リンナイの白いテーブルコンロ「HOWARO(ホワロ)」:白物家電に色がつくなか、コンロは白くなる|ニュースななめ斬りbyギックス

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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自前のチャネルだからできる”攻め”

本日は、日経デジタルマーケティング 2015年9月号より「前年比で4倍売れている真っ白なテーブルコンロ EC会員の声で、リンナイが下した異例の決断」をとりあげます。

記事概要:コンロが白い、という衝撃!

リンナイが、自社ECサイト限定で販売している「真っ白なコンロ HOWARO(ホワロ)」が販売好調とのことです。

インターネット限定の白いコンロ HOWARO / Seiso

出所:リンナイ公式サイト

記事より、抜粋引用します。

ガス器具メーカーのリンナイが、4/23に発売した、白い本体が特徴のテーブルコンロ「HOWARO(ホワロ)」の新型が好調だ。

「既に前年比で4倍の台数が売れている」と管理本部eビジネス推進室の福本啓史室長は胸を張る。同製品は(中略)つまみも含めてすべてを白で統一した初の製品ということもあり、注目度は高かった。(中略)

同製品はリンナイが、自社EC(電子商取引)サイト限定で販売している。ECで販売する中で、顧客の声を集め続け、見えてきた顧客ニーズへの対応や、デジタルを活用したマーケティング施策が奏功したことが、ヒットの大きな要因となっている。

出所:日経デジタルマーケティング 2015年9月号

記事内では、好調の理由として

  • 黒やグレーが主流のテーブルコンロ市場に、白い本体を2011年に投入した(この時点で、既に常識外れのチャンレンジ)
  • つまみなども白で統一して欲しいという顧客の声を吸い上げ、「安全性の観点から、つまみの色は変えるべき」という開発部門の意見を覆して、量産品の販売に漕ぎつけた
  • 需要が高まる3月末~4月初に発売が間に合わわないという危機を、ティザーサイト、内容を伏せた特典での期待感醸成などのキャンペーン施策で乗り切った
  • 認知は、SmartNewsやGunosy、Facebookなどへの広告投下で獲得
  • 発売直前に「グリルで使えるトースタープレート」が特典であると発表し、グリル需要が少ない一人暮らしでも活用できるとアピール
  • さらに、発売後に購入していない事前登録者に「特典期間延長」でダメ押し

という一連の活動を挙げています。

キッチンは「色」が氾濫してるよね

今回の「コンロが白い」というのは、なかなかにエポックメイキングな出来事だと思います。大体の場合、黒かグレー。「おしゃれ感押し」を狙う海外メーカーを中心にメタルカラーがある、と言う感じでした。しかし、キッチン本体を含むキッチン周りが、非常にポップな空間になりつつある昨今、コンロが黒・グレー・メタルしか選べない、というのは確かに違和感がありますよね。

そもそも、最近の「白物家電」って白くないよね

しかし、「白」というのは、世の中の流れには逆行しています。というのも、キッチン周りに多く置かれる「白物家電」は、長い年月をかけて、どんどん「色がついてきた」のです。

Googleの画像検索で見てみましょう。まずは、「冷蔵庫 カラーバリエーション」での表示結果です。

rinnai_howaro_001

鮮やかですね。続いては「電子レンジ カラーバリエーション」。

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冷蔵庫ほどではありませんが、色付きが増えてきましたね。(一部、カラフルな電子レンジ用容器・調理器具が混じってますが)

炊飯器も、冷蔵庫ほどではないですが、少しずつカラフルになってきています。「炊飯器 カラーバリエーション」の結果がコチラ。

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この流れを助長しているのが、「フライパン」や「鍋」でしょうね。

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フライパンは、T-falさんが強い感じですね。

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そして、カラフルな鍋と言えば、ルクルーゼが有名ですよね。(あとは、ストウブも)

こうしてみると、「コンロが白い」というのは、非常に新しいなとは思うものの、ちょっと意外な選択ではあります。え、カラフルじゃなくていいのか?と。

色の洪水は、制御不能

白物家電が白くなくなってきたのは、キッチンとしての統一感をどのように作り上げるか、という命題に応えるためだったと思います。いくら「自分らしいキッチン」と言ったところで形のバリエーションはある程度制限されます(自動車は基本的に4輪で、前方に運転席がありますよね)。しかし、色は「使い勝手」「機能性」などに殆ど影響を与えない要素ですから、手軽に「自分らしさ」を表現できるわけですね。

