サークルKサンクス、IBM製品で地理情報を分析し、 店舗の立地評価モデルを実現|ニュースななめ斬りbyギックス

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データと勘・経験のバランスが成功の鍵

はじめまして、ギックスDAチーム佐谷です。本日は、IBM社のプレスリリース記事「サークルKサンクスの立地評価モデル」をななめ斬ります。

リリース記事内容

現場の知見やノウハウの取り込みとモデルの検証・修正のPDCAサイクルにより 継続的にモデルを改善

日本IBMは、株式会社サークルKサンクス(本社:東京都中央区、以下:サークルKサンクス)が高度な分析により、的確なセグメンテーショ ンを可能 にする「IBM® SPSS Modeler」を採用して、地理情報を分析に活用し、高精度な店舗の立地評価モデルを構築したことを発表します。

コンビニエンスストア(以下:コンビニ)は日常生活に欠かせない身近なショップとして定着し、現在もその業態やサービスを進化させ続けてい ます。一 方で、国内のコンビニ店舗数は、約5万2,000店(出典:2015年3月度、JFAコンビニエンスストア統計調査月報)を超える状況にあ り、各チェーン の競争は激しさを増しています。サークルKサンクスは、このような市場環境の変化に対して、的確な出店を図り、自社チェーンの優位性を高める ため、客観的 な数値に裏付けられた判断力を重要ととらえ、地理情報システム(GIS)を活用した立地評価に取り組んでいます。

同社は、出店ポイントの確定後、そのポイントをGISに入力し、マーケティング分析や商圏作成をし、最終的な立地評価を行います。しかし、 分析モデ ルが導き出した立地評価結果が、ビジネス現場の感覚と乖離してしまうことがあるため、GISから得られた結果を分析する基盤として、「IBM SPSS Modeler」の活用を開始しました。

GISでは、現場の経験から得られた知見について、数値的な裏づけとして駐車場や間口の広さといったインプットとなるデータと売上などの結 果となるデータを集計して取り入れるなど、精度を上げるために調査項目とモデルの見直しを継続しています。

GISの調査項目では、本来の目的である地理情報に加えて、作成した商圏の人口動態や就業者数などの統計データ、店舗のさまざまな機能、人 や自動車 の交通量のバランス、開店した店舗の周辺環境などを確認するなど、データ内容を精査し、立地評価の分析精度を高めるための取り組みを開始して います。ま た、必要に応じて研究会を開催し、現場の担当者や部門長などから意見を募り、GISの活用を通じて培ったノウハウや知見を共有することで、分 析モデルの構 築とリモデルに取り組んでいます。

サークルKサンクスは、立地評価モデルに加えて、新しいアプローチから物件を評価するマニュアルの整備や、出店後の店舗を客観的に検証でき る検証ツールなどを導入して、さまざまな視点から店舗を評価することで総合的な立地評価をさらに推進していきます。

「IBM SPSS Modeler」は、CSVなどの多様な形式のデータを容易に取り込めることや、データの作成や加工の手軽さ、ノンプログラミングでのモデリングの実現に 加えて、分析結果の有効性や有意性などを把握できることで、ビジネスを支援します。

出所:IBMプレスリリース

採用されている手法はオーソドックス

今回の例は、新規出店用の立地評価モデル構築のアプローチとしてはオーソドックスな部類に入ると思います。(私自身、過去に同様の手順で新規出店評価を行った経験があります)基本的な流れは、以下のようになります。

  1. 出店ポイントが決まる
  2. 商圏のインプット作成
    ・統計データ:世帯数や人口構成など
  3. 店舗にまつわるインプット作成
    ・不変なパラメータ:売場面積・駐車場台数など
    ・可変なパラメータ:店舗フォーマット・商品ラインナップなど
  4. 評価モデルにインプットを流し込む
  5. 可変なパラメータを調整して評価結果が最大になるように調整

おそらく、このプロジェクトも、同様の手順で進められたことでしょう。

現場の”声”の弊害

さて、そんなオーソドックスなアプローチで行われたであろうこのモデル構築ですが、(このプロジェクトの実際の状況は知る由もありませんが)私には、記事内の以下の記述が少し気になります。

GISでは、現場の経験から得られた知見について、数値的な裏づけとして駐車場や間口の広さといったインプットとなるデータと売上などの 結果となるデータを集計して取り入れるなど、精度を上げるために調査項目とモデルの見直しを継続しています。

「現場の経験の裏付け」がどれだけ必要なのか?というのが私の正直な感想です。「現場の経験」が登場した途端に、ミクロな視点で考えがちになります。例えば、ここで挙げられている「駐車場」や「間口の広さ」が、新規出店時の評価にどれだけ組み込まれるべきなのでしょうか。さらに、

また、必要に応じて研究会を開催し、現場の担当者や部門長などから意見を募り、GISの活用を通じて培ったノウハウや知見を共有することで、分析モ デルの構 築とリモデルに取り組んでいます。

