと読者を惹きこんだあとの、この項のクロージングがこちら。

「なくてもいいじゃないか」。何かを改善しようとか、どうやってそれを得るかといった議論の際、この言葉が、一気に固定観念を破らせるときがある。自分が精通しているとは言えない領域での議論、あるいは固定観念の強い難航する議論の際に、簡単で効果的な発想転換法として重宝している。

この項は「やらなくてもいいじゃないか」「なくてもいいじゃないか」といってみる、という具体的な手続き・コツの話をしてきたが、それは表の顔で、実は”固定観念の破り方”の話だった、と<概念化>してくれた上で、「精通していない領域、固定観念の強い議論で使え」と、各自の状況に適用できる<具体化>のための指針を与えてくれるわけです。

当たり前に聞こえますか?いえいえ、とんでもない。世の中の多くの本は

  • 「なくてもいいじゃないか」という言葉が、あなたの柔軟な発想の鍵となります。
  • 「なくてもいいじゃないか」という魔法の一言で、あなたの企画力は格段に向上します。

という程度のクロージングになっているはずです。

話を戻しますと、この「最初の具体例部分」が、入門者が”おもしろい”と思う部分です。この”おもしろい”という感覚が、考え方・嗜好プロセスに対する知的好奇心をくすぐり、知的な刺激を与えてくれますので、これだけで「入門書」としての役割を十分果たしてくれます。

つづいて、中級者は、最後の<具体化>のセンテンスで「どういう場面で使えばいいか」を理解することができますので、実際に「実践する」ことができるようになります。このことによって、金巻流思考術を実際に適用してみる、というステージに進めます。

最後に、有段者になると、<概念化>の部分に着目して、「固定観念を破る」ために、他にどういうことができるか、ということを考え始めます。そうすると、この項が含まれる「第2章:妄想編「常識のフェンス」から脳を解放しよう」というタイトルが、俄然、強いメッセージを発してきます。次の項の「苦手な人や自分を嫌っている人と話をする」というのは、「固定観念を破るために他者の視点・視座をつかえ」ということを述べており、さらに言えば、その「視点・視座」は自分からできるだけ遠い方が良い、と言っていることになります。ここまでくると、かなり汎用性の高い”考え方”にたどり着いているわけです。

尚、師範代クラスになると、「金巻さんは、この話を具体例から考えたのか、概念から考えたのか、どちらだろうか」ということを考えます。おそらく、章立てを考えた際に、そこから2段、3段ブレイクダウンして、項目を切り出すところまでは概念で進めて、その項目に対して具体例をはめ込んでいきながら、項目の間引き・統合をしたのかなぁなどと思うわけです。そうすると、具体例⇔概念の紐づけ、すなわち双方向で<概念化>を考える必要があるだろうな・・・などといった、著者の「思考の型」そのものを分析して、何か取り込めることは無いか、などと考えることになるでしょう。これは【秘伝書】という話になると思うわけですね。

※これらはすべて、僕の妄想です。僕は金巻一門の師範代どころか、門下生でもなんでもないので、どうぞご笑覧くださいませ(笑

実践して、成長スパイラルに乗ろう

本書は「具体的なテクニック集」の皮を被った、具体例と概念のセットがてんこ盛りになったお得な一冊です。

「思考術」のレベルが、どういう状況にある方でも、読めば必ず得るものがありますので、まずは手に取って一読してみると良いのではないかと思います。そして、読むだけに終わらず、自分の場合に適用してみるように(つまり、中級レベルになれるように)心がけて、実践してみましょう。そうすれば、入門→中級→有段者→師範代と、「思考のプロ」としての階段を着実に上れるはずです。

というわけで、僕も来週から早速、金巻流思考術を実践していきたいと思います。僕と打ち合わせする人が、あらかじめ本書を読んでいると、ネタバレしちゃうなぁという危惧は抱きつつも、日本の知的生産性が向上するのは非常に良いことだと思いますので、是非、切磋琢磨していきましょう!

外資系コンサルタントの企画力: 「考えるスイッチ」であなたの思い込みを覆す
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