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スシローが待ち時間をほぼゼロにするアプリ データのマーケティング活用を本格化(日経デジタルマーケティング7月号)|ニュースななめ斬りbyギックス

AUTHOR :   ギックス

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ギックス
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分析の目的から集めるべきデータや導入すべき仕組みを考える

日経デジタルマーケティング7月号p12-13に掲載された記事『スシローが待ち時間をほぼゼロにするアプリ データのマーケティング活用を本格化』で、新たに開発された『スシローアプリ』について考察します。

スシローの自社開発アプリ『スシローアプリ』について(記事概要)

記事の概要について、本文から引用します。

スシローがデータのマーケティング活用に本格的に乗り出す。 同社は6月中に、スマートフォン向けアプリ「スシローアプリ」を活用したチェックイン機能を、店頭の整理券発券システムに搭載する。スシローの基幹システムとも連携しており、アプリ利用者が何人で利用したか(組人数)、利用金額はどれほどか、といったデータの分析が可能になるという。スシローはこうしたデータを蓄積して、CMR(顧客関係管理)や広告配信に生かすことを目指す。

今回開発された「スシローアプリ」により顧客は来店の予約が可能になります。予約方法は2種類。

  1. 前日までに、日時を指定して予約する
  2. 当日、アプリ上で整理券を発券する

2については、これまで店頭に行かなければ不可能だった順番待ちがアプリ上で可能になるというサービスです。

さらに、記事内ではこのアプリの特徴として次の2つが書かれています。

  • 会員のデモグラフィックデータを取得しない(会員登録しなくても利用できる)
  • 予約した客には来店時に”チェックイン”してもらうことにより、アプリのデータとスシロー店内での利用データを紐づける

「デモグラフィックデータはあったらうれしいが、無くても問題ない」という判断

挙げた2つの特徴のうち、まずは「会員のデモグラフィックデータを取得しない」という点に着目します。

アプリを使って会員情報を得る際に、真っ先に思いつくのが「デモグラフィックデータの取得」でしょう。しかしながら、スシローはデモグラフィックデータを取得しないという判断をしています。

確かに、デモグラフィックデータがあれば、性年代別や居住地別の分析などが可能になるでしょう。一方で、デモグラフィックデータの取得には顧客に会員登録をしてもらう必要があるため、アプリの導入率は下がるはずです。デモグラフィックデータの取得よりも、会員登録の障壁を無くすことでアプリ導入率の向上を優先した結果が「デモフラフィックデータを取得しない」という判断でしょう。

とはいえ、スシローがデモグラフィックデータを不必要な物と捉えているわけではないようです。スシローは、このアプリを使ってテイクアウトサービスを今後全店展開する予定で、このサービスの利用には会員登録を求めるとのことです。あくまで、必要なデータの優先順位を付けた結果、まずはデモグラフィックデータの取得よりもアプリ導入率の向上を優先すべきと判断したのでしょう。

アプリIDと店舗のPOSデータを結び付ける”チェックイン”という仕組み

「スシローアプリ」のもう一つの特徴が、”チェックイン”機能です。”チェックイン”機能とは、アプリで整理券を発券した顧客に対して、来店した証として店頭の案内パネルに事前通知された番号を入力してもらう仕組みです。

記事内には、アプリで整理券を発券しておきながら来店しないというケースが頻発したため、来店の有無を確定させる目的で”チェックイン”を導入した、と書かれています。

たしかに、来店の有無の把握というオペレーション上の理由もあるでしょうが、アプリIDと店舗利用履歴の紐付けが”チェックイン”を導入した主な目的でしょう。アプリIDと店舗利用履歴の紐付けによって、POSデータをID-POSデータとして扱うことが可能になります。

アプリIDによって「同一利用者を特定する」だけでも大きな価値がある

アプリIDとPOSデータとが紐づきID-POSデータとなることで、次の2つが可能になります。

  • デモグラフィックデータと利用履歴を紐付けて、「利用した個人を特定する」
  • アプリIDで複数の利用を紐付けて、「同一利用者を特定する」

ID-POS分析というと、「利用した個人を特定する」用途をイメージされるかもしれませんが、「同一利用者を特定する」だけでも十分な価値があります。「同一利用者を特定する」ことにより、顧客ごとの年間利用額や来店頻度などの算出や、「複数店舗利用者と単独店舗利用者で利用行動に差があるのか」などの分析が可能になります。

スシローは、「同一利用者を特定する」だけで十分価値のある分析結果を出せると考え、アプリへの会員登録を不要にしたのでしょう。

アプリの閲覧履歴データを活用すれば、「利用しなかった人」の分析も可能になる

実際に『スシローアプリ』がどのようなデータを取得しているかはわかりませんが、もしアプリの閲覧履歴データを取得できれば、分析の幅が広がります。例えば、整理券発券ページの閲覧履歴データからは、顧客が許容可能な待ち時間の分析や、「来店しようと考えたが、混んでいるので来店をやめた」といった行動の把握が可能になるでしょう。

さらに、”チェックイン”を通してアプリ閲覧履歴データと店舗利用履歴データとの紐づけが可能であるとすると、「待ち時間が長くても予約を入れる顧客がよく注文する商品は何か」や、「待ち時間が30分のときに、予約をあきらめる人と予約を入れる人では利用傾向がどう違うのか」などの分析も可能になるでしょう。

POSデータからだけでは、「利用した人の利用実績」を把握することはできても、「利用しなかった人の行動」や「利用した人の利用前の行動」については把握不可能です。これを可能にする『スシローアプリ』と”チェックイン”という仕組みは、画期的であると言えるでしょう。

『スシローアプリ』は、「分析により何が知りたいのか、そのために取得すべきデータは何か」がよく考えられたうえで作られたアプリだと感じます。IoTの時代になりあらゆるデータの取得が可能になってきましたが、分析の目的から取得するデータをあらかじめ取捨選択することが重要でしょう。


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山田 洋(やまだ ひろし)

有機化学の分野で博士(理学)を取得。企業での研究職を経て現職。道具はフラスコから分析ツールに、分析対象は有機化合物からビジネスデータに変わっても、仮説検証のプロセスは同じ。化学分野での経験を応用させて、現職では Business Analyticsチームのリーダーを務める。興味のある分析ツールはTableau。ちなみに好きな元素は「ケイ素(シリコン)」。

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