(3)シンプルなグラフが分析の王道|事業会社の新入社員が知るべき「データ分析」のお作法

  • f
  • t
  • p
  • h
  • l
title_newjoiner_analytics_theory

本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)

シンプル・イズ・ベストを肝に銘じよう

前回は「新入社員が知っておくべき、分析の基本の考え方」についてご紹介しました。本日は、分析に用いるグラフ、のお話です。

基本的なグラフは5種類。

厳密に上げていけば、グラフの種類はもっともっと沢山ありますが、まずは「新入社員の皆さん」が覚えるべきは、(初回でもお伝えした通り)以下の5つです。

  • 棒グラフ
  • 折れ線グラフ
  • 散布図
  • 円グラフ
  • 面積グラフ


ザックリと説明していきましょう。

棒グラフは「量」をみるのに適している

まず、棒グラフです。これは「幅」がありますので、視覚的に「ボリューム=量」をあらわすのに適しています。人間の目というのは、まぁまぁいい加減なので「線の長さ」だけで「量の多さ」を表現しても、直感的に分かりにくい場合などがあります。棒グラフはその「幅」によって「面積」を持ちますので、直感的に「量」をイメージしやすいです。

折れ線グラフは「推移」をみるのに適している

続いて、折れ線グラフです。これは「推移」を見るのに適しています。つまり、横軸には「時間」を置いておくのが順当です。また、折れ線グラフは、量以外のものを表すのに適しています。例えば”利益率”みたいなものは「量」ではないため、棒グラフで描くと違和感があります。(念のために補足すると、「量」を表現する場合にも、時間的な推移を示したい場合は、折れ線グラフを使っても全く問題ありません)

散布図は「相関(分布)」をみるのに適している

3つめの散布図は、「相関」を見るのに適しています。このグラフで「”点”のカタマリぐあい」が直線や曲線になりそうであれば、相関関係がある可能性が高まります。とはいえ、すべてのものが必ず相関しているわけではありませんので、正確にいえば「分布」を見ていることになります。なお、散布図で「配置(座標)」を示して、各”点”の円の大きさで「量」を表している図がありますが、言いたいことがボヤけるので、あまりお勧めしません。

円グラフは「割合(比率)」をみるのに適している

4つめの円グラフは、「割合」を示すのに適しています。円が100%(もしくは1.0)を示しているので、半円ならば50%(もしくは0.5)ですし、1/4円なら25%(もしくは0.25)を意味しています。面積の大小の判断が「中心角の大きさ」で補強されますので、割合の大小を直感的に理解するのに適しています。そして、一般的には「大きい順」に並べることが多いです。(例外アリ)
ただし、円グラフを複数並べて「サイズの違い」も表現しようとすると途端に「何が言いたいのかわかんない」ということになります。なぜなら、「円の大きさを視覚的に判断する」のがとても難しいことに加えて、「そもそも、面積が倍なら100%の量が倍、という基準で描いてあるのか?また、そうだとしても、右の円は左の円の、いったい何倍の大きさなんだ?」というところが非常に理解しづらいのです。(結局、グラフ中に書いてある数字を読んで判断することになりますね)

面積グラフは「量と割合」の両方を一度に俯瞰するのに適している

面積グラフは、棒グラフを複数くっつけたような形をしています。これは、棒グラフの「各要素の縦の長さ」および、それぞれの棒グラフの「横幅の長さ」が、どちらも「量」を示しているわけです。このグラフによって、「どの要素が大きいのか」が感覚的に理解できることになります。しかしながら、棒グラフの項で述べたように、人間の目はいい加減にできているので、長方形と正方形のどちらが大きいかを瞬時に判断するのは困難です。ですので「何かを判断する」というときには、かえって分かりにくい表となるおそれがあります。

複雑なグラフを使うと、混乱する

上記説明で、お分かりいただけたと思いますが、左側が「シンプル」で、右に行くほど「複雑」です。

特に、棒グラフ・折れ線グラフは、基本的に横軸が固定されています(棒グラフ=要素、折れ線グラフ=時間)ので、縦軸が何を意味しているのかを理解すれば、そのグラフの示しているものが理解できるはずです。つまり、「すぐに”解釈”の段階に進める」というわけです。
一方、散布図は”位置関係・配置”を考える必要がありますし、円グラフや面積グラフは「面積」を解釈していくことになります。こうなってくると、最初の段階で「情報そのものを咀嚼して理解する」というステップが必要で、その次に、”内容を解釈する”という手順になります。

考えるときは、棒グラフと折れ線グラフで考えよう

では、どう使い分ければよいのか?簡単です。分析するときには、極力「棒グラフ」「折れ線グラフ」で考えていけばよいのです。(※賢明なる読者の皆さんは、そんなことは百も承知だと思いますが、世の中にはいろんな方がいらっしゃいますので念のために書いておきますと、他のものを使ってはダメ、ということではありません
「じゃぁ、散布図とか円グラフとか面積グラフは何に使うんだよ?」というご意見もあるでしょうが、その答えは「報告資料を作るときには、遠慮なくバンバン使ってください」ということになります。

「面白いファインディングス」を見つけるときに、複雑なグラフを使のは、実は、ファインディングスを検知しにくくしてしまいます。ひとことでいえば「効率が悪い」んですよね。
一方、ファインディングスからインサイト(示唆)が括りだされて、それを「伝えるべきメッセージ(要は、××が○○なので△△なんです)」が明らかになった場合に、上司・先輩に報告するタイミングで(もし、余力があれば)円グラフや面積グラフの形に加工して「メッセージが明確に、誤解無く伝わるように」していくのは、非常に素晴らしいと思います。コミュニケーションロスをなくすという意味で、非常に「効率が良い」と言えます。

棒グラフと折れ線グラフで、ほんとに、色々わかるのか?というアナタは・・・

と、ここまで読んでいただいた新入社員の皆様の中には「いやいや、棒グラフと折れ線グラフだけで、そんなに色々わかるのかよ。新入社員だからって、なんでもホイホイ信じると思うなよ」と感じていらっしゃる方もいるかもしれません。
というわけで、そんなあなたのために、次回は棒グラフの使い方を、次々回は折れ線グラフの使い方について解説していきたいと思います。

連載 事業会社の新入社員が知るべき「データ分析」のお作法 記事一覧
ギックスの書籍が発売されました

コチラの書籍では、分析の前に、果たして何を考えるべきかを中心に解説されています。今回の「分析のお作法」のお話も収録されています。是非、ご一読ください。

数字力×EXCELで最強のビジネスマンになる本

  • f
  • t
  • p
  • h
  • l