「ジョブ・カード制度」の見直し検討(NHKニュース)/ニュースななめ斬りbyギックス

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誰にどうして欲しいのか?の視点で組み直すべき

本日は、NHKニュース”「ジョブ・カード制度」の見直し検討”について取り上げます。

ニュース概要(NHKニュースサイトより)

「ジョブ・カード制度」の見直し検討

第三者が評価した仕事や職業訓練の経歴書を作り、就職などに役立ててもらう「ジョブ・カード制度」について、厚生労働省は、活用が進んでいないことから、制度の見直しに向けた検討を始めました。

ジョブ・カード制度は、非正規雇用からのキャリアアップを目指す人などを対象に、キャリアコンサルタントが客観的に評価した仕事や職業訓練の経歴書を作り、就職や転職の際に応募書類として役立ててもらうもので、6年前から始まりました。
厚生労働省によりますと、平成24年度末時点の利用者は87万人余りで目標の100万人に届かず、また、多くの企業がジョブ・カードを応募書類として認めていないため活用が進んでいないということです。
このため、厚生労働省では、労働問題の専門家や企業の人事担当者などで作る会議を今月発足させ、制度の見直しに向けた検討を始めました。
これまでに、ジョブ・カードは取得の手続きに時間や手間がかかるほか、企業にとっても内容が複雑すぎて応募書類として使えないといった課題が指摘されていて、ことし7月をめどに制度の見直しに向けた方向性を盛り込んだ中間報告を取りまとめることにしています。

出所:NHKニュース(2014/5/25 5:37)

ジョブ・カードとは

ジョブ・カードは、正社員経験の少ない人が「キャリア・コンサルティング」と職業訓練を組み合わせて支援することで、正社員として採用されるようにしていこう、という取り組みです。

ジョブ・カード制度の詳細

正社員経験が少ない方などが正社員となることを目指して、ジョブ・カードによるきめ細かなキャリア・コンサルティングを通じ、企業実習と座学を組み合わせた実践的な職業訓練(職業能力形成プログラム) を受講します。

訓練修了後、訓練実施企業から評価結果である評価シート の交付を受け、ジョブ・カードに取りまとめて就職活動やキャリア形成に活用する制度です。

なにが課題なのか

ニュース記事を見る限り、「利用者が少ない」ことが課題のようです。そして、その理由として、「多くの企業が応募書類として認めていない」ことがあげられています。さらに、

  • 利用者にとって:取得の手続きに時間や手間がかかる
  • 企業にとって:内容が複雑すぎて応募書類として使えない

とのことです。なんだか、ちょっとくらい見直したからといって、どうにかなるのか不安な感じがしてしまいます。

また、上記の内、取得に時間がかかる、というのは「キャリアカウンセリングが必要」などのステップの話だろうと推察します(様式はエクセルもしくはPDFでいつでもダウンロードできますから)。その「キャリアカウンセリング」こそが「ジョブ・カードの強み」であるなら、簡素化できるようにも思えません。

しかし、それよりも問題なのは「企業が複雑すぎて使えない」というところです。

もはや、この手の取組みではおなじみとなりつつある”進●ゼミ的なサクセスストーリー漫画でご紹介”では、自分の頭が整理されて凄い役立つ!という事になっていますが、やはり、本気で普及させたいのならば、企業側が「これを応募書類として認める」あるいは「これを必須とする」というようなことにならないと難しいだろうな、と思いますね。

どれだけ複雑なのか?

では、どれだけ複雑なのでしょうか。実際のPDFはコチラです。ご興味のある方は現物をご確認ください。

様式1:履歴シート(2ページ分)=履歴書

記載する項目は、氏名、生年月日、住所、職務経歴、学歴、資格・免許、自己PR、志望動機、労働条件に関する希望、配偶者有無 などです。

これと言って特殊な項目は無く、普通の履歴書だと言ってよいでしょう。

様式2:職務経歴シート(1ページ)=職務経歴書

こちらも、いわゆる職務経歴書です。いつからいつまで、どの会社で、どんな仕事をして、何を得たのか。

様式3:キャリアシート(1ページ)=目標・希望???

