B-1グランプリ食堂に行ってみた|秋葉原の高架下活用を考える/ニュースななめ斬りbyギックス

AUTHOR :  田中 耕比古

高架下は「ストーリーライン」で語るのに適している

本日は、秋葉原に、都内初のB-1グランプリ常設公認店「B-1グランプリ食堂」なるものができたというお話を取り上げます。

B-1グランプリ食堂とは

公式サイトより、コンセプトを引用します。

「B-1グランプリ食堂 AKI-OKA CARAVANE」はご当地グルメを通じて地域のまちおこしに取り組むイベント「B-1グランプリ」の常設公認店。

「地域から日本を元気に」を目標に地域の活性化に取り組む、B-1グランプリ(ご当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリ)の理念を応援します。

終日、買物客や観光客で賑わう「秋葉原」で、日本各地の食文化の情報発信基地として、国内外問わず、多くの方に日本の魅力を発信する場所でありたいと願っています。

出所:B-1グランプリ食堂 公式サイト

アキバに来た人に、全国のB級グルメを食べてもらおう、ということみたいですね。しれっと「国内外問わず」という表現がありますが、これ、結構重要です。クールジャパンという魔法の呪文がありますが、クールかクールじゃないかは別にして「アキバ」というのは、海外にもその名をとどろかすオタクの聖地です。街としての集客力は高いので、その人たちに「日本各地の食文化を伝える」というのは、コンセプトとして明快ですね。(ただ、僕の訪問時に海外の方がいた印象はないのですが・・・)

お店は、12台の屋台が並んだフードコート、という感じです。フードの屋台が10台と、ドリンクが2台。(僕が訪れた際には、かき氷と缶ビールを売るブースが追加されていました。週末だけかな?)座席は、両端と中央の3ヶ所に、それぞれテーブルが15台程度設置されていたと思います。4人掛けなので、100~150人くらいの収容力という感じでしょうか。訪問時は、土曜の11:30でしたが、埋まり具合は9割5分くらい。ただ、長居する人は少ないので席が無くて困るという印象はなかったです。一部、立食スペースもあったので、子供連れでなければ、そこでささっと食べて帰る、という使い方もできそうです。

尚、屋台での決済はSuicaのみ。Suicaを持っていない人は、エリア中央に設置された券売機で食券を購入する仕組みになっています。

そもそも、B-1グランプリって?

B-1グランプリ、というのは、B級グルメの1位を競うグランプリ・・・ではありません。なんと、B-1のBは地域BRANDの「B」なんです!(ビックリ)

会場では自慢のご当地グルメと熱気あふれるまちおこしに取り組む面々で大変な盛り上がり。しかしB-1グランプリは食べ物を売ることを目的としたグルメイベントではありません。地元に愛されている料理の提供をしますが、飲食店・飲食業組合などとして出ることはできません。(B-1グランプリの誤解

またブース内で調理をする人と同じ人数、もしくはそれ以上の数のひとたちが、呼び込みをするのではなく、ブースの外で列に並んで待っていただいている来場者の方々にまちの様々なPRで楽しんでもらっています。(B-1グランプリの秘密

 B-1グランプリの「B」は地域BRAND(ブランド)の「B」であり、まちを盛り上げ、地域ブランドを確立しようと日々活動するまちおこし団体の、年に一度の共同PRイベントです。自分たちのまちを愛する熱い仲間たちが集い、ご当地グルメをきっかけとして地元に来てもらいたいという思いで、地域ブランドを高めることにつなげるイベントなのです。

B-1グランプリをきっかけに多くの方がまちを訪れてくれるようになります。結果の伴うまちのPR活動は、「ひとづくり」「ひとおこし」につながります。地域内でともに活動する仲間同士、地域を超えた団体同士がお互いに切磋琢磨しあい、地方から日本を元気にしていきます。

出所:B-1グランプリ 公式サイト

このB-1グランプリ 公式サイトをみていると、いろいろな「こだわり」があることがわかります。たとえば、量と価格にも明確な定義がありました。「基本的に、ハーフサイズで、300~500円でご提供」なんだそうです。マヂか。

③ 量と価格

B-1グランプリではハーフサイズでの提供と地元での販売価格を考慮して、量と価格を団体ごとに設定しています。ハーフサイズとしているのは食べ比べをしてもらうためです。価格は300円から500円ですが、食材の価格などの違いで設定しています。