という記述からも、構築したモデルの評価について現場の声を積極的に取り入れていることが読み取れます。これらの現場寄りな状況は、モデル構築にとって逆効果となるリスクを多く孕みます。。

立地評価は構造的に、ミクロな視点に陥りやすい

「立地評価」という手法は、議論がミクロな方向に向かいやすいという構造的な課題を抱えています。

具体的に言うと、「立地評価モデルはモデル構築の際に自分たちでいじれるパラメータが少ない」のです。

前述した評価手順の「2.商圏のインプット作成」、「3.店舗にまつわるインプット作成」、のアウトプットが評価モデルへのインプットとなるわけですが、この中で、恣意的に調整できるパラメータは3の一部に限られます。(当たり前ですが、周辺人口や在住世帯数、出店用の土地の広さなどは、自分たちでは変えられません。)その結果、自分たちが変えられる範囲の中でのトライアンドエラーに夢中になってしまいがちです。それこそが「ミクロな視点」でのモデルいじりに陥るということです。(※モデル作りの現場では、不変と思われているパラメータも項目ごと増やしたり減らしたりという調整を行うこともあり得ます。)

モデルの正当性を確かめる相手は誰なのか?

構築した評価モデルを使ってある出店候補地の立地評価を行ったとして、その評価結果の妥当性についてフィードバックをもらいにいく相手は誰であるべきでしょうか。私は、その相手は現場ではなく、まずは「データ」であるべきだと思います。

今回の例でいえば、構築したモデルをすぐに出店予定地に適用してその結果を現場に見せに行くのではなく、まず可能な限り多くのポイントに適用してみることをお勧めします。(まずは全国に約21万存在する”町丁目”すべての中心点に適用してみる、など。)それにより、モデルの特徴を知ることができます。例えば、あるモデルは田舎で評価が上がりやすいモデルだな、とか、別のモデルは幹線道路沿いで評価が上がりやすいなとかいうことが、データからのフィードバックでわかるわけです。

その積み重ねによって、評価に使用している指標を「”効く指標”と”効かない指標”」に分解していく作業が進み、実際に”効く指標”を峻別した上で(≒勝ちパターンがある程度わかった上で)、現場にフィードバックをもらいにいくことが望ましいでしょう。このステップを怠ると、データの裏付けがない現場の”勘と経験”がモデルに組み込まれてしまうことになります。(関連記事:勘・経験・嗅覚は、データによる裏付けが鍵 | graffe.jp

せっかくの立地評価モデルは、攻めの出店に利用しよう

もうひとつ気がかりなポイントがあります。

同社は、出店ポイントの確定後、そのポイントをGISに入力し、マーケティング分析や商圏作成をし、最終的な立地評価を行います。

もちろん、これは立地評価モデルの「ひとつの使い方」であることは間違いありません。しかし、本来的な使い方とは言えません。

本来であれば構築した立地評価モデルは、「出店実現可能性ある場所すべてに適用し、高い評価を得た地域を中心に出店候補地の掘り起こしに活用する」といった攻めの場面で利用されるべきですし、そのような使われ方をすることで立地評価の価値が最大限に発揮されます。

今回の例のように、でてきた物件に対してのみそれを評価していくような受け身のスタイルでの評価モデルの活用にとどまってしまう理由は、「全国規模でモデルを適用してみる」というようなマクロな発想に繋がっていない、もしくは全国規模にモデルを適用したくても出来ない事情がある、のどちらかでしょう。

イノベーションは、データで起こせる

PDCAを素早く回して評価モデルをリモデルしていくことはとても重要ですが、Checkの部分で「現場の声によるバイアスがかかりすぎる」と、モデルそのものの信頼性を崩してしまうリスクがあるということをしっかりと理解しましょう。

現場の声を聴くことはもちろん大事です。しかし、それより先に、まずは業界外の人間でも理解できるようなレベルまで評価要素を分解していく作業に注力すべきではないでしょうか。そして、それは「データ起点で考える」という思考スタイルが鍵になります。データをしっかりと読み解き、現場の声=仮説もデータによって検証するという姿勢を堅持していくことで、単なる”勘と経験”ではなく、”データによって裏付けされた勘と経験”が、従来とは一味違う「モデル」の構築に役立ち、競争力強化の源泉となると私は思います。

また、そうやって苦心して構築した評価モデルを、「攻めの場面」にもしっかりと活用することで、さらに大きな投資効果を得ていただきたいと思います。

 


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佐谷 岳穂(さたに たけほ)

地理学専攻から出発し、金融系SIerのエンジニアという人生最大の未体験ゾーンを突破したのち、商圏分析を得意とするマーケティング会社を経て現職。GISや空間クエリといったツールや統計データを使いこなす空間分析のエキスパートであり、現在は”Data Abduction”チームの一員としてデータから得られる示唆をクライアントの価値に変える業務に従事。地図だけでなく商業施設などミクロな空間単位での空間分析にも挑戦中。

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