アクセンチュア アナリティクス日本統括 工藤卓哉氏 ビッグデータ対談 その②

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金融サービスの高度化からグーグルグラスまで

日本を代表するデータサイエンティストの工藤卓哉氏。
11月上旬に工藤氏の著作である『データサイエンス超入門 ビジネスで役立つ「統計学」の本当の活かし方』(日経BP社)が発刊されたのを機に、弊社の網野知博が対談を行って参りました。
(インタビュー日時:11月18日 ※発言内容は当時の状況になります)

 

網野:

本を書くに至った背景や「バランスが大事」と言う話をしてもらいましたが、少し話題を変えていこうと思います。

工藤さんの本の中で、具体的には26ページですが、「データ活用のチャンスがより多くの企業に訪れる。」と言う話が出てきます。

卑近な例でも結構ですので、この辺に関していくつか分かりやすく例をご紹介頂けますか。

データが多くなったからこそできるようになったことや、統計処理の速度があがったからできることなど、色々とあると思いますが、

ビッグデータによる今後の企業のオポチュニティーなどに関してざっくばらんに話して頂ければ。ぶっ飛んだテーマでも良いですし、小さな改革でも良いです。

工藤:

2つ思い浮かびます。

まずは、よく知られている例で行くと、データの処理タイミングを早めることによる価値ですね。

銀行の勘定系システムから見ていくKPIとして、例えばその一つに「預かり資産残高推移」等の指標がありました。しかも見る頻度は月次でした。

金融市場の自由化によって、銀行は多くの商品を取り扱うようになりましたが、公社債や外貨預金などの保有資産に関してもサイロでDBが作られてしまっています。

分析情報基盤の性能が圧倒的に拡大したことにより、従来では月次で一つの金融商品しか分析結果がみられなかったのが、今は日次で全商品をつなげて見られるようになりました。

それができることで少なくとも分析の幅が一気に広がります。昔はほとんどの銀行が公社債だけを調べて、公社債をやってる顧客なら安定志向だなと判断していました。でも、今なら、実はこの顧客は投資商品も色々と買ってるな、などと他の商品DBと横ぐしでまとめて見ていくことができます。スケーラブルな分析が可能になり、それにより意思決定速度を上げて行くことができると思います。

一つ例をお話します。今月19歳11か月になる人でデビットカードを持っている顧客は金の卵なわけです。20歳になるタイミングでクレジットカードを持たせられるし、勘定口座も作ってもらえる。

しかし、従来の仕組みだとそのリストが出てくるのは、月で締めてからとなるので、1か月後となり好機を逃していました。それが日次でデータを回して金の卵を抽出してくることができれば、もれなくそのサービスを提供できるようになります。意思決定速度と商品の幅を広げることができます。

もう一つはセンサーデータです。

昔なら絶対にできなかった領域ができるようになりました。今まではデバイス側の制約もあり、ぽんぽんとセンサーデータをタイムリーに吐き出して活用する事は簡単ではなかったですよね。例えば、画像データなども圧縮技術の問題から画像の質がまだまだ足りていなかったのです。

それが、ストレージも安くなったことで状況が変わって来ました。ソフトバンクなどはWi-Fiのデータですが、45万アクセスポイントといったデータを格納し、それがリアルタイムで分析できるようになっています。

他にも自動車レースではマクラーレンのエレクトロニクスチームなども凄い例です。

レーシングカーはシャーシで11,000点、エンジンで6,000点、電子制御系で8,000点の部品があり、トータルで25,000点もの部品から構成されています。そこに、150ヶ所にセンサーがついていて、速度などのデータを全て記録し、レース中にリアルタイムで異常をガレージ内で検知することが可能で、そのデータをピットで20人程で分析しています。今まではドライバーの経験で、タイムが落ちているからタイヤ交換が必要などと判断していたものが、ピットがデータをもとに判断してピットインのタイミングを決定しています。このような分析は昔ではできませんでしたが、今ではレースの最中にタイムリーに実施しています。

その他にも、医療の領域で期待されているのは心疾患系への応用です。一つの事例は新生児の心疾患を防ぐものです。ビッグデータによるパターン認識によって不整脈で心臓に異常が出る数分前に医者にアラートが上がる仕組みがあります。給与が高い医者を24時間新生児に張り付けるわけにもいかないのですが、ビッグデータとパターン認識の力により、その兆候を無人でしかも異常が出る前に把握することができます。

後はグーグルグラスですね。ようやく弊社と公式な記事が出たので堂々と言うことができます。

今まで、テキストのクリックストリームがインプットとなっていた世界から、グーグルグラスは音声が入力となり、出力値が算出されます。

つまり、音声をバイナリセットのデータに変換し、一致した情報をグーグルグラスに返しているわけです。あれは機械学習であり、圧倒的な処理性能を活用したパターン認識の合わせ技です。

フィリップス社、グーグル社含めて弊社(アクセンチュア)と実証実験により共同開発していく予定です。

高齢化社会も到来しますし、ライフサイエンス系は必ず需要があると思っています。きめが細かいサービスができないと人命に関わるような領域や、細かい保守が必要となるような設備投資が行われる社会インフラなどはビッグデータのポテンシャルがもの凄くあると想定しています。

次号に続きます

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