第7章:「企業変革の落とし穴」本気で変革したいひとのための注意点リスト|ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文/ギックスの本棚

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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本気で「変革」したいんですか?と、まず問おう

ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文―世界の経営者が愛読する

本日は、リーダーシップ論で有名なコッター氏による「企業変革の落とし穴(1995年)|ページ数:21p」です。前回(第6章)が「イノベーションの罠」で、今回が「企業変革の落とし穴」ということで、イノベーションも企業変革も一筋縄ではいかないということですね。(笑

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8つの落とし穴

さて、コッター氏の定義によると、企業変革には8つの段階があり、それらの段階それぞれに「落とし穴」が存在する、とされます。見出しを引用します。

  1. 「変革は緊急課題である」ことが全社に徹底されない
  2. 変革推進チームのリーダーシップが不十分である
  3. ビジョンが見えない
  4. 社内コミュニケーションが絶対的に不足している
  5. ビジョンの障害を放置してしまう
  6. 計画的な短期的成果の欠如
  7. 早すぎる勝利宣言
  8. 変革推進チームのリーダーシップが不十分である

2つめと8つめが全く同じなのは誤植じゃないのか?と疑いたくもなりますが、この見出しを見るだけで「ああ、そうだよねっ!」と大きく頷く方も多いでしょう。さすがHBRが誇るBEST10論文に選ばれるだけのことはあります。

8項目について、一言ずつ補足させていただくと・・・

  1. 「変革は緊急課題である」ことが全社に徹底されない → 今のままでいることの安心感・安定感から脱却したくない”抵抗勢力”を説得できない
  2. 変革推進チームのリーダーシップが不十分である → 変革を積極的に進める、という意識がないと、全く前に進まない
  3. ビジョンが見えない → 他人に説明できないということは、皆のベクトルが揃わないということ。矛盾を抱えたり、細部に落ちて方向を見失ったりしがち
  4. 社内コミュニケーションが絶対的に不足している → 変革は一部の人間で成し遂げるものではないため、継続的なコミュニケーションが必須
  5. ビジョンの障害を放置してしまう → 発言力のある抵抗勢力を放置すると、土壇場ですべてが水泡に帰すリスクがある。どうやって”障害”に立ち向かうか
  6. 計画的な短期的成果の欠如 → 短期的に成果を”上げる”という意識が無いと、時間がかかって良いという空気が蔓延し、緊急性が低いという誤解を招く
  7. 早すぎる勝利宣言 → 変化の浸透には5~10年かかる。抵抗勢力は”勝利の美酒”に酔う人々を労うことで、変革を台無しにしようとする傾向にあり、それは成功する
  8. 変革推進チームのリーダーシップが不十分である → 変革の”本質”を見誤ったり、後継者選びを間違うと変革は後退する。新たな行動様式を組織のDNAとして浸透させる

と言う感じになりますね。

こうしてみると、やはり8番目は、まったく意味が通らないというわけではないものの、誤植っぽいですね。僕なら「変革を常態化する評価体系を設定しない」とかって書きますね。

まずは「本気かどうか?」=WHATの話

この論文を読むと、変革の鍵は「経営陣が本気で変革したいと思っているかどうか」および「その”本気”を、行動で示せているか」という2点に尽きるということがわかります。

まず、最初の「本気かどうか」ですが、多くの場合、本気で変えたい!と心から願っていることが少ないと思うのです。もちろん、志ある経営者が、なんとかしたいと一念発起して変革を断行する、というストーリーは、メディアなどを通して目にする機会が多いです。しかし、それは数少ない成功例です。非常に残念なことに、多くの経営者は「サラリーマン」です。できる事ならば、リスクを最小化して行きたいと思っています。(だって、そうやって失敗を避けて昇進してきた人たちが、経営者に任命されているわけですもんね)

論文内でも、この課題は、非常に大きな問題として取り上げられています。

経営陣がすくみ上ってしまうのはたいていの場合、その多くは「管理者」であり、「指導者」と呼べる人材ではないことに起因している。管理者の使命は、リスクを最小化し、既存制度をうまく機能させながら維持することである。一方、変革を推し進めるには、新たな制度を作り出さなければならず、当然強力なリーダーシップは必須である。

結局のところ、誰かが本気で変えたい、と思わなければ、変革なんて実現されるはずがないのです。これは、変革がトップ主導かミドル主導(ボトムアップ型)かという話とも直接は関係しません。ミドル主導であっても、そのミドルが「上も下も説得し、巻き込んで、変革を成し遂げるのだ」という強い意志を持っていないと、変革は、永遠に成し遂げられることはないのです。

まずは「現状を変えたい」という気持ち、そして「理想形はこうだ」という想いがあるかどうか、なんですよね。(尚、理想形は、結果的に間違っていてもいいんです。いわゆる仮説です。やりながら、変化していき、ベストな形を見つけ出せれば目的は達成されますからね。)

その次は「本気」を行動で示せるか?=HOWの話

その「本気」があると、次はプロセスの話です。この論文の主題は、どちらかというと、このプロセスの話に置かれています。どのようなチーム編成(リーダー選定)にするべきか、抵抗勢力をどのように扱うか、どういう頻度でどういう内容のコミュニケーションを図って社内に浸透させるか、短期的なマイルストーンをどのように設定するべきか、などなど、具体例を入れつつ、丁寧に紹介されます。

要となる当該事業部門の長ではなく、人事部や品質管理部、経営企画部などのスタッフ部門の幹部がチームを率いてしまっている場合もある。その人がどれほどの逸材であり、いかに献身的であっても、当該部門からリーダーが出ない限り、グループが十二分の力を発することはあり得ない。

変革推進チームにリーダーシップが欠けていても、当座のところ、変革プログラムは進展を見せるものだ。しかし遅かれ早かれ、変革プログラムに抵抗する機運が高まり、頓挫してしまうことだろう。

変革の失敗例を見ると、たいてい、計画や方針、プログラムといった類が羅列されており、肝心のビジョンが欠けている。ある企業では、暑さ10センチにも及ぶ変革プログラム・マニュアルを社員に配布していた。気が遠くなるようなこの分厚い冊子のページをめくると、今後の手順、目標、方法、最終期限などについてこと細かく記載してあったが、このプログラムが導く先が何であるかについて明確かつ説得力あふれる記述は一切見当たらなかった。

当然のことながら(中略)この大仰なマニュアルは、彼らを結束させることも、変革を成し遂げようというやる気を引き出すこともなかった。

コミュニケーション力に長けた執行役員の場合、日常業務のあらゆる面でビジョンに関するメッセージを巧みに織り込む。

たとえば、業務上の問題に関する解決策が定例会議に諮られた際などは、全社のビジネスシステムに適合するのか否かについて話す。また通常の人事考課の場合でも、その社員の行動がビジョンに貢献するのか、逆に不適当なのかについて説明する。(中略)さらに、社内説明会などの質疑応答の場にでも、変革の目標に関連付けながら、社員からの質問に答える。

このような具体的な記述が数多くありますので、「おうよ、俺たちは本気だぜ!やるぜ!!やってやるぜ!!!」と言える状況になった方には、この論文は非常に有用です。一方で「うーん、本気かなぁ・・・」と不安になる人たちは、この論文を読んでも得るものはないです。知識は増えるでしょうが、成果には繋がりません。

何事においても、WHATが無い状態で、HOWを幾ら考えても無駄です。変革に際しても例外ではありません。まずは、WHAT(何を成し遂げたいのか?)をクリアにすることから始め、この論文にあるHOWを徹底していくべきだと言えるでしょう。

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