数学ガールの秘密ノート:整数で遊ぼう|文系でも「数字の不思議」に気づける一冊【ギックスの文系本棚】

AUTHOR :  田中 耕比古

この一冊で、数字に興味を持てれば儲けもの

前回、ご紹介した「数学ガールの秘密ノート/式とグラフ」に続いて、数学ガールの秘密ノートシリーズ第2弾「整数で遊ぼう」をご紹介します。

数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう
数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう

知的好奇心をくすぐる入門書

本書では、数学を構成する「数字」について解説してくれます。(※「数学ガール」「数学ガールの秘密ノート」って何?という方はコチラをご一読ください。) 正確にいうと、数字の中でも「整数」を主体に取り上げます。まぁ、タイトルも「整数で遊ぼう」ですからね。

例示は理解の試金石

前作でも、「答案は採点者へのメッセージ」「具体例で獲得した高い視座」「まだ<<わかった感じ>>がしてない」など、名言が飛び交いまくっていましたが、今作でも名言が飛び出します。

その中で、僕が一番感銘を受けたのは「例示は理解の試金石」という言葉です。数式を与えられた際に、いろんな数字を実際に代入したりすることで「具体的な例を作る」ということを行っていくことで、理解を深めよう、というお話です。

確かに、数列を理解するには、とりあえず、これをやってみるのが手っ取り早いと思います。やっぱ、よくできた本だなぁ・・・。

エラトステネスのふるい

本書では、結構な量のページを「素数」の話に割かれます。(その流れの中で「素因数分解」のお話も出てきます。)

大学受験から文転した僕は、寡聞にして存じ上げなかったのですが、素数をみつけるための「ふるい」という考え方です。要は、「素数を見つけ、その倍数を消していけば、残ったものが素数だ!」ってことなんですが、これを「いい感じの表にする」というのが、なかなか興味深いところです。

こういうのは、中学校の序盤くらいで知っておきたかった・・・感。

ウラムの螺旋

さらに、数字の並べ方を「反時計回りのらせん状」にしていくと、出現する素数が「なんか、ちょっと、法則がありそうな気がするんだけど・・・」というパターン(模様)が表れてきます。

それが、ウラムの螺旋、です。

どんなものかは、Google画像検索でチェックしていただきたいんですが、頑張って言葉で伝えるならばゼビウスな感じです。ええ。なんとなく。

 

その他、二進数はON/OFFのスイッチ的に使えるということを「数当てマジック」の例から解説したり、数学的帰納法について具体的な数列の問題(センター試験より)を用いて説明してくれたりします。センター試験の問題については、慣れないと「ん?」となる部分があるかもしれませんが、自分で紙に書いて解答しつつ進めると理解が深まるように思います。

前作ほど「分析業務」に直結しない

本作は、前作「式とグラフ」と比べると、分析の実務につながる知識が増えるとは言えません。(もちろん、本書のメインターゲットはビジネスマンではないでしょうし、本書の目的も、ビジネスにおける数学の活用ではありません。)どちらかというと、本書は、知的好奇心をくすぐり、数字の面白さを通して、数学への興味を喚起することに適しています。

文系社会人にとっての位置づけは nice-to-have というところでしょう。

但し、本書で語られている「数字のパターン(=数列)」の考え方は、物事をパターンとして捉えるスキルのベースとなります。このあたりは、このシリーズの4作目にあたる「数学ガールの秘密ノート/数列の広場」で深く解説されるのではないかと思います。楽しみですね。

そんな4作目への期待を胸に秘めつつ、次回は、第3作「数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数」を紹介します。焦らず行きましょう。道のりは長いですからね。

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