その際に、選べるのは「黒のみ」という、T型フォードみたいなことを言っているわけにもいきませんから、どんどんカラーバリエーションは増えていきました。おそらく、最初はキッチン用品(スポンジやまな板など)がシリコン製などで多色展開されていったのだと思います。続いて、なべやフライパンがカラフルになりました。その後、キッチン家電がカラフルになり、最終的に、キッチンそのものもカラフルになりました。最後の砦が、「ガスコンロ」だったと言えますね。

しかし、その結果、多くの家庭のキッチンは、色の洪水でえらいことになってます。薄緑のキッチンの隣に黄色い冷蔵庫が置かれ、その上にオレンジの電子レンジが乗っています。赤いルクルーゼに、濃紺のティファールのフライパン。シンクに置かれたスポンジは、ピンク色で、洗剤はオレンジ色。まな板は赤青黄緑の4色セット。どえらいことですよ、ほんとに。

「統一感」って、格好良い

結局のところ、大事なのは「選べる色の種類が多い」ということではなく、キッチンとしての統一感をどのように実現するか、ということだったのでしょうね。

一方、黒物家電は、いまだに黒が主流です。テレビもDVDデッキも(もちろん、多少のカラバリはありますが)黒いものを買うことで統一感がでる、ということなのかなと思います。テレビ周り(というか、リビングルーム)は黒で統一、ということですね。

つまり、キッチンの天板が白いから、コンロが白いんじゃなかろうか

そう考えると、さきほどの「コンロが白」の理由は、統一感醸成にあるのではないか、という仮説が出てきます。

「キッチン カラーバリエーション」でGoogle画像検索をした結果を見てみましょう。

rinnai_howaro_006

キッチンそのものはカラフルになってきていますが、天板は「黒か白」です。また、「パステルカラーの場合は、天板は白」ということも言えそうです。(※画像が小さいので、検索結果へのリンクを貼っておきます。)つまり、キッチンの天板が白いから、コンロは白、ということなのかなと。ちょっと、納得。

自社ECという「販売チャネル」の強みを最大限に活かす

さて、余談が続きましたが、この記事のポイントは「どんな理由があったとしても、誰でも”真っ白なコンロの発売”に踏み切れるわけじゃない!」というところです。自社流通チャネルを構築しているからこそ、できたわけです。(そもそも、この記事は日経デジタルマーケティングの「オウンドメディア編」という分類に入れられていますが、どちらかというと「自社流通チャネル」という色の方が濃いと思います。メディアの4類型に嵌めると無理が出る記事ですよね。)

以前、「リンナイの顧客生涯価値の向上」という販促会議の記事について考察した通り、自社チャネルを構築したい、自社で顧客ベースを抱えたい、という想いは、メーカー各社の悲願です。しかし、B2B2Cという流通形態が一般的なため「間に入る”B(卸や、施工業者など)”にソッポを向かれたらヤバい」ということで、B2Cに舵を切ることが困難です。

そのため、リンナイのB2C直販サイト「R.STYLE(リンナイスタイル)」は、部品や関連商品(消耗品等)の販売に限定されていました。

今回の「白いコンロ=HOWARO」が直販限定ということは、R.STYLEで販売されているのか。そりゃぁ思い切ったな・・・と思ったのですが、サイトを確認すると「R.Style → HOWARO」の導線はありません。

あくまでも「HOWARO」が例外

普通に考えれば、R.Styleの顧客のコンロ買い替え需要も拾うべきでしょう。しかし、その導線は用意されておらず、あくまでも「リンナイ企業サイト→商品紹介サイト→テーブルコンロカテゴリ→HOWARO→購入ページ」という導線になっています。

購入ページから「カートに商品を入れる」へ進むと、R.STYLE(リンナイスタイル)ドメインになっており、右上に「この商品は、R.STYLEからお届けいたします」という画像が表示されます。(サイトのロゴはHOWAROロゴのままです。)

買い物かごページの左上に表示されるロゴ:

HOWARO(ホワロ)

買い物かごページの右上に表示されるロゴ:

この商品は、R.STYLE(リンナイスタイル)からお届けいたします。

出所:リンナイ HOWARO 購入ページ

ということで、R.STYLEは、あくまでも「交換部品・消耗品・関連商品の販売サイト」であり、HOWAROが例外、という建て付けは堅持しています。(在庫管理、決済、物流等のオペレーションを考えれば、R.STYLEの仕組みを使うことが合理的なのは言うまでもありません。)