都市部のグルメイベントなどではやきそばが1000円近くするものもあります。飲食を生業としていれば、高い交通費や出展料を払ってイベントに出店したら元を取らなくてはなりません。またお客様も現地に行かなくとも食べるのだから多少高くても、と納得して購入されるのだと思います。

B-1グランプリは現地に来てもらうきっかけ作りの場ですので、自慢の料理を味わってもらうことはもちろんですが、地元と同じ程度の価格で、複数のご当地グルメを口にしてもらい、合わせて地域の良さを感じてもらえればと思います。

出所:B-1グランプリ 公式サイト

目的「いろんな地域(ご当地)に対して興味を持ってもらう」に対して、手段「いろいろ試してもらう」が設定されているわけですね。

でも、これ、意外と知られていないと思うんですよ。僕も知らなかったですし。

「B-1グランプリ食堂」の運営は株式会社JR東日本都市開発=JRグループ

このB-1グランプリ食堂の運営会社は「株式会社JR東日本都市開発」です。社名から分かる通り、JR東日本のグループ企業です。事業領域は「高架下・線路近接用地」および「駅近隣地」の活用ですね。

私たちは、大きく4つの事業を軸として展開しています。

主に高架下と線路近接用地の管理および店舗などの開発を行う「開発管理事業」、駅を中心にショッピングセンターの開発・運営を行う「ショッピングセンター事業」、オフィス・住宅・寮などの賃貸を行う「オフィス・住宅事業」、駅近傍で物販・飲食店舗などを展開する「物販・飲食事業」。これらの4事業部門が連携し、「お客さま満足度の向上」と「沿線価値の創造、住みたくなる街づくり」の実現に向け、良質なサービスを提供いたします。

出所:株式会社JR東日本都市開発

実際に、B-1グランプリ食堂のある秋葉原ー御徒町エリアでは、秋葉原駅から順に「AKB48 CAFE&SHOP」「GUNDUM CAFE」「CHABARA(ちゃばら)」「B-1グランプリ食堂」「2K540」と、各種商業施設が高架下を埋め尽くしています。凄い。

まずは、「料金安めで量少なめ=いろいろ食べて」のアピールを!

上記のように、料金安めで量少なめでの提供がB-1グランプリの特徴です。そして、その特徴をB-1グランプリ食堂も踏襲しています。量は少なめで、300~500円です。

提供者としては、単品でお腹いっぱいになってもらうよりは、いろいろ楽しんでもらいたい=いろんな地域に興味を持ってもらいたい、という狙いなわけですから、来場者は「折角だから、いろいろ食べる」ことに意味があるわけですね。

これは、もっともっと訴求して良いポイントだと思います。そもそも「B-1グランプリ」自体がいろいろと誤解されているわけなので、その誤解を解く努力を一緒にしていくのが「B-1グランプリ食堂」としての役割なのではないでしょうか。

伝える努力は重要です。前提を共有しておかないと、理解されないことは沢山あります。「伝え方」は、また別のお話ですが、その前に、そもそも「誰に何を伝えるか」を考えることが先決です。(関連記事:プレゼンのコツ/”勝ち”を意識して組み立てる

もっと「Suicaで便利」で”外国人”に訴求してみては?

また、JR東日本グループということで、Suicaの活用が前面に押し出されています。冒頭に述べたとおり、屋台での決済はSuicaのみです。これは、現金処理を極力避けることで、オペレーションが効率化されるという効果もあります。(会計担当と調理人が同一の場合は、衛生的にも、避けるに越したことがないのです。)また、販売履歴の管理も容易です。Suicaの場合、同一の人がどれくらい買っているか、という情報も(分析するかどうかはさておいて)蓄積することが可能です。

ただ、これは「Suica(および、それに類する交通系電子マネー)を持っていない人」にとっては、間違いなく「不便だなぁ」という印象を与えます。特に、訪日観光客の場合には、Suica保有率は決して高くはないはずです。

いっそのこと、海外旅行者向けのSuica貸し出しサービスなどとセットで、「訪日外国人をB-1グランプリ食堂に誘客する」というのはどうでしょうか。もちろん、貸し出さなくても普通に買えばいいんですが、旅行者用に成田空港や羽田空港で貸出カウンターを作る、という感じですね。(羽田空港はJRが乗り入れていないのですが、カウンターくらいつくれる・・・よね?)保証金を500円とかとっておけば、東京の思い出+再訪時のために持って帰ってもらってもOKなわけですし、東京らしさのあるスペシャルデザインにすればいいと思うんですよね。