これは、少し毛色が違います。

  • 就業に関する目標・希望(職務経歴、教育訓練経歴、取得資格等からみた強み、これまでの求職活動や能力評価を踏まえた今後の課題、能力開発の目標について記述)
  • 希望する職種
  • その理由

となっています。

様式4:※教育訓練をうけた場合:評価シート

この様式は、別のPDFで提供されます。こんな感じです。

これは、少々ややこしい感じを受けますが、「他の企業(訓練実施企業)がその人をどう評価したか」が書いてある、というものです。

 

加えて・・・

応募書類としてジョブ・カードが提出された際には

○ ジョブ・カード様式2~4は応募者本人が生涯にわたって使用、管理するものです。したがって、通常はその写しが添付されます。ジョブ・カード様式2~4の原本が提出された場合は、応募者本人に返却していただきますようお願いします。
○ ジョブ・カード様式3、4は、キャリア・コンサルティングの経過等が記述されたものになりますので、ご本人の判断で応募書類として添付されない場合があります。
○ 特に、様式4の評価結果については、その後のご本人の努力や経験の積み重ねによって職業能力は向上しうるものであることをご理解の上、ご覧ください。

出所:応募書類としてジョブ・カードを活用してみませんか

という説明文があります。要するに「3と4は添付されないことがある」わけですね。ってことは、1の履歴書と、2の職務経歴書しか提出されないわけですから「複雑すぎる」というのは、どうやら内容の事ではなさそうです。

複雑なのは「プロセス」なのではないか

内容はそれほど複雑ではない一方、先ほどの引用にある「ジョブ・カード様式2~4は応募者本人が生涯にわたって使用、管理するものです。したがって、通常はその写しが添付されます。ジョブ・カード様式2~4の原本が提出された場合は、応募者本人に返却していただきますようお願いします。」とか「特に、様式4の評価結果については、その後のご本人の努力や経験の積み重ねによって職業能力は向上しうるものであることをご理解の上、ご覧ください。」とかいうのは、なかなかハードルが高いように感じます。

応募書類がコピーなのか原本なのか、どうやって見極めろというのか。(郵送だったりすると、返却と言われても困ります。)この辺りは、求職者に徹底させるべき事であって、企業に協力をお願いするというのは筋違いなように思います。

また、職業能力が向上しうるものだから、イマイチなことが書いてあっても大目に見てね、というのも、なかなか難しいですよね。そんなに客観的な目で物事を眺められる人が、どれほど世の中にいるというのか。

つまり、結局のところ「複雑なのはプロセス」なわけですね。

さらに事態を混乱させる「使い方の提案」

そして、さらに担当者を混乱の渦に叩き込むのは「同じ書式で、社内の従業員のキャリアカウンセリングをしたらどうか?」という提案です。

論理的に考えれば、ある会社の採用に応募するためであろうと、自社でキャリアを形成していくのであろうと、自分の能力を見極めること及び、どういうスキルを今後身につけていきたいかを考えるのは「同じ作業」になります。

しかし、「応募書類として使うもの」が「社内の人材育成にも使えます」と言われて、はいはいそうですね、となるかどうかは甚だ疑問です。

大半の方にとって、「なんかややこしそうだから、別にいいや。今のままで困ってないし。」で終わる気がします。

「賢い人の想像」でつくられても使われない

これらの書式は、非常に良くできています。また、プロセスも、その思想も、僕には非常にしっくりきます。

しかし、残念ながら、対象者には唐突感があるのではないかと思うのです。

この考え方は、大企業では当たり前の話ですし、既に行われていることばかりでしょう。ですが、そういう前提が無い中小企業では、「何を言ってるのか分からない」「そもそもやる必要があるのか」「やる必要があるとしても、どうしたらいいの」ということになると思います。

そういう「変わる必要性を感じていない」人たちに変化を促すのは、非常に困難です。本当に厚生労働省が「ジョブ・カード」を普及させたいと願っているのであれば、プロセスの簡素化も勿論必要でしょうが、

  • ホームページの分かりにくさをなんとかする:現状では「知りたい人」でも諦めてしまいそう
  • 必要性、意義をシンプルに伝える:正しいことは書いてあるが、きっと誰も読まない
  • 目的を絞る:今のままだと、いろいろできるが、どの目的にも使われない、という結果になりそう

というような改善が求められると僕は思います。

間違っても「補助金を出す」とかいうおかしな方向に行かないことを祈るばかりです。

尚、思想自体は非常にすばらしいと思いますので、続報がでましたら、再度考察したいと思います。

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