”常識外れ”だから直販のみ、という最高の言い訳

要するに、「別にB2Cに打って出ようとしているわけじゃないよ」というメッセージが読み取れるんですよね。今回とりあげている、デジタルマーケティングの記事内にも、こんな記述があります。

リンナイが初めて白いコンロHOWAROを投入したのは、2011年のこと。”常識外れ”の製品のため、一般流通ではなく、あえて自社ECだけで販売した。

うがった見方で翻訳すると、「従来商品と同じように”売れる”という確信があれば、流通の皆様のお力を借りて、バンバン流通させたかったんです。でも、これって、ニッチなニーズを拾いに行ったん商品なので、当たるかどうかも全然わからなかったんですよ。そこで、流通の皆さんにリスクを背負って在庫を保持していただくようなことは避けて、弊社が自社リスクで細々とやらせていただいております。」って感じなのかなぁと思ってしまいますね。

また、こういう商材は本来的には「取り付け=施工」などが必要なわけですが、この商品は、R.STYLE販売商品なので「配送のみ」です。取り付けは、自分で行うことになります。と言っても、大したことはないんですよ。コチラのリンクにあるように、至ってシンプルです。これを見ると、HOWAROに限らず、テーブルコンロは全て自前で取り付けが可能なように思えます。(ビルトインは無理でしょうけれど。)

そうなると、テーブルコンロの直販に踏み切っても、インターネットでモノを買うようなエンドユーザーはあまり困らない、ということが予想されますね。これは「直販化の流れを後押しする傾向」と言えます。しかしながら、インターネットで買わない人たちには、従来通りB2B2Cでアプローチをしないといけません。また、インターネット経由で買うにしても、取り付けはしてほしい、という人もいるでしょう。ここで「B2B2C(従来型)とB2C(直販型)の並行運用」が重要になってきます。

先ほども触れた「リンナイの顧客生涯価値の向上」を取り上げた際、僕は以下のように結びました。

リンナイは、B2B2CビジネスとB2Cビジネスの役割分担・融合に取り組んでいるものと思われます。この問題は、非常に難しく、またセンシティブなものですので、エルメスなどのファッション系の高級ブランド、Appleやフェラーリのような一部の成功例はあるものの、多くのメーカー企業が頭を悩ませているはずです。

例えば、家電メーカーやPCメーカーも、直販サイトで売るのか、家電量販店で売るのか、Amazonで売るのか、また、その際の価格をどう設定すればいいのかに思い悩み、「独自モデル」「チャネル限定モデル」をつくることで価格の横比較ができないようにするなどの工夫を凝らしているものの、昨今の消費者の目は厳しく一筋縄ではいきません。

既存の流通網とのコンフリクトを最小限に抑えつつ、B2Cチャネルでの”消耗品販売”を切り口にして「顧客接点」を構築していくリンナイの取組みは、今後どのように実を結ぶのでしょうか。

リンナイとしても、決して「単純に中抜きをしたい」と考えているわけではないはずです。流通網との良好なパートナーシップを維持しつつ、直販で良いものは直販に切り替えて「顧客接点」を直接自社で持ちたい、ということなのだと思うんですね。今回の取り組みは、既存流通網とのコンフリクトを避けつつ完成品を直販する際に、「特異な商品」「一般的でない商品」「数がそれほど見込めない商品(裏を返せば”限定商品”)」という切り口であれば、道を拓けそうだ、とリンナイがアタリをつけていると読み解くことができます。

これによって、「流通経由で売るもの(手厚いサポートが必要な顧客)」「直接販売するもの(顧客接点を保持しておきたい顧客)」の間の線引きの、一つの基準が提示されたのかもしれません。

リフォーム領域は、昨今、多くの事業者が仲介モデルで参入し、それぞれがプラットフォーム化を進めています。その流れが加速すると、これまで「流通」が保持していた顧客情報が、今度は「プラットフォーム」が保持することになってしまいます。流通はエリアごとに分かれるのが一般的ですが、プラットフォームは全国を網羅してしまう巨大事業者になる可能性が高いわけです。もし、このリフォーム・プラットフォームが完全に形成されてしまうと、メーカーとエンドユーザーとの直接的な接点は、現状よりも一層作りにくくなることでしょう。

そうなってしまう前に、各メーカーが、どれくらいエンドユーザーとの接点を形成できるかというところが、これから数年間の動きを読み解く際の鍵になるかもしれませんね。

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