データ人材とビジネス人材|成果につながるデータ活用

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データサイエンティスト ≠ Data Scientist

DX人材、デジタル人材という言葉がありますが、その定義は、いまいち明確になっていないように感じます。あるいは、非常に限定的な領域の話に閉じてしまっているようにも見受けられます。

このように定義がふわふわした状態で用いられる「DX」「デジタル」という言葉にとらわれ過ぎると、本質を見失うリスクが高まります。そこで、私たちは「データ活用」という表現で領域を切り分けています。(本記事においては、データ活用を行う上で、デジタル技術は当然ながら用いられますし、DXすなわちデジタルトランスフォーメーションは、データ活用の結果として成し遂げられていく、という関係性で捉えています。)

また、データ活用のお話をする際には「データサイエンティスト」という職種に関しても触れておく方が良いでしょう。

データサイエンティストという言葉は、2012年頃から急速に日本で注目されてきました。2013年11月には、アクセンチュアの工藤卓哉氏による「データサイエンス入門」が発売されました。(工藤氏と弊社代表網野の対談記事(2013年12月)も併せてご参照ください。)

その言葉が隆盛を誇るにつれて、「データサイエンティスト1000人体制」などという表現で、さまざまな企業が分析機能の強化目標を掲げるようになりました。しかしながら、この言葉で指し示す「データサイエンティスト」は、本来の定義からは、かなり矮小化されてしまったと言えます。

この状況に鑑みて、私たちは、英字「Data Scientist」と、カタカナ「データサイエンティスト」は、定義が異なっていると捉えるようになりました。2015年のことです。

日本において、多くの方が言う「データサイエンティスト」は、データを扱う技術がある人のことです。そして、そこには、統計専門家、データベーススペシャリスト、分析ツールを扱える人、などがたくさん含まれてきます。

一方で、英字の「Data Scientist」には、ビジネス課題を理解した上でデータによって解を求めたり、ビジネスに活かすために分析結果を解釈したりする、「データとビジネスをつなぐ機能」も期待されています。

つまり、「Data Scientist」 の広い守備範囲のなかから、ごく一部を切り出したものが「データサイエンティスト」だと言えます。

しかしながら、これは当然のことでもあります。「Data Scientist」の守備範囲は非常に広く、これを一人の人間が担当するのは、非常に困難なことです。そんなスーパーマンは、そうそういません。

そのため、私たちは、役割分担によって解決すべきではないか、と考えました。

すなわち、データ人材とビジネス人材です。

データ人材 + ビジネス人材 = Data Scientist

データをしっかり取り扱い、正確にデータ分析を行う。それが「データサイエンティスト」の守備範囲です。これを担当する人を「データ人材」と呼びます。

一方、それだけでは足りない部分、すなわち、データを何のために用いるのか、その結果として何を得たいのかを考える部分を担当する人を「ビジネス人材」と呼びます。

データ分析をする人「データ人材」と、データ分析をビジネスに活かす人「ビジネス人材」。この2者を足し合わせることで、英字「Data Scientist」の機能をカバーすることができます。

英字「Data Scientist」を採用したり、育成したりするのは非常に困難ですが、この2種類の人材をそれぞれ育てていくという風に捉えると、実現のハードルはぐっと低くなります。

最後のハードルは ”橋渡し”機能

しかしながら、全部できるスーパーマンはあきらめて、分業可能な2種類の人材を育てればよい!と割り切ったとしても、最後に立ちはだかる大きなハードルがあります。それは「両者の橋渡し」機能です。

データ人材は、どうしても「データの世界の常識」で物事を捉えます。一方、ビジネス人材は「ビジネスの世界の常識」で話してしまいます。ここに、隔たりがあります。(このお話は、50年以上前に「システム世界とビジネス世界の隔絶」として、名著:人月の神話で語られていたのと同じ話ですね。)

私たちギックスでは、この両者の役割を、以下の図のように定義しています。

目的がビジネス課題の解決である以上、まずは、ビジネス人材(右側)から、物事がスタートすることになります。「分析設計フロー」として、事業課題を明確化し、どのような成果を求めるのかを明らかにした上で、今回の分析何を知りたいのかを明らかにします。こうして ”知りたいこと” が明確になったうえで、分析の切り口とその指標を設計します。そこまで定まれば、具体的に、どうやって指標を作るのか、集計方法はどのようなものなのかを考え、目の前のデータを深く理解し、実際のデータ取扱作業を行うことが可能となります。

このような分析作業を行うと、次に、そこから出てくる分析アウトプットを、ビジネス人材に戻していくフローが始まります。「結果解釈フロー」です。集計処理を行った結果をアウトプットのカタチにまとめ、複数の指標がどのような関係性にあるのか(相関性の有無、類似性・差異の法則など)を見極め、そこから見いだされる事実(Fact)を提示します。そこから、どんな発見(Findings)があるのか、また、どんな示唆(Insight)が導き出せるのかを考えます。発見や示唆が見えたところで、ビジネス観点で知りたかったこと、得たい成果と照らし合わせて、自分たちの事業戦略や事業上の打ち手に反映していけば、課題解決や成果創出が実現されます。

上の図で記載した、赤字の部分すなわち「分析の切り口と、それに沿った指標の定義」および「発見(Findings)と、示唆(Insight)」が 橋渡しの領域です。

ギックスの人材育成は、左端から右寄りまで

この困難さを解決するために、当社が取っているのが「ビジネス人材領域(右側)はクライアント(もしくはパートナー企業)に任せる」です。

右側ができる人材は、当社にも、役員をはじめとして何名かはいます。しかし、会社としてそういう人材を狙って育成するのは非常に難しい部分だと感じています。(結果的に育つ人はいると思いますが、狙って、というところが難しいのです。少なくとも、当面は。)

そこで、右端部分は、クライアント企業もしくは、ローランドベルガーや電通コンサルティング、あるいは、独立系コンサルティングパートナー企業などにお任せする、というスタンスを取っています。ビジネスを理解し、成果のための打ち手を考える部分は、その専門家にお任せするという立場です。

一方、当社が未経験採用を推進しているのは、「左端から徹底的に鍛える」ということを意識した育成カリキュラムを保持しているためです。アセットベースの人材育成により、短期間に「データ人材(左側)」としての能力を身に着けることが可能です。

そして、一人前のデータ人材となった上で、”橋渡し”機能を身に着けることに注力します。すなわち「データ人材+橋渡し機能」を目指すのです。言い換えれば、ギックスは「左端から右寄りまで」を育成範囲としていると言えます。

もちろん、中長期的には「ビジネス人材」を増やしていくことも視野に入れています。しかしながら、現状の私たちの規模と目指す成長速度においては、差別性の高い領域「橋渡しができるデータ人材」の育成に特化するべきだと考えています。

私たちは、私たちが保有する明らかな競争優位性をさらに研ぎ澄まし、データとビジネスをシームレスにつなぐお手伝いをしていきます。そして、それにより、世の中の「あらゆる判断を、Data-Informedに。」することを目指していきます。

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