と思って調べたら、こんなのがありました。今もやってるのかは分かりませんが、こういう感じで訪日外国人にSuicaを発行する際に、B-1グランプリ食堂のパンフレットを渡して「ぜひ、ご当地を楽しんでみよう」というアプローチもありでしょう。Suica決済で楽しめる東京!小銭不要で便利!というのは訴求力高いと思うんですよね。(ただ、国際ブランドのクレジットカードではチャージができないことには注意が必要ですが・・・。)

基本的に、JRグループに限らず、電鉄系企業の場合、「電車に乗って移動する」「移動した先でお金を使う」という自社の鉄道経済圏を活性化させるのが王道です。「国内外問わず、多くの方に日本の魅力を発信する場所でありたい」と謳うのであれば、JRグループとして”訪日観光客の送客先として、積極的にアピールしていくべき”だと思います。

もっと「町おこし」に照準を合わせても良さそう

また、大前提に立ち返ると、B-1グランプリは「ご当地への興味喚起」が目的です。現状だと、B-1グランプリ食堂で「ひるぜん焼そば」を食べておいしいと思っても、「じゃぁ、ひるぜんに行こう」とはならないと思うのです。そもそも、B-1グランプリ食堂に限らず、B級グルメと呼ばれる料理の多くは、地元に人を呼ぶほどのコンテンツ力があるのか疑問です。例えば、富士宮やきそばは非常に有名ですし、僕自身、東京では何度も食べたことがありますが、富士宮に行ったことはありません。また、残念ながら僕の周りにも、わざわざ現地に行って食べてきた!という猛者はいません。(世の中にはいっぱいいるのかもしれませんが・・・)

先ほども述べたとおり、JR東日本として考えると、電車に乗ってもらってなんぼ!というところがあると思いますので、グループ全体の価値貢献としては、地方への送客の足掛かりにしたいところです。

案①:ご当地感の醸成

そう考えると、もっと「ご当地感」をアピールする方法はないのか?と思ってしまいます。今回の訪問の印象は「B級グルメの屋台が並んでいる」というものです。ご当地情報は、各屋台にパンフレットなどが置かれているのですが、それに留まっています。

僕なら、最初に「日本地図」を置いて、各料理の場所をプロットします。大変申し訳ないのですが、「佐伯ごまだしうどん」「田川ホルモン鍋」と聞いても、僕には何県のことなのかさっぱりわかりません。勝浦・十和田・なみえ あたりも、僕にはわかりません。「どこの県の、どういう料理を食べてるのか?」が分からないので、ご当地感とかって無いんですよね。(※公式サイトには「秋田県横手市」「千葉県勝浦市」などという記載があるのですが、パンフレットには記載が無いんですよね。)

また、すぐお隣の「CHABARA(ちゃばら)」に入っている「日本百貨店しょくひんかん」は、相当な”ご当地感”があります。「B-1グランプリ食堂で食べて→日本百貨店しょくひんかんでお土産を買う」とか「日本百貨店しょくひんかんで興味を持って→B-1グランプリ食堂に来る」とか、そういう相互送客のやりようがある気がするのですが、僕の見た限りでは、明確な送客意思は見えませんでした。

特に、外国人観光客だと、非常に興味を持つ気がするんですよね。

また、CHABARAの反対側に位置する「2K540」は、日本のモノづくりを実践する店舗が入っています。(現時点では、今治タオルの専門店は2K540に入っていませんが)例えば「今治焼豚玉子飯」とコラボした「今治タオル」とかってど真ん中じゃないんでしょうか。逆方向のアプローチでいえば、広島のスニーカーメーカーである「スピングルムーブ」が2K540に出展しているからと、広島のB級グルメを持ってくる、みたいなのもアリですよね。

案②:ご当地送客を強化する

あるいは、もっと直接的な施策もあります。「”B-1グランプリ食堂”プラン」を、JR系列の旅行代理店「びゅう」で設定しちゃうのはどうでしょう。

近場なら、こういう日帰りプランも良いでしょうね。(八戸とかだと、さすがに泊まりでしょうけど。)

実際にプランを設定しなくても、既存のプランに、B-1グランプリ食堂で発行されたレシートを見せれば、道中の缶ビールとかコーヒーが無料、とか、駅弁が割引、とかでも別にいいと思うんですよね。

