“問い”からはじまる価値創出──マーケティング視点で企業変革に挑むコンサルタントの現在地

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ギックスの「DI変革Division」は、クライアントがデータに基づいてより精度高く意思決定を行える「データインフォームド」な行動様式へ変容し、今まで以上に競争力を強化し成長していくことを目指して、全社的な変革提案や伴走支援を行う組織です。

今回は、2025年2月にギックスにジョインし、DI変革Divisionで新規業務開拓やクライアントとの共創プロジェクトに取り組む楊サワクに、これまでのキャリアや仕事への価値観、今後の目標について聞きました。

マーケティング領域での多様な経験を携えてギックスへ

Q.まず、ご経歴について教えてください。

私は中国・上海で生まれ育ち、1996年に19歳で来日しました。日本語学校で学びながら受験勉強に励み、その後、早稲田大学政治経済学部経済学科に進学。さらに2006年には慶應ビジネススクールでマーケティングを学びました。

大学院卒業以降は、博報堂やWunderman Thompsonなどの広告代理店で約20年にわたり、伝統的なマーケティングコンサルティングから最先端のデータマーケティングまで、「人間理解」と「企業成長」を結びつける仕事に携わってきました。具体的には、日本や中華圏の企業を対象に、ブランド戦略、需要検証、ソリューション開発、CXM設計など、多様なテーマで支援してきました。

特に2013年以降は、インバウンド市場における訪日外国人向けのサービス開発や、部門を横断した組織づくりに深く関わってきました。

Q. ギックスではどのような業務を担当されていますか?

ギックスではDI変革Divisionに所属し、新規業務の開拓や新規クライアント開発を担当しています。特にBtoB企業に対して、戦略設計とデータ分析を融合させた「Data-Informed」なコンサルティングを提供しています。

ギックスはシステムやデータ基盤に強みを持っていますが、営業コンサルである私は、生活者に近い視点である「問いの設計」や「デザイン思考」といった切り口で、マーケティングやサービス改善の戦略立案を支援しています。

こうした視点が、既存の枠組みにとらわれない新たなビジネステーマや潜在ニーズの発掘につながって、新規事業や新たな顧客接点の創出にも貢献しています。そして、BtoBの先にいる“生活者”の価値を捉え直す「BtoBtoC」の視点こそが、事業の広がりを生み出す原動力になっていると感じています。

Q.ギックスを知ったきっかけと、入社の決め手は何ですか?

パーパスに掲げられている「Data-Informed」、つまり判断・意思決定を行うのは人間であって、データはその行為を支援する役割を担うもの、という考え方に深く共感したことが最初の接点でした。

ギックスの仕事は単なるデータ分析にとどまらず、「問いを立てる力」や「人間への洞察」に重きを置いています。その姿勢に、私自身のキャリアや信念との共通点を感じました。特に、BtoBの文脈にBtoC的な深いインサイトを持ち込むことができる点に、私自身の経験が生かせると確信しました。

株式会社ギックス DI変革Division マネージャー
楊 サワク(よう さわく)

成果を出した時こそ振り返り、再現可能な構造に落とし込む

Q. 先ほどのお話にあった「問いを立てる力」と「キャリアや信念との共通点」について、もう少し詳しく教えてください

私はこれまで、消費者インサイト(消費者自身も気づいていない深層心理にある本音、感情、動機)の発見が、事業や社会に新たな価値をもたらす瞬間に、数多く立ち会ってきました。

その度に、成功体験を単なる“結果”として終わらせるのではなく、「なぜ価値が生まれたのか」「背景にはどんな構造があったのか」と問い直す習慣が、自然と育まれてきたように思います。

今でも思考の軸となっているのが、ある先輩から受けた教えです。数億円規模の案件を受注した際、その先輩にこう言われました。

「もちろん、成果を喜ぶのは当然。でも、次につなげたいなら、“今回は運が良かったのかもしれない”“負ける可能性はなかったか”と、自分の勝因を冷静に見極めなさい。それが“勝ち方”を再現する鍵になる。」

この言葉を通じて私は、「勝ったときこそ振り返りが必要」であり、「再現可能な強さ」を構造として持つことの重要性を学びました。成功を単なる偶然ではなく、必然として捉えるために、“構造的な内省”を積み重ねる——その姿勢が、今の私の仕事のあり方にも深く影響しています。

Q. 入社されて3ヶ月が経過してみて(取材時点)、改めてギックスという会社についてどう感じていますか?

ギックスに入って強く感じたのは、「優秀な人たちとともに働くことの価値」です。投資家ウォーレン・バフェットの言葉に、「自分より優秀な人の輪に身を置け」というものがありますが、まさにそれを日々実感しています。

