”考え方”を考える|コア(核)から考え始めよう!:資料作成のコツ

AUTHOR :  田中 耕比古

マイルストーンとその目的を決めれば、作るべき順番が決まる

この連載では、資料作成のテクニックについて考えていきます。本日は「コア(核)から考え始める」というテクニックについてご紹介します。

まずは骨子(ストーリーライン)。では、その次は???

以前の連載「プレゼンってなんだ?」の中で、「骨子(ストーリーライン)からつくる」というお話をしました。これは、王道です。問題は、その次です。資料に落とすに当たって、何から手を付けるべきなのでしょうか。

正解は、資料に手を付ける前に、スケジュールを引く、です。

スケジュールを引いて、マイルストーンを決める

スケジュールを引くと、マイルストーンを決めることができます。マイルストーンとは一里塚、とかそういうものですね。一定の距離を進んだことを示すもので、移動距離の目安になります。プロジェクトの中に、このマイルストーンを定めておくわけです。

資料を作成するということは、どこかでその資料を使ってプレゼンテーションなり会議なりが行われるわけなので、最終ゴールはそのタイミングになります。そこまでの間に、マイルストーンを置いておくわけです。

資料作りということで考えると、このマイルストーンは上司や先輩、スーパーバイザーによる「レビュー」となるのが普通です。

いつ、何をレビューしてもらうべきか

レビューをしてもらうといっても、出来たところまで持ってきたから、とりあえず読んでみてくれ、というわけにもいきません。そんなもやっとした依頼では、読んだ方も何をコメントして良いのか困ってしまいます。

そこで、マイルストーンを設定する際に、「そのタイミングで何をレビューしてもらうのか」を予め決めておくことが理想です。

一番最初のレビューは(まだやっていないならば)ストーリーラインの確認です。そもそも、何を資料に落とし込むのか。その資料のゴールはどこで、そこまでどうやって聴衆を導くつもりなのか。そういうことを合意しなければいけません。

そして、次のレビューが、ついに「資料」のレビューです。最初にアナタが持っていくべきものは、プレゼンなり報告なりの中核を為す「キラー紙」です。野球で言うところの「決め球」という感じでしょうか。

キラー紙が定まらないと、ストーリーに影響が出る

実は、キラー紙のレビューは、ストーリーラインのレビューと同じくらい重要です。なぜなら、キラー紙が変われば、ストーリーそのものが変わってしまうのです。

「こういうデートコースで女の子を口説こう」と考える際に、決め球となるところ、例えば遊園地、例えばレストランを、具体的に詰めておかなければ、デートプランの是非は判断できません。遊園地で告白する、というので、てっきりディズニーランドのことかなと思っていたら、実は浅草花屋敷だった、って話だと、レビュアーも困りますよね。「え、ディズニーランドのつもりで、諸手を挙げて賛成してたんだけどな・・・」ってなっちゃいますよね。

ですので、そういう「コア(核)」になる部分を、先に固めてしまいましょう。コアが固まれば、枝葉はある程度なんとでも調整が効きます。

レビューに耐えうる”完成度”を見極めろ

マイルストーンにおいては、レビューに耐えうる資料を準備しないといけません。しかし、それは必ずしも「完成品じゃないとダメ」ということではありません。これは、何をレビューしてほしいのか?ということによって変わります。先ほどの遊園地の例だと、ディズニーランド、ということが決まっていれば十分な場合もあれば、告白するピンポイントの場所や時刻まで明確にしておきたい場合もあるでしょうね。(花火があがるタイミングで、シンデレラ城の近くで指輪を渡したい、とかね。)

資料作りに話を戻すと、その場でホワイトボードに書いて説明すれば十分事足りることもありますし、パワーポイントで3~5枚のキラー紙を完璧に作りきっておかないといけない場合もあります。場合によってはエクセルで表やグラフをつくりながら話す方が良いこともあります。

初心者は、作り切った方が無難

とはいえ、資料作り初心者の方は、可能な限り完成品に近づけておく方が無難です。もちろん、完璧を求めてつくると時間がかかってしまいますよね。特に、初心者であれば時間のかかり方は尋常ではないと思います。また、そうやって必死で完成品に近づけても、大半はレビュアーによってボツにされます。ただ、それでも、完成品に近づけることには意味があります。

その理由は、以下の3つです。

  1. 自分が作りたいものを、自分自身で自覚できる
  2. 自分の精一杯が、まだまだ足りないのだと気づける
  3. レビュアーのインプットを増やすことに繋がるため、レビュー内容が高度になる

ひとつめは、当たり前のようでいて、意外と忘れがちな事実です。たいていの場合、自分が何を作りたいのかを、自分自身が理解しきっていないものなのです。それをクリアにするためにも、可能な限り作り切りましょう。

ふたつめは、レビューを受けた際に、自分の成長余地に気づくという効果です。レビュアーの意見を聞いて、新しい発見があった時に、自分が考えきっていない状態であれば「自分でも気づけたかもしれない」という甘い思想に逃げがちです。脳みそを限界まで振り絞ったものにしか、成長の機会は降りてきません。

最後のポイントは、資料の成果物としての価値向上に直結します。以前も書いた通り、レビュアーは常に有利な立場にいます。目の前に「たたき台」があるので、それを元に発想を膨らませるので、ゼロからイチを作る人よりも、イチをもとにあれこれ考える方が柔軟性が高まりやすいわけです。しかし、その場合に、目の前にあるたたき台がショボければ、でてくるフィードバックの内容はレビュアーに一任するしかありません。一方、たたき台の完成度が高ければ、そこから得られるインスピレーションも大きいために、レビュアーはその価値をより一層発揮してくれるはずです。

ということで、マイルストーンごとのレビューに際しては、できる限り完成度の高い資料を持って行って、コテンパンにやっつけてもらうようにしましょう。作っている資料の出来が良くなるのみならず、きっと、あなた自身の成長速度が格段に上がりますよ。

おまけ:資料の完成度を上げるためのマインドセット

尚、時間をかければかけるほど完成度が上がる、というのは当たり前です。完成度の上げ方を「前倒し」にすることが求められます。このあたりは、関連記事:プロ論|あるべきQuick&Dirty をご一読いただければと思います。

SERVICE