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「クラウドを知らない」ことの危うさ|問題解決手段の”選択の幅”を狭めるな

AUTHOR :  岩谷 和男

ITエンジニアは今すぐクラウドの利用IDをとるべし!
IT部門責任者はIDをとらせるべし!

こんにちは、技術チームの岩谷です。いきなり強い調子で書き出してしまいましたが、今回は申し上げたいことを先に書きます。下の3点です。

  • IT技術者が「クラウドを使いこなせない」のは危うい
  • IT設計者が「クラウドでできること/できないこと」を把握していないのは危うい
  • IT部門責任者が「クラウドがシステムにおよぼす納期・費用のインパクト」を把握していないのは危うい

これらの理由をこれから説明させてください。

まず「クラウド」についてですが、関連サイトで簡単に説明させていただいています。また以前の記事で「クラウド環境とクラウドではない環境(オンプレミス)の違い」についても述べさせていただきました。非常にザクっと申し上げますと

  • ITにおけるサービス形態の一つ
  • インターネットを介してサービスが提供されている
  • コンピュータがある場所をサービス利用者は知らない。知る必要がない。
  • 仮想化技術の進歩によってサービス提供範囲が急速に広がっている

という言い方ができます。また、この記事の中で私は「クラウドは定義の曖昧な言葉だから曖昧なまま覚えましょう」と書きました。

しかし今回申し上げたいのは、それは「サービス利用者」に対していえることで「サービス提供者」にはあてはまらない、「サービス提供者はクラウドについて知識を持つべきだ」ということです。「タクシーというサービス」を例に挙げると、タクシーを利用する人はタクシーのエンジンについて多くを知る必要はありません。ですがタクシーというサービスを提供する企業はタクシーのエンジンについて多くを知る必要があります。これと同じようにITのサービスを提供する企業はサービスのエンジンとなるクラウドについての深い知識が必要であると私は考えます。

インフラ構築日数を1ヶ月から2日弱へ短縮するインパクト

クラウドを利用することによって、ITサービスを構築する時のコストを削減する事が可能になるシーンは多いです。以下にインフラ構築に関する「時間的なコスト」をクラウドを利用した場合と利用しない場合で比較した例を掲載します。(以前の記事の再掲です)

クラウドサービスの登場によって、従来1ヶ月弱かかっていたインフラ構築作業を2日弱で行うことも可能になってきました(もちろん構築シーンは選びますが)。クラウド利用の有無が時間的なコストに大きな影響を及ぼすことがわかっていただけると思います。また構築技術者の人件費は構築期間に大きく左右されるので、「構築プロジェクトのチームコスト」という面からはこれ以上のインパクトがあるかもしれません。

「クラウドを知らない」ことは「ビジネスにおける問題解決の選択肢」を持っていないことにつながる

上記の例の違いはビジネス面でインパクトに跳ね返ってきます。すなわち「たまたま同じサービスを同時に思いついた2社があった場合、クラウドを利用した1社は利用しない1社にくらべて3週間早くサービスを開始できる」という事を意味します。これがマーケットへのインパクトや顧客の獲得に大きなアドバンテージを発揮する場合もあるでしょう。これをビジネスや経営の視点から「企業に求められる人材像」として考えると、「サービス立ち上げ企業」の経営者からすれば「クラウドについての知見がある人材は、”競争相手よりも早くサービスを世に出したい”という企業問題を解決できる人材である」となるわけです。逆にいえば「クラウドに対して乗り遅れているIT人材」は「新しい問題に対する解決能力が足りない人材」と判断される可能性があるということです。

具体的にはどういうことか?

IT技術者は「クラウドを使いこなす」べし

「上記のインフラ構築日数短縮化」を例に挙げると、まず「インフラ構築日数を1ヶ月から2日弱へ短縮するクラウドの作業スキル」は当然求められます。仮想コンピュータの構築スキルやクラウドデータベースの設定スキルなどです。これらが上記の問題解決を行う上での解決作業ができる事が技術者に求められる最低要件だからです。それに加えてIT技術者には「クラウドベンダが提供しているサービスを把握しておくこと」が求められると考えています。例えば有名なクラウドベンダであるAWSのクラウドサービスはインターネット上から管理画面(コンソール)にログインする事でサービスを利用できますが、この管理画面には「AWSのクラウドサービスたち」が一覧(サービスメニュー)になって並んでいます。このサービスメニューとサービス内容を7割程度覚えておくことを御勧めします。

IT設計者は「クラウドでできること/できないこと」を把握するべし

ITサービス構築における設計者は実装作業を行うことはないでしょう。この役割の皆さんには上記の「クラウドベンダが提供しているサービスを把握しておくこと」が必要となります。すなわちクラウドのサービスメニューが頭に入っていることによって「クラウドがサービス全体の設計において提供してくれる機能と提供してくれない機能」を把握し利用するクラウドサービスを判断する必要があるのです。上記の例で言えば「他社よりも先にサービスを開始できます!」という解決策を提示する問題解決者の位置に一番近いのはこのレイヤの皆さんだと思っています。

IT部門責任者は「クラウドがシステムにおよぼす納期・費用のインパクト」を把握するべし

このレイヤを担っていらっしゃるみなさんにもクラウドは無縁ではありません。すなわち「クラウドを利用した場合と利用しない場合」の納期・費用のインパクトを肌間隔と具体的な数字で把握する必要があります。クラウドサービスと直接触れ合うことのない部門責任者が肌間隔でこれを感じることは難しいので、部下の設計者・技術者から情報を積極的に吸い上げて自分の感覚として認識を再構成する事が求められるでしょう。また具体的な数字の把握に関してもその数字が生み出されたプロジェクトの状況要素を把握するのは簡単ではありません。やはり設計者・技術者からの情報吸上および認識の再構成が必要になります。部門責任者にはクラウドに関するノウハウ(Know How)よりもノウフウ(Know Who=必要な情報を提供してくれる人の存在)が重要になってくると考えています。

我々自身が変化の原動力であり続けるために

このように、ITエンジニアのみなさんは今すぐにでも!自前であっても!クラウドの利用IDをとって実際にクラウドを触ってみるべきです。プログラムのコーディング画面やデータベースのコマンド画面と同じようにクラウドの管理画面(コンソール)を使いこなせるようになるべきなのです。またIT部門を統括していらっしゃる方は部門の人材が須くクラウド問題解決能力を獲得できるように部門評価用クラウド環境の保有を行いクラウドに触れる機会のない人材を極力減らすべきです。「案件が立ち上がったら実業務に応じて知見の蓄積を」というスタンスでは明らかに手遅れです。

テクノロジーの進化にともなって、

  • 今までできなかった方法で情報をつなぐことができる
  • 今までできなかったスピードで処理を行う事ができる
  • 今までできなかった大量データを扱うことができる
  • 今までできなかった低額コストでサービスを運営できる

といった変化がもたらされ、それらが今新しいサービスが次々と生み出されている原動力になっています。

これらの原動力をささえる「テクノロジーの進化に追従できるエンジニア」でありつづけることが「ビジネス上の価値を持ち続ける人材」とイクォールであり、現在そのわかりやすいキーワードが「クラウドに対する知見」であるわけです。クラウドの登場によるサービス変遷サイクルの加速は我々が今まで経験してきた他の環境変化よりもインパクトが大きいです。この流れに追従できないことの危機感を我々も持ち続けましょう。私も肝に銘じます。

 

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