あなたはそのアイデアに気づけるか -ヒット商品を生むフレームワーク- その⑥

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あなたはそのアイデアに気づけるか
-ヒット商品を生むフレームワーク-

「どのようにしたらヒット商品を生むことができるのか」。残念ながら確実にヒット商品を開発する手法は存在しないが、“気づき”を促すフレームワークを活用することによってヒットする確率を上げることは可能である。商品開発・マーケティングは深く広い領域であるが、本稿では商品開発プロセスの源流となる「アイデア発想」につながる“気づき”に的を絞って、その手法を解説する。
(2008年秋東洋経済THINK!記事)

別の「専用」はないのか?:缶コーヒー

セット売りの流れでもう1つ紹介すると、「××専用」を「セット売り」と同じ考え方で用いることもできる。朝専用缶コーヒー「ワンダ モ一二ングショット」(アサヒ飲料)というヒット商品がある。“朝専用”とセグメントを切ったことによる勝利だが、それに加えてビジネスパーソンが朝に缶コーヒーと一緒に食べる商品をセットで売れないか?最近は朝食の必要性が訴えられているためか、私の周囲でも若手コンサルタントがコンビニで缶コーヒーと一緒にサンドイッチを購入して食べている姿を見かける。「缶コーヒー×××専用サンドイッチ」を飲料メーカーとコンビニが共同開発して自社缶コーヒーを囲い込むことはできないか?

また、私の周囲の喫煙者を見ていると、タバコを吸うときに缶コーヒーを飲む人が多いようだ。ならば、いっそ“一服”が旨くなる「いっぷく休憩専用コーヒー」などを出したらどうか?(個人的には、タバコも飲料も出しているJTに取り組んでいただきたいテーマである)。最初は他愛ないアイデアでもこのようにどんどん出し続けてほしい。

業務にもアイデア発想:人材派遣

これまでは商品・サービスの話を中心に進めてきたが、このアイデア発想法は「ビジネスモデル」や「業務のやり方」などにも応用が利く。人材派遣業のX社を例にとってみよう。

数年前に人材派遣業界で破竹の成長を続けた企業が存在した。彼らはどのようなヒット商品を出したのか?答えから言うと、“営業の仕組み”で「一点突破」をしたのである。

人材派遣会社にとっての商品は“人”であるが、一方で、派遣の仕事を探している人は複数の派遣会社に登録するのが一般的だ。そうすると、結果的に各社に登録されている人は同じであり、商品としての差別性がないことになってしまう。しかし、当初、人材派遣大手各社は「良質な人材を抱えている」ことをアピールして営業をしていた。

一方で、派遣社員を採用する企業のニーズは、「早急に人員確保ができること」であった。あらかじめ1カ月前から要員計画を立てる、などという企業はほとんど存在せず、多くの企業では「明日からお願い」「来週頭から来てほしい」など急なリクエストが常であった。そのため担当者は、現在取引のある派遣会社に電話をかけるか、名刺がたまたま手元にある派遣会社に電話をかけることが多く、わざわざ連絡先を調べて「各社に見積もりをお願いする」ことはあまりなかった。

そこでX社は、営業スタッフに高度な提案スキルを求めず、「定期的に、しかも高頻度で担当者を訪問して名刺を置いてくる」ことだけに専念した。“担当者が派遣社員を必要と思ったその瞬間に、手元に名刺がある状態にしておくこと”にこだわる「一点突破」。

この例は、一般的には事業戦略として捉えるべきだが、ビジネスや業務でもヒット商品と同様に、アイデアを発想することによって、「売れる仕組み」を作ることができる好例として紹介した。

実はこの例を紹介したのにはもう1つ理由がある。この例が「パクリ・応用」に活用できるからだ。自業界にどっぷりと浸かっていると、当たり前のことに気づかないことが多い。最近は、高度な提案営業や営業が必要と謳われ、多くの企業で「営業の高度化」(つまり「ハイエンド」)というテーマで様々な改善活動を行っている。しかし、顧客側のニーズを見ると、「高度化」よりは「シンプルでスピード勝負」を仕掛けるべき業界も多い。「一点突破」は業務のやり方においても有効な発想法である。

その⑦に続く

 

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