要は、ご当地に行こう、が無理でも、どっか旅行に行こう、と思ってもらえれば、JR的には目的は達成されているわけですからね。(B-1的には不本意でしょうが)

高架下は、いろいろ余地がありそう。

ちなみに、CHABARAとB-1グランプリは隣接していますが、B-1グランプリと2K540の間は、少し距離があります。この流れだと、近い将来、そこもJR東日本都市開発が管轄する何らかの商業施設が入ると考えられます。その場合、何を入れるか、は非常に興味深いですね。

高架下というのは、デッドスペースです。高級感は醸成しにくいという印象がありますし、小さなお店がひしめき合っているイメージです。(僕のイメージは、神戸の三宮~元町あたりですが、一般的じゃなかったらごめんなさい)

そこに「日本全国のご当地サムシング」を提供する、CHABARA(食材・調味料)、B-1グランプリ食堂(カジュアル料理)、2K540(手工芸品)が並んでいるわけです。この横連携をさらに強化するためには、何を提供するのが良いのかと考えると、とてもワクワクします。

びゅうプラザを入れて旅行とか売っちゃいます? あるいは、体験工房(料理もしくは手工芸)とかにしちゃいます? いっそ振り切ってガチの日本食屋さん(寿司とか天ぷらとか+日本酒)にしちゃいます? さすがにやりすぎならばB級グルメとガチ日本料理の間を取って、焼き鳥とかおでんとかの居酒屋メニューをガンガン出す「屋台村」にしちゃいます? モノづくりの延長で、ホンダのインディカー用エンジンとか、SHARPの超巨大液晶テレビとか、テクノロジーの粋を展示して、それ自体を集客の目玉にしちゃいます? などなど。

これらの個別のアイデアに意味があるとは思いませんが、「日本の良さを世の中に伝える」というような一貫性のあるテーマを決めると、おもしろそうなアイデアがいくらでもでてくると思うのです。

ただ、まちがっても、ドラクエカフェとかにはしないでほしいですね。それは、駅前のAKB48とガンダムのエリアまでで留めておいて頂きたいと思います。というのも、高架下と言う「ひとつながりの空間」は、そこを移動していく順番に沿って”ストーリー”を作り上げることが可能だと僕は思うんです。御徒町から上野はアメ横です。秋葉原からアメ横までをどういうストーリーでつなぐか? さらに先の、アメ横から上野の動物園・美術館エリアまでは、どういうストーリーでつなぐのか? と考えると無限の可能性を感じます。

ちなみに、山手線は、一周34.5kmあるんだそうです。高架下として使えないエリアもあるでしょうけれど・・・いろいろできそうな気がしますね!

おまけ:肝心の「お味」は?

さて、完全に横道にそれましたが、かなり美味しいです。ただ、「B-1のBは、地域ブランドのB!」と言われても、僕的にはやっぱりB級グルメの祭典です。ジャンクな感じです。毎日これだと色々問題がありそうですが、たまに食べたくなる味ですね。

14種類の商品(8月上旬時点)のうち、8種類を食べたので、それについての感想を。(※番号は、パンフレット等に掲載の番号です)

  • 1:横手やきそば:目玉焼きの乗ったヤキソバです。
  • 2:勝浦タンタンメン:熱いラー油がたっぷりです。冷めません。ヤケド注意。
  • 2:佐伯ごまだしうどん:うどんです
  • 5:富士宮やきそば:コシが強いヤキソバです
  • 6:津ギョウザ:デカい揚げギョウザです。美味いです。
  • 8:ひるぜん焼そば:一押しです。トッピングの山椒が最高に合います。
  • 9:今治焼き豚玉子飯:ひるぜん焼きそばと競る美味さ。甘辛いタレは、たぶん生姜が入ってるんじゃないかと思います。
  • K:なみえ焼そば:やきうどんです。

というわけで、僕のオススメは2人で行って「ひるぜん焼そば」「今治焼き豚玉子飯」「津ギョウザ」の3品で1,300円ですね。まだ食べられる人は、「横手やきそば」「勝浦タンタンメン」「富士宮やきそば」あたりから1品追加すると良いと思います。(ビールを飲む人は、もつ煮とか、北上コロッケとかも良いかもしれませんね。)

現在禁酒中なので、禁酒が明けたらまた行こうかなーと思います。

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