”考え方”を考える|抽象化と概念化を間違えない:具体例を概念化すると「伝えたいこと」を明確にできる

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抽象的に言う、と、概念としてまとめる、は別物である。

コンサルタントが「抽象度をあげろ」というときには、実は「抽象的にしろ」とは言っていません。「概念化して語れ」と言っているのです。本日は、そのあたりについて掘り下げていきたいと思います。

「具体的」と「抽象的」の関係性

まず、世の中には「具体的」と「抽象的」という言葉があります。

この違いについては関連記事で詳しく紹介していますので、そちらをご参照いただければと思います。ということで、ここでは、ざっくりな説明で済ませますね。

「具体的」というのは、特定の物・事象を、明確に特定できる表現です。だれが聞いても「それ」と分かる。例えば、「マツダ RX-8」というと、みんな同じ車を思い浮かべます。これが”具体的である”ということです。事象にすると、「毎朝8時に起きる」とか「必ずスーツを着用する」とかいうのは、非常に具体的な表現です。

一方、「抽象的」というのは、もう少し、解釈の余地がある表現です。例えば、「マツダのスポーツカー」と言うと、前掲の「RX-8」かもしれませんし、「ロードスター」かもしれません。はたまた、今はなき「RX-7」のことかもしれません。事象であれば「規則正しい生活をしましょう」とか「服装のルールを守りましょう」とかは、前掲の例に比べて抽象的な表現だと言えます。

ですので、コンサルタントが上司や先輩に言われた「もっと抽象度を上げろ」という言葉を素直に解釈すると「もやっとした表現にすればいいんだな」と理解してしまうのも無理はありません。

「概念」にすることができるか?

しかし、この記事の冒頭で述べた通り、「抽象度を上げろ」という言葉は、「抽象的に言ってくれ」ということではないのです。「その物事を、もっと汎用的な概念として昇華させて表現しろ」と言っているのです。

概念として昇華する=クリスタライズする

概念として昇華する、ということは、結晶化=クリスタライズする、という行為と同じことになります。コチラの記事で述べたとおり、「エッセンスを抜き出して、できるだけ短く表現する」わけです。

友達に「お前の友達の吉田ってどんな奴?」と聞かれたときに、生年月日や出身地などの”具体的”な項目を答える人はいないでしょう。「面白いやつ」「変な奴」などの回答が一般的だと思います。これは”抽象的”ですね。たとえば「サイヤ人みたいな奴」と答えてみたらどうでしょうか。これは「サイヤ人という”概念”」で友達を表現していますね。あるいは「人間的には尊敬できないけど、仕事のパートナーとしては最高」とかも、高度に”概念化”しています。

ついでに、より実践的な例を挙げておきましょう。就職面接で「あなたの友人達は、どういう人たちですか?」と聞かれたとしましょう。この時に「吉田って奴は〇○で、松本って奴は□□で・・・」と”具体的”に応えたら、おそらく「日本語の通じない奴だな」と採用見送りになることでしょうね。かといって「良いやつばかりです」とか言っても、なんだかなーです。こういうときに、うまいこと表現するには”概念化”が大事です。というわけで、この質問に対して、僕ならば・・・

「私の友人達は大きく3つに分けられます。真面目な話ができる奴と、馬鹿話ができる奴と、どちらの話も自由に行き来しながらできる奴です。昔は、”真面目な話だけできる友人”と”馬鹿話だけができる友人”の2つのグループが非常に多かったのですが、近年は、最後のグループが多くなってきました。結局のところ、真面目な話と馬鹿話との間に明確な垣根はないので、その行き来を自在にできる奴らとの会話が相互に楽しく、どんどん友人関係が深まってきているのだと思います。そういう友人たちは概して地頭が良く、物事を多面的に捉える能力に長けているために、仕事もそつなくこなせるようで様々な業界で活躍しています。彼らと積極的に情報交換することで、まぁ、例えその大半が馬鹿話だとしても、多くの気付きを得ることができます。また、こういう友人たちを”ベンチマーク”として横目で眺めることで、私自身の成長の速度が妥当なのか、ということを考えることにもつながりますので、非常に刺激をもらえる友人達だなと思いますね」

とかって答えるんじゃないかと思います。なんか、解説するのもバカっぽいですが、一応解説すると「友人」という一つの概念を「A.真面目な話ができる人たち」「B.馬鹿話ができる人たち」「C.両方を自由に切り替えられる人たち」の3つの概念で括りなおしてます。そして、「AかBか、という区切りを置いていたのは自分の方で、多くの友人たちとはCの関係を築くことができている」と展開し、「Cの人たちは非常に優れていて、僕自身を成長させてくれるのだ」と結論付けました。

これって「抽象的」ではなく、「概念的」だと思うわけですよ、どうですか?

ちなみに、これらの流れを、全部すっ飛ばしてもっと端的な”概念”として昇華するならば、

私の友人達は、成長のための刺激を相互に与えあうことができる、貴重な存在です。

とかになるんでしょうね。

概念にすると、何が良いのか?

ここまでは「概念化」とはどういうことかを述べてきました。では、概念化すると、何が嬉しいのでしょうか?

実は、概念化すると「本質だけを伝える」ことができるのです。具体例は、相手の知識・バックグラウンドも含めた「理解力」によっては、こちらが伝えたいことが伝わらない可能性があります。また、具体例と抽象を並べると、それは「いったりきたり」しているだけです。しかし、具体例と概念を並べて記述すると、それは「理解すべき物事と、その具体例」の組み合わせで情報の受け手の理解を助けることができるわけです。

というわけで、ここでも「具体例をあげて」考えてみましょう。(笑

新入社員に、こんなアドバイスをしたとします

「メールの誤字脱字をなおせ」

「客先でネクタイを緩めるな」

「挨拶は大きい声でしろ」

この3つのアドバイスは非常に具体的です。真面目な社員は、言われたとおり「誤字脱字をしなくする」「ネクタイを緩めなくなる」「挨拶を大きい声でするようになる」のでしょうね。が、そうすると、「遅刻するな」とか「名刺交換では相手の名刺を先に受取れ」とかを逐一、指摘していくことになります。

ということで、ここで抽象的な指摘をすることになるわけです。

社会人常識を身につけろ

が、残念ながら、これでは何も伝わりません。そこで概念化の出番となるわけです。僕ならば、こう伝えてるんじゃないかなと思います。

プロ意識を持って、仕事にのぞんでください。

「プロ意識を持った社会人」というのが概念です。その、プロ意識を持った社会人のようにふるまってください。ということをお願いしています。

もちろん、プロの定義は人によって多少は異なります。しかし、なんらかの行動が「プロとして自信をもって言えるのかという”基準”に照らし合わせる」ということが行動規範そのものになります。その場合には、ひょっとしたら「名刺を受け取る順序」を間違えてしまうかもしれません。でも、メールの誤字脱字や遅刻なんていう愚かなミスは無くなるはずです。このように、概念という形に昇華することで「一番伝えたかったのは何なのか?」ということが明らかになるわけです。

尚、このあたりは、GCAサヴィアンの金巻氏の著作が非常に分かりやすい実例だと思います。非常にうまく、具体と概念の間を行き来していますので、一読の価値があると思います。そちらも是非参考になさってください。

また、コチラの関連記事も、「具体例」を基に「概念化」した”具体例”ですので、良ければご参考に。(メタな表現ですみません。)

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