ギックスの本棚/プラクティカル・ドラッカー 英知を行動に変える40項(ウィリアム・A・コーエン|CCCメディアハウス)

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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既にリーダーの人も、これからリーダーになる人も、迷わず読め!

プラクティカル・ドラッカー 英知を行動にかえる40項

本日は、「もしドラ」で有名になったピーター・ドラッカーの”考え方”を、ドラッカーの教え子でもあるウィリアム・A・コーエン(カリフォルニア・インスティテュート・オブ・アドバンスト・マネジメントの学長)が解説する1冊「プラクティカル・ドラッカー」をご紹介します。

ドラッカーは「良いこと言う」んだよね。

ピーター・ドラッカーは、経営の神様と呼ばれています。そんなドラッカーの発言録から学ぶべきものは非常に多いです。以前、「プロフェッショナルの条件」をギックスの本棚でご紹介した際にも書いたとおり、僕の人生の方向転換を決意させてくれたのも、ドラッカーの本でした。

そんなドラッカーの発言や論文を、弟子であるコーエン氏が、自身の解釈を加えて整理したこの本は、キリスト教の「聖書」みたいなものです。ドラッカーの本を読んだことのない人にとっては”とっつきやすい一冊”でしょうし、読んだことのある人にとっては(賛否はともかく)”違う切り口に出会える一冊”となることと思います。

※尚、「解釈」というのは人によって異なります。実際、僕はこの書籍全てに対して、諸手を挙げて大賛成というわけでもありません。具体的には、No.9「みんなが知っていること はたいてい間違っている」という項に関しては、僕の解釈とは大きく異なるため、本書で挙げられる事例に全く共感できません。ですが「解釈というのはそういうものだ」という前提で読み進めていくことが大事なのだと思っています。そういう意味では、僕が別途連載した「本気で読み解く”人月の神話”」も、異論があって然るべきだと思いながら書いています。異論や反論、時には批判を受けるにしても、まずは、己の考えを明確化することが大切なのです。

全てのレベルの”リーダー”が、手に取るべき一冊

そういう意味で、誰が読んでも得るものがあるとは思うものの、敢えてターゲットを絞るとすれば、本書は、全ての段階のリーダーが読むべき一冊です。間違いありません。

  • 会社を経営している
  • 先日、課長に昇進した
  • はじめて、部下を一人持った
  • そろそろ、リーダーに任命されそうだ
  • リーダーになりたいなと思っている

という、どの段階でもOKです。得るものが必ずあります。

そして、その「リーダーシップの発揮先」は、フルタイムの仕事でなくても大丈夫です。

  • バイトリーダー
  • 野球部のキャプテン
  • 生徒会の委員長
  • 修学旅行の班長

などなど。なんでもOKです。

最初に読むべきは、No.7「リーダーが避けて通れない最も重要な決断」

本書は、副題に「英知を行動に変える40項」とある通り、40の項目について語られます。どの項目からも得られるものはあると思いますが、リーダーが最初に読むべきは、その7つ目「リーダーが避けて通れない最も重要な決断」です。

この「もっとも重要な決断」とは「自分は、リーダーになるのだ!という決断をすること」を指しています。

誰でも最初はリーダー未経験者で、リーダーが担う責任と権限への恐れを、そしてリーダーシップという未知の世界に対する恐れを感じながら、最初の一歩を踏み出す。リーダーになることを決断するのに年齢は関係ない。

これは、非常に重要です。本書の中で紹介される「リーダーのエピソード」の多くは、リーダーにならざるを得ないような状況に追い込まれて「仕方なくリーダーになった」あるいは「リーダーになる以外に選択の余地が無かった」人たちです。

しかし、そうやって「リーダーになることを、自分自身の選択として行ったことが、リーダーとして活躍するためのキッカケ」となっています。リーダーになるというチャンス(もしくは、危機)が訪れた際には、「自分でリーダーになると決める」ことを意識することが大切なわけです。

リーダーとマネジャーは違う

「もしドラ」の正式名称が「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」であることは皆様ご存知のことと思います。そうすると、ドラッカーは「マネージャー(マネジャー)」を定義しているんだろうなと想像できますよね。

しかし、ここでは「リーダー」の話をしています。どういうこと?ってなりますよね。というわけで、ドラッカーの定義する「リーダー」と「マネジャー」の違いを理解しておきましょう。

ドラッカーの言葉を借りれば、リーダーとマネジャーの違いは、マネジャーがものごとを正しくおこなう人物であるのに対し、リーダーが正しいものごとをおこなう人物であるという点にある。

著者は、これは単なる言葉遊びではないとして、以下のように続けます。

リーダーが正しいことを正しくおこなうに越したことはないが、どちらか一方を選ぶなら、リーダーは正しいものごとをおこなうことを優先させるべきなのだ。それが効率的に実行されるかを考える以前に、あくまでも正しいことを実行しなくてはならない。

