ギックスの本棚/【番外編】タクシードライバー前原健一(kmタクシー広告冊子)

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さらっと配られてるけど、なかなか濃密な24ページ

http://www.km-recruit.jp/special/

年の瀬ですね・・・

というわけで、年末年始の息抜きに、ギックスの本棚の「番外編」をおひとつ如何でしょうか。忘年会→おせち料理のフルコンボで胃もたれしてるところの整腸剤的な意味合いでよろしくお願いします。

さて、今回とりあげるのは「タクシードライバー 前原健一」です。これは、市販されている本ではありません。kmタクシー車内に設置されていた「kmタクシーの求人用マンガ冊子」です。僕がこの冊子を初めて手に取ったときには、さらっと眺めて、すぐにラックに戻しました。が、しかし、その数分後に、どうしても気になって再度手に取り、熟読し、鞄にしまって持ち帰った名作ですので、今日は皆さんにこの場を借りてご紹介させて頂こうと思います。

ちなみに、kmタクシーの採用ページで読むことができるようです。お時間のある方は是非。

あらすじ

大手建設会社をリストラされた元営業部長の前原健一(46歳)は、プライドが高い男。転職活動がうまくいかず「誰でもできる」とバカにしていたタクシードライバーになるが、もう全然うまくいかなくてやってられねーよとなるものの、進研●ミなどでありがちな小さな成功体験をもとにタクシードライバーとして大成していくサクセスストーリー。

A. 採用マテリアルとしてのポイント

当然ながら、本冊子は【採用マテリアル】ですので、しっかりと労働環境に関する情報を伝えてきます。

A-1.タクシードライバーという職業の「イメージの悪さ」を良く理解している

イメージの良くない職業ですね、というところからスタートすることで、読者のハートをガッチリ鷲掴みます。相当しっかりめに、自社の職業をdisってます。

タクシードライバーだと!?ばかにするのも大概にしろ!

前原健一(46)@転職活動中

タクシーなんてそんな誰にでもできるような・・・

前原健一(46)@転職活動中

きっちり、同僚もdisります。

研修に来たが・・・

元飲食店店員 元居酒屋スタッフ 元SE なんだこの冴えない職場は・・・

部長職までやったこの俺がドライバーなんて・・・

前原健一(46)@新人研修中

もちろん、上司もdisります。

若っ・・・!!

しかもまだ新卒2年目!? なんでこんな若者がタクシー業界に!?

そんな彼が班長なんて・・・ どうせ人が足りなくて若い彼に任せたんだろう・・・

前原健一(46)@新人研修中に 25歳と若い班長を見て

A-2.いえいえ、皆さんが思ってるよりいいんですよ という情報を散りばめる

定番ではありますが、なかなかディテールに書かれます。まずは給与。次にフレキシブルな勤務体系。関心の大きいものからちゃんと伝えます。メッセージ明確。

月給32万円保証!? おいどういう事だ 大分想像と違うぞ!

勤務形態が 日勤 夜勤 隔日勤務から選べるのか え? 隔日勤務だったら月12日しかはたらかないでいいのか!?

それなら昼間に別のことができるな しかも600万円以上稼いでいるドライバーも多いみたいじゃないか

話がうますぎるが こうもしっかり書いてあると嘘とも思えない・・・

前原健一(46)@転職活動中

 

これは非常に重要な情報なので、巻末で、モデルケースもご紹介という念の入れようです。ここ、マーケティングでも重要です。大事なことは何回でも言いましょう。覚えてもらったかな、と思っても、あと2回くらい言いましょう。

  • 日勤の場合 34歳女性。 月収例:346,000円(7時間45分x22回乗務/月)
  • 夜勤の場合 31歳男性。 月収例:698,000円(7時間45分x22回乗務/月) →居酒屋時代の倍近い収入+寮完備 をアピール
  • 隔日勤務の場合 46歳男性。 月収例:705,000円(15時間30分+2.5時間残業+3時間休憩)x11回乗務/月 →収入は前職と同じで休みははるかに増えた

さらに、キャリアパスも紹介。なんと社長も夢じゃない!

