ハイコンテクストな会話に相手を適応させるためには”前提”を揃えろ!:説明下手を克服しよう

AUTHOR :  田中 耕比古

”中の人”にとって楽ちんな空気は、”外の人”には拷問かも

本日は「ハイコンテクストな会話」というものについて考えていきます。

ハイコンクストとは?

そもそも、ハイコンテクストとはなんでしょうか。英語で表記するとhigh-contextとなります。wikipediaでは「高文脈」という訳語が使われています。引用します。

高文脈文化のコミュニケーションとは、実際に言葉として表現された内容よりも言葉にされていないのに相手に理解される(理解したと思われる)内容のほうが豊かな伝達方式であり、その最極端な言語として日本語を挙げている。

一方の低文脈文化のコミュニケーションでは、言葉に表現された内容のみが情報としての意味を持ち、言葉にしていない内容は伝わらないとされる。最極端な言語としてはドイツ語を挙げている。

高文脈文化はより抽象的な表現での会話が可能であるが受け手の誤解などによる情報伝達の齟齬も生じうる。他方、低文脈文化では具象的な表現を行い、会話の文中に全ての情報が入っているため、行間を読む必要もなく、受け手は理解できる。

出所:wikipedia/高・低文脈文化

一言で言うと、ハイコンテクストなコミュニケーションは「言外の意味」を多く含んでいるということです。そこに書かれていない、表現されていない情報がたくさんある前提でコミュニケーションが行われるわけですね。

 空気が読めないのは「前提」が共有されていないから

いわゆる若手社員や、大学生達が、先輩や上司に無邪気な質問をするときに、「あ、こいつ、空気読めねぇな」と感じるときがあります。もちろん、彼らに悪気があるわけでも無くて、単純に「コンテクストの理解が無い」ということが、この違和感の正体なんだなと最近気づきました。つまり、そこにある共通の認識や前提知識が、そもそも共有されていないんですよね。だから「コンテクスト(文脈)」を読み取ることができないんです。っていうか、できるハズが無いんです。

こう考えると、空気が読めないのは、彼ら自身にも改善余地があるとは思うものの、周辺にいるオトナたちの責任も軽くはないよな、と思えてきます。

Case1.偉い人にタメグチで話してしまう

例えば、空気を読めない若者が、偉い人にタメグチで話しかけてしまった、というケースを考えてみましょう。

そもそも、偉いか偉くないかに関わらず、それなりに年齢が上の人には、敬語で話しかけるべきだろうって話があります。あるいは、年齢とかなんとか言う前に、初対面でタメグチってどうなんだよ、って話でもあります。丁寧語から入るよね、普通。まぁ、こういうところは、いわゆる社会人常識というものなので、これができてないのは、この若者の問題です。情状酌量の余地なし。

しかし、その一方で、「あの人は偉い人だよ」という情報を伝えきれていないのは周囲の問題だとも言えます。ベンチャー界隈とかだと、超若くてチャラチャラして見える人の方が、スーツ着てマチュアな感じの外見の方よりも役職的には上だったりするんで、ホントによくわかんないんですよね。名札を用意しておくなりなんなりして、偉い人だ識別できるようにしておけば、さすがに若者もタメグチで話しかけるという暴挙には出ないでしょう。(偉い人には敬語を使うべし、という大前提が無い奴はさすがにいないだろうと思うので、特に触れません。)

Case2.飲みの席でタブーに触れる

あるいは、空気を読めない若者が、触れちゃいけない話題に果敢に飛び込んだ、というケースはどうでしょう。一般的に、野球・政治・宗教は、3大触れちゃいけない話題と言われていますね。その次、と考えると、離婚等の家庭環境の話とか病気関連の話だろうと思います。

そんな状況で、若者が、初対面の人に「バツイチっぽい顔してますよねっ!」とかって朗らかに話しかけちゃったりすると、目も当てられませんが、これはソイツの常識のなさの問題なので、本人に頑張って改善してもらうしかありません。

しかし、リアルにその人がバツイチで、しかも、バツイチであることを非常に気にしているなどの事情がある場合には、その飲み会の前に「ちょっとセンシティブだから、離婚関係のネタは振っちゃだめだよ」と伝えてあげてもいいんじゃないかな、と思います。

 空気に馴染ませるためには、前提を教えることが大切

ハイコンテクストなコミュニケーションをしている際に、既に前提情報(つまり、コンテクスト=文脈)が共有されている人とは、とても気楽に過ごせます。前提が揃っているメンバーで話すと、お互いに不要な説明を省くことができますので非常に居心地が良い空間になります。

しかしながら、その場に入ったばかりの人にとっては、淡水に放り込まれた海水魚みたいな感じです。アジやサバを捕まえて「普通、水っていったら真水でしょ」と言っても、彼らにしてみれば「た、体内の水分が出て、、、く、、、苦し、、、かゆ、、、うま」って感じですよ。

若者にしてみても同じです。彼らはこれまで海水で生きてきたんです。それを突然、真水に放り込んだら死んじゃいます。それを解決するのは「前提情報」をしっかりと与えてあげることです。

会議やプロジェクトだって同じです

これは別に、世間知らずの若者に限った話ではありません。多くの会議やプロジェクトの現場で、似たようなことが起こっています。

プロジェクトに参画した初日、プロジェクトの”空気”がまったくわからないのは仕方ありません。トイレの場所や、コーヒーメーカーの使い方なども知らないんですから。

あるいは、これまでにも何度か行われている会議に、初めて出席した人は、その会議の”空気”を読めるはずがありません。どういう流れで会議が進み、どのタイミングで発言や質問をするべきかを知らないのです。

プロジェクトを円滑に進めるために、もしくは、会議の成果を最大限まで引き出していくためには「前提知識を揃える」ことが必須です。

もちろん、何かを説明するときも同じ!

そして、当然ながら、これは「説明をするとき」でも全く同じです。プレゼンテーションであれば、最初に「こういう前提がありますよ」ということを伝えないといけません。なぜならば、聴衆の前提への理解度はバラバラに決まっているからです。少人数での打ち合わせの場で説明をする際には、「どこまで前提が揃っているか」の確認から始めましょう。少人数であれば、双方向のコミュニケーションが可能ですので、プレゼンテーションのように一方的に前提を揃えに行くよりも、相手の要望に応じて、こちらから出していく前提情報をアジャストすることが重要です。

いずれにしても、常に「前提が揃っているか」あるいは「揃えるためにはどうしたらよいか」を意識することが出来れば、説明上手へとまた一方近づけることと思います。是非、お試しください。

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