数学ガールの秘密ノート:式とグラフ |文系が「数学の扉」を開けるための一冊【ギックスの文系本棚】

AUTHOR :  田中 耕比古

文系だって頑張れる・・・はずなんだっ!

本日は、数学ガールの秘密ノートシリーズの1冊目、「数学ガールの秘密ノート 式とグラフ」をご紹介します。

数学ガールの秘密ノート/式とグラフ
数学ガールの秘密ノート 式とグラフ

数学ガールの秘密ノート とは

結城 浩さんの著書「数学ガール」という書籍はご存知でしょうか? 数学を、高校生と中学生の女子生徒たちが数学に理解を深めていくストーリーを読むことで、読者も数学に関して理解が深まっていく、という小説仕立ての学習本です。大変好評なようで、シリーズ化も進んでいます。

非常にわかりやすくて良い本なのですが、内容的には、高等学校レベルの内容になっているため、中学校レベルから既に躓いた感のある方には、ハードルが高い可能性があります。

そこで、本日ご紹介する「数学ガールの秘密ノート」シリーズが書かれました。このシリーズの1冊目である本書は「式とグラフ」ということで、2次方程式(ax2x+=0)や、連立法方程式( x+y=5, 2x+4y=16 )、恒等式( (a+b)(a-b)=a2-b2 )などの「式」および、それに関連した「グラフ」について解説してくれます。めっちゃ初歩的!!!でも、とても本質的!!!

本質を、シンプルに解説

本書の特徴として、本質をシンプル且つ興味深い形で紹介していることが挙げられます。

(a+b)(a-b)=a2-b2 とは「とある長方形の面積=別の正方形の面積」

本書の最初に、恒等式「(a+b)(a-b)=a2-b2」が解説されます。

この恒等式に、aに100、bに2を代入した例で、102×98=10000-4 となることを示し、左辺は暗算しにくいが、右辺は容易に暗算可能であると述べ、数字の面白さについて読者の興味を引きます。

そのうえで、(a+b)(a-b) は、長辺がa+b、短辺がa-bの長方形の面積を示しており、a2-bは、一辺がaの正方形の面積から一辺がbの正方形の面積を引いたものである、と解説されます。

この「図形で考える」ということは、発想力としても非常に重要です。

答案は採点者へのメッセージ

連立方程式の解法を解説する際には、解法そのものではなく「解答の書き方」に関する説明をされます。

問題を解いて解答を書くときには、読む人に対して

  • 私は、こんなふうに考えました。
  • だから、こんなふうに解いていきます。
  • ほら、ちゃんと解けたでしょう。

みたいにアピールするんだよ。

これは、とても大切なことです。戦略コンサルタントとして働くに際して(というか、どんな仕事でも)、しっかりと思考回路・思考手順を説明することが重要です。相手の理解力に依存しないように説明する必要があるんですね。これまた、本質的です。

さらには、目的に合わせた、説明の適切な端折り方、についても解説があります。これ、本当に大事なんですよね。でも、意外と難しいんですよ。

 数学を使って問題を解く、とは

連立方程式の解法から、ツルカメ残の話に展開され、そこで出てくるのは「数学を使って問題を解くこと」の意味と意義です。

数学を使って問題を解く とは

  1. <<現実の世界>>から<<数学の世界>>に問題を移す。
  2. <<数学の世界>>で問題を解き、解答を得る。
  3. <<数学の世界>>から<<現実の世界>>に解答を移す。

これも、なかなか本質的です。上記引用文の「現実」を「具体」に、「数学」を「概念」と置き換えると、僕が常々思っている「概念化」の話になります。(関連記事: 抽象化と概念化を間違えない )

物事を理解するということは、具体と概念を行き来することです。この考え方そのものが、数学によって物事を理解する、ということと非常に共通しているということなんですよね。いやー。おもしろい。まぢ、おもしろい。

p.77にでてくる「具体例で獲得した高い視座」という表現も、なかなか秀逸です。

 

この後も、本書では、べき乗(2乗とか3乗とか)や、多項式の次数はグラフの形に現れるという話、グラフの読み取り方、正比例と反比例、などが平易に、シンプルに、わかりやすく、イメージしやすく、そして多面的に説明されていきます。

小学校高学年くらいで、この本(というか、このシリーズ)が出版されていれば、僕は文転しなかったかもしれないなと思いますね。本当に良書です。

(余談)現代って、文系が、生きにくい世界だよね

僕は、高校では「理数コース」というところに所属していましたが、大学は「私立文系」に入学した、いわゆる「文系」ってやつです。大学入試は、センター試験は「国英社」のみ受験。個別大学の入試も「国語+英語」とか「英語+小論文」とか、まさにド文系でした。

もともと、中学校くらいまでは算数・数学が好きでしたし得意科目だったので、数学的素養が皆無かというと、きっとそんなこともないとは思うのですが、完全にドロップアウトしちゃった感がありますし、もはや、なんとな~くの苦手意識さえあります。

大学を卒業し、システムエンジニア(SE)になった僕は、その後、戦略コンサルタントを経て、現在は、分析(アナリティクス)を売り物として掲げる会社の役員をやっています。このキャリアの中で「文系であること」は、あまりポジティブな結果にはつながっていません。ぶっちゃけ、相当苦労しました。

特に、弊社では、顧客の課題を解決するために統計解析の手法を用いたり、機械学習やディープラーニング(昨今では、AIという言葉で括られている領域ですね。やや、定義的には気持ち悪いんですけど)の研究開発に多くのリソースを割いたりという、理数系領域のケイパビリティが求められる環境です。

弊社の社員の中にも勿論「文系出身者」がいます。彼らも、僕と同様に苦しんでいるのではないかと思うと、なかなか心苦しいものがあります。ということで、僕も、彼らと共にイチから勉強することで、「文系だって戦える」ということを証明したいなと思っているんですよね。

よってもってしまして、1.僕が買う ⇒ 2.書評を書く ⇒ 3.会社の蔵書とする ⇒ 4.文系社員がそれを読んで学ぶ という流れを確立していきたいと思います。次回は、「数学ガールの秘密ノート:整数で遊ぼう」をご紹介しようと思っています。

当ブログをお読みいただいている文系出身者の皆さんも、風当たりのキツい現代を数学的素養を磨くことで、ともに乗り越えていきましょう!!!

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