ははは 確かに他社では考えにくいだろうな

でもkmはお客様と一番近くで接しているドライバーの声を大事にしたいと思ってるんだよ

自分を含め 事業会社を任されてる9人の社長のうち6人はドライバー出身だからな

松木社長(ドライバーの出身の社長なんて凄い という話題に対して)

 B.広報ツールとしてのポイント

これ、超重要です。設置場所が「タクシー車内」ですので、大半の読者は”客”です(一部”だけ”が、潜在的な採用ターゲット層)。これを忘れてると痛い目に合うので、そこもきっちり抑えてます。さすが。

B-1.自社サービスをしっかりアピール

前原健一氏が、仕事にくさっているときに、成功体験を得ますが、それは「産気づいた妊婦さんを病院に送り届ける10分間」のことです。これを社長がみんなの前で紹介します。

えー 先日お客様からお礼のお電話を頂きました

妊産婦さま対象の会員サービス「マタニティ・マイタクシー」ご利用のお客様です

応対してもらったドライバーの対応が的確で 非常に安心して病院に行けたとのことです

松木社長@朝礼

バッチリ、サービスを紹介。もちろん、この冊子の隣には「マタニティ・マイタクシー」の冊子も準備してございます。てへぺろ。

B-2.お客様は神様です

僕が一番感銘を受けたのはこのポイントです。

冒頭ご紹介した通り、前原健一氏はタクシードライバー=誰にでもできる仕事、自分にその職業を薦めるなんて馬鹿にしてるのか?という感じの男です。この男が「自分が客だったら」きっと横柄だったのではないかと思われます。しかし、そんなエピソードは「客をdisってる」ということになりかねません。ですので、そんな話は一切でてきません。

そして、入社後の初乗務と思しきタイミングでの乗客との会話では・・・

客:駅まで

前原:はい

客:いやー 助かったよ 遅刻しそうでしたからねー!

前原:はぁ

客:もっと愛想がいい返事をした方がいいんじゃないですか?

前原:いえ 業務中ですので

客:お客様の立場になったら明るい方がいいですよ

前原:私の仕事はただ目的地にお送りするだけですから・・・

客:なんでタクシードライバーやってるんですか? そんなので仕事して楽しいですかねぇ

なに!この超いい客!すごぃ感じ良い!僕も相当「感じ良い客」だという自負があるのだけど、こんなに「感じ良い客」って何者なの?仕込みでしょ?仕込みなんでしょ?(しかも、客が「お客様」って言ってるし!(笑))

そして成績が振るわなかった際の、上司との会話では・・・

上司:前原さんは お客様の気持ちを考えたことがありますか?

前原:・・・?(イラッ) お客様を目的にお送りすればいいんだろ?(イライラ)

こんだけイライラしても、絶対に「客を送ればいいんだろっ!」とか言わない。社員教育の徹底っぷり。すごい!すごいぞkmタクシー!

後半では、元居酒屋勤務の男性が、こう言います。

夜は酔っぱらったお客様もいるけど 居酒屋の時に比べれば対応はそんなに大変じゃないですね

というわけで、一切「お客様」をdisりません。迷惑なお客様もいるのは容易に想像できる”ファクト”ですが、そんなエピソードは全くでてきません。君子、危うきに近寄らず。賢明です。

 まとめ

というわけで、たった24ページとは思えない、非常に濃密な冊子となっております。

世の中、格好良いマーケティングも流行ってますし、色んな技術によってPDCAも回しやすくなっています。FacebookなどのSNS活用により、顧客との関係性を構築することもできる時代です。しかし、こういう「基本に忠実」なマーケティングの重要性を強く感じさせる”素晴らしい出来栄え”ですね。

僕自身も、2014年は、基本に忠実に頑張っていきたいと思います!1年後の2014年末を、こんな感じで迎えられますように!!!

(※画像をクリックするとkmさんのページへ飛びます※)

 

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