ギックスの本棚/WHY DESIGN NOW? なぜデザインが必要なのか ~世界を変えるイノベーションの最前線~(栄治出版)

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秀逸なデザインの「本質」を考えることが大切。

本日は、「WHY DESIGN NOW? なぜデザインが必要なのか」をご紹介します。

優れたデザインの実例集

本書は、「なぜデザインが必要か」という問いに応えた「実例」が集められています。また、それらの実例は「エネルギー」「移動性」「コミュニティ」「素材」「豊かさ」「健康」「コミュニケーション」「シンプリシティ」の8つのカテゴリに分けて紹介されます。

全部で203もの「実例」が紹介されますので、読み応えもバッチリです。

本書で紹介されるデザインの実例は、2010年にニューヨークで開催されたデザイン展”Why Design Now!”で展示されたモノたちです。すでに5年の歳月が過ぎてはいますが、まったく古びているとは感じませんし、なんなら、まだ実現されておらず、早く実現してほしいなと思うものが沢山あります。

デザインは「不可欠な要素」

デザインという言葉は、ビジネス・デザインなどの意味でも用いられます。(関連記事:ギックスの本棚/CEOからDEOへ

ただ、いずれにしても「課題を解決する」という目的において、ソリューションを実現するための「必要不可欠な要素」として、デザインが存在しているのは間違いありません。昨今「デザイン・シンキング」であるとか、「デザイン・ドリブン・イノベーション」であるとかいった言葉も盛んに使われていますので、このあたりは、別の書籍紹介ということで掘り下げていきたいと思います。

自分なら、どうする?と考えよう

さて、本書を読む際に「コンサルタントならどうするか」と考えてみましょう。

以前ご紹介した、インフォグラフィック・デザイン -分かりやすく情報を伝える図説のデザイン- の書評記事でも述べましたが、こういう実例は「本質」を自分なりに考えることが重要です。例えば、p.167で紹介されている「ハプティカ点字時計」で考えてみます。まずは、この「実例」に添えられた解説文を引用します。

目の不自由な人にとって、時刻を知るにはふつう、時計の文字盤の覆いをはずして針をなぞるーー素早く正確に読み取るのが難しいーーか、音声の出る時計から耳で情報を受け取るーーどうしても周りの人に気づかれるーーかどちらかだ。デザイナーのディビッド・チャペスは、正確かつ静かに時刻が分かるハプティカ点字時計を創った。ディスプレイに軍用時間フォーマットで四つの数字が並ぶ。数字を表す点字は、四つの突起の一つ一つが時間とともに開店するダイヤルについていて、カバーの下に入ったり出たりする。ユーザーは点字ディスプレーの上に指を滑らせ、時刻を読み取る。このデザインは、カリフォルニア州アナハイムの点字研究所の学生と教員を対象に行ったエンドユーザーリサーチに基づいており、直感的な人間工学的インターフェースの下、障害に対する偏見を解消する。

(※商品画像はコチラでみられます。)

非常にシンプルなつくりで、指でなぞって四つの数字を読み取り、1-0-3-2なら10:32ということになるわけですね。

この商品をみたときに、僕ならば、以下のようなことを考えます。

  • プラスチックで上下を隠すことで「触れる部分を限定する」のは、デジタル時計と同じ発想=仕組みの話(1)
  • 突起の付いたダイヤルが回るのはオルゴールと同じ=仕組みの話(2)
  • 目で見る(視覚)を、触る(触覚)に置き換えるという”感覚の代替”をしている=考え方の話

つまり、要素分解をしているわけです。(関連記事:物事を「要素分解」する

その上で、仕組みの話(1)については、同じように「一部を隠す」or「一部を表示する」ということで、他に何かできるものはないか。と考えますし、仕組みの話(2)についてはオルゴールの仕掛けが他の用途に転用できないか、あるいは、この仕組みをオルゴール以外の仕掛けで実現するにはどうすればよいか、と考えます。

最後の考え方の話=「感覚の代替」については、他の代替方法に思いをはせます。例えば「視覚」を「聴覚」で代替できないか。セガサターンのエネミー・ゼロというゲームは、完全にこのタイプですね。あるいは「音(聴覚)」を「視覚」に変えられないか、などもありますよね。具体的にいうと、「音」を「色」にする、とかね。ドレミファソラシは7音なので、虹の7色と対応させても面白いかもしれません。(音を波形で表現する、というのは既に使い古されてますよね。)さらに、「音」→「色」→「文字」まで変更しても面白いかもしれませんね。「ド」がなると「赤」という文字が表示される、とか。

このように「デザイン」ひいては「アイデア」を、正しく要素分解して、自分なりに解釈することができれば、発想力を鍛えることができます。いわば「デザインのリバースエンジニアリング」ですね。

そのように「思考トレーニング」のネタ帳としても、オススメできる一冊ですよ。

 


なぜデザインが必要なのか――世界を変えるイノベーションの最前線

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