この定義は、僕の心に強く響きます。

僕は、株式会社ギックスのCMSO(Chief Marketing & Strategy Officer)という役割を担っています。読んで字の如くStrategy(戦略)を担当していますので、複数の事業間の戦略の一貫性などは僕が責任を持って決めるわけですが、その前提となる”何を為すべきか”という会社の方向性を決めることは、僕の担当範囲ではありません。ギックスという会社においては、CEOの網野が「リーダー」として”正しいものごと”を見極める役割です。それを受けて、僕と、もう1名の役員の花谷が、”ものごとを正しくおこなう”という役割なのです。

ギックス全体の「リーダー」網野をサポートするという意味で、僕自身が「リーダーという存在をしっかりと理解する」ことが大切なのです。そして、本書は、あるべきリーダーを理解することに非常に役立ちます。(ちなみに、僕自身も、社内の事業やプロジェクトにおいてはリーダーとして振る舞うことが求められますので、その意味でも、もちろん本書は役に立ちます。念のため。)

リーダーシップはマーケティングの仕事???

その一方、本書では「リーダーシップは、マーケティングの仕事」とも語られます。この一文だけ読むと、上述したギックスにおける僕の役割(Chief Marketing & Strategy Officer)と、リーダーではなくマネジャーとして振る舞うことに齟齬があるように見えますが、そんなことはありません。まずは、関係個所を引用します。

マーケティングの基本的な発想は、自分のもっているものを顧客に売りつけることではなく、顧客がほしいものを売ることといえるだろう。

(中略)

ドラッカーによれば、組織の未来に対して最も大きな責任を負う人物であるリーダーは、みずからが信じることができて、メンバーも信じ、望むような使命を出発点にすべきだという。その使命を果たす事、それが組織の戦略的な目標となる。

リーダーは、組織の指名に説得力を持たせ、それをメンバーに伝達し、浸透させていくことを絶えず続けていかねばならない。そして、適切な戦術を駆使することにより、戦略を立案し実行し、組織の目的と目標を実現して、使命を果たす責任がある。こうした活動は、マーケティングそのものだ。その意味で、リーダーシップはマーケティングの仕事なのである。

ここでの「マーケティング」という言葉は、”社内向けのマーケティング活動”という意味と捉えるべきです。「リーダーシップをとるということは、(外部向け)マーケティング担当者の仕事である」ということにはなりません。「リーダーシップという概念を実行するにあたり、実際に行う行為は(社内向けの)マーケティング活動である」という解釈が正しいと思います。(尚、原文は「Leadership is marketing.」という言葉です。これは、直訳的に「リーダーシップとは、マーケティングだ」、あるいは「リーダーシップとは、まさにマーケティング活動だ。」と訳すべきではないかと思います。)

リーダーの意思決定および作戦遂行の”考え方”を学ぼう

本書は「リーダー」の在り方についてのお話から始まりますが、その後、(一部上述しましたが)マーケティングおよび戦略立案、そして組織のお話へと続いていきます。いろいろと興味深いのですが、幾つか僕の琴線に触れた部分をピックアップしておきます。(※原文通りではないものも含まれていますので、引用形式にしていません)

  • マーケティングは戦略であり、販売は戦術である。好調な販売が、戦略(=マーケティング)の邪魔をすることもある。
  • 非合理に見える顧客の行動には、かならず意味(合理性)がある。それを理解するように努めるべきだ。
  • 捨てることが成功への道。「いまゼロから始めるとしたら、いまおこなっている事業を本当にやりたいと思うか?」「もし答えがノーなら、あなたはどういう行動をとるつもりか?」
  • 利益はイノベーションの原資と位置付けるべきである。利益を出せない企業は論外だが、利益の最大化を目的に据えるのは間違い。”最大利益”ではなく”最適利益”を求めよ。
  • 企業の目的が顧客の創造である以上、企業の基本的な機能は二つしかない。それは、マーケティングとイノベーションである。この二つの活動は成果を生み出す。それ以外は、全てコストである。

僕の理解では、これらは、「リーダーとは、どのように考え、どのように振る舞うべきか」という事に対する提言です。

リーダーになることが決まった人、既にリーダーとしての役割を担っている人、あるいは、リーダーを志す人、そして、僕のようにリーダーを補佐する人。「リーダーという役割」に”かかわり”を持つ全ての人にが、読んで理解しておくべき一冊だとおもいますよ。(※やや、日本語訳の問題なのか、原著の問題なのか、解釈に戸惑いを覚える部分はありますのでご注意くださいませ。こういう類の本で”解釈”に迷った時のコツは「己を信じること」です。)

関連記事:HBR Best10論文/第3章「自己探求の時代」

 

プラクティカル・ドラッカー 英知を行動にかえる40項
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