ギックスには、専門性だけでなく、自律的に考え、他者から学び続ける姿勢を持った人たちが集まっています。その環境自体が、私にとって大きな刺激であり、成長の源泉となっています。

特に印象的なのは「理論と実践を高速で往復する知的環境」です。戦略とデータ、仮説と実証、抽象と具体といった思考の往復が目まぐるしくも精緻に循環する中で、自分の思考も常に磨かれていく感覚があります。

また、組織文化として驚くほどフラットで、議論が極めて客観的に進む点も特徴的だと思いました。誰の意見かではなく、「何が合理的か」「何が価値につながるか」を基準に対話が行われるので、自分の視点を相対化し、自然とアップデートしていくことができます。

このような知的な緊張感の中で、日々思考を深め、共に新たな価値を創造できる——それがギックスで働く大きな魅力ですね。

本質的な問いを立てる視点と、誠実にクライアントへ寄り添う姿勢

Q. ご自身の仕事で「面白さ」や「やりがい」を感じるポイントはどこでしょうか?

最大の面白さは、ギックスが大切にしている「データは人間の問いに従う」という思想にありますね。これはまさに、私自身が現場で積み重ねてきた実感と重なっています。

クライアント様が抱える表層的な課題の背後には、しばしば“本質的な問い”が潜んでいます。その問いを見極め、人間理解とデータの力で解き明かしていく——このプロセスには、知的な刺激と大きなやりがいがあります。

特に魅力を感じているのは、仮説と実証を高速で往復しながら、意思決定を前進させていける点です。理論と実践を行き来する中で、戦略やアウトプットがどんどん精緻化されていく感覚があります。

また、「不易と流行」——つまり、変わらないものを大切にしつつ、新たな変化を柔軟に取り入れるという視点も、問いを立てる際の重要な判断軸だと考えています。変化の激しい現代にあっても、人間の本質や社会の構造には時代を超えて変わらない要素がある。その前提に立って、単なるトレンドではなく、普遍的な行動原理や意味構造を見つめることを意識しています。

そして、そうした深層に根ざした問いと対話こそが、クライアント様にとって本質的な価値を生むと信じています。

Q. では、クライアント様と向き合う中で意識していることはありますか?

老子の「上善如水(じょうぜんみずのごとし)」という言葉を心がけています。これは、水はどんな器にも形を合わせ、争うことなく万物を潤す——最上の善とは、水のように柔らかく誠実であり、相手を尊重し、寄り添う姿勢にある、という教えです。私は、クライアント様と向き合う際にもこの言葉を心に留めています。

クライアント様の業務課題の背後には、組織の構造や文化、意思決定の力学といった背景が存在していて、それらを踏まえた問いの立て方がとても重要です。

一方で、どれほど理論やデータが整っていても、最終的に意思決定を下すのは人間です。クライアント様もまた、不確実性やプレッシャーの中で日々格闘されている一人の人間なんです。だからこそ、相手の置かれた状況や感情にきちんと配慮し、誠実に寄り添う姿勢を何より大切にしています。

“水のように柔らかく”とは、単に柔軟であるという意味ではありません。相手の器を尊重し、自分のエゴを手放してでも、本質的な価値に従って動く。そんな姿勢で丁寧に信頼関係を築いていきたいと考えています。

Q. ありがとうございます。では最後に、これからの目標や挑戦したいことについて教えてください。

はい、大きくは3つの視点で考えています。

1. 時間の視点─未来から現在を見る:「今の選択」が10年後をつくる
短期的な成果だけにとらわれるのではなく、10年後の社会・顧客・組織のあるべき姿から現在を逆算し、いま何を選び取るべきかを常に考えていきたいと思っています。構想で終わらせず、戦略を現場の文脈に着地させる柔軟性と解像度を持ち、一貫してクライアント様に伴走できる存在であり続けたいと考えています。

2. 競争の視点─業界を俯瞰して現在を見る:「構造優位性」をデザインする
「戦略×データ」だけでは差別化が難しい時代においては、業界構造そのものを見直し、競争のルール自体を再設計するような支援に挑戦していきたいと考えています。不変の構造(不易)を見極め、そこを起点に戦略を組み立てていくことで、クライアント様にとってより根源的な価値を提供していきたいです。

3. 空間の視点─世界から現在を見る:「ローカルの特殊性」から普遍モデルをつくる
将来的には、ギックスのグローバルな展開にも貢献したいと考えています。日本固有の文脈を出発点としながら、それを抽象化・構造化し、世界に通用する問いや戦略へと昇華させていく。その挑戦を通じて、ギックスが「世界の構造を読み解く、日本発のコンサルティングファーム」へと進化していく未来に、少しでも力を添えられたら嬉しく思います。

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