航空機事故に学ぶ”定型化”の重要性:ミスプリベンション in データ分析(2)

AUTHOR :   ギックス

データ分析の定型化(型をつくる)を、航空事故から学ぶ

最近、航空事故が多いと思いませんか。航空事故の場合、実際の発生確率よりも、事故発生時のの生存確率が非常に低いために大きく報道されるため、ニュース・新聞などで耳にする機会が増え、記憶に残りやすい傾向があります。(このあたりは「ヒューリスティックバイアス」という言葉をググっていただくと面白いかもしれません)
さて、本日は、そんな”航空事故”を題材にして、データ分析において「ミスを起こさない仕組み」をどのように構築したらよいのかを考えていきたいと思います。
直近で死傷者が生じた事故5件を見てみると
2014年12月:エアアジア航空8501便 墜落事故 乗員乗客162人全員死亡
2015年3月:トランスアジア航空235便 墜落事故 乗員乗客58人中43人死亡
2015年3月:ジャーマンウイングス9525便 墜落事故 乗員乗客150人全員死亡
2015年3月:エアカナダ624便 着陸失敗事故 25人負傷
2015年4月:アシアナ航空162便 着陸失敗事故 27人負傷
となります。

起因のほとんどはヒューマンエラー

さて先の5件の事故の起因を見てみると、
エアアジア航空8501便事故 「天候起因」強力な積乱雲内での気流などの外的要因で機体が持ち上げられ、失速し墜落
トランスアジア航空235便 「人的起因(整備ミスとオペレーションミスの複合)」離陸直後の片側エンジンの故障及びパイロットが停止エンジンを誤認し、正常側エンジンを停止させる操作を実施
ジャーマンウイングス9525便 「破壊行為」副操縦士が機長をコクピットから締め出し、単独飛行中に高度を低下させ墜落
アシアナ航空162便 「天候起因での操縦ミス」悪視程下(濃霧)での着陸により高度を誤認 低高度侵入による地上構造物への接触により着陸失敗
エアカナダ624便 「天候起因での操縦ミス」激しい降雪の悪天候下での着陸により高度を誤認 低高度侵入による地上構造物への接触により着陸失敗
5件中3件がパイロットによるミスによって引き起こされていることが分かります。直近5件でもその6割がヒューマンエラーによって起きています。実はこの6割という割合は、過去60年超の航空事故の統計データからもほぼ同じ割合(操縦ミスの合計59%)が出ています。
航空事故
(出典:PlaneCrashinfo.com)
それでも、いまこの瞬間も世界中の空を数万という航空機が安全に飛行しているのは、航空業界における弛まぬ安全に対する努力の賜物といえるでしょう。航空業界の行っている努力は、ヒューマンエラーを徹底してなくすべく、あまたの事故の経験を元にした徹底的なcheck listと業務の定型化により、今日の安全性を担保しています。

データ分析におけるミスの無くし方

さて、データ分析業務においてはいかがでしょうか。データ分析には天候要因はありません。(機械的故障は少しあるかもしれませんが)データ分析で起きるミスの起因は100%ヒューマンエラーと言い切っても過言ではないでしょう。1人のデータ分析者の出した分析結果で社員何万人という会社の行く末が決まるかもしれません。何万人というお客様を損させてしまうかもしれません。モニターに映し出される数字を見ていると実感しにくくなりますが、実は非常に責任の重い仕事であることが多いのではないでしょうか。
と、責任感について書きましたが、実は責任感や死ぬ気で分析をいくら行ってもミスを起こさないということはありません。先の事故機のパイロットだって責任感を持って死ぬ気で操縦していたはずです。(実際に操縦ミスをすれば自身が死んでしまいますから。)
データ分析においては、事故の経験を元にすることは難しいですが、人はどうしてもミスを起こしてしまうものと知り、その上でミスを防ぐ仕組みを何重にも構築し、ミスに気が付くチェックポイントの活用を繰り返すようにすることはできるはずです。
航空業界から取り入れられる部分として、「徹底的なcheck listと業務の定型化」の考え方は非常にデータ分析の基礎思想と近いものがあります。
一般的なデータ分析の流れから、“データ分析の定型化(型をつくる)”として大切なポイントは、

  • 分析の段取り
  • データの構造
  • リチェック機構

に分けられます。
きちんとこの構造を構築しておくことが、自分自身が起こしたミスを察知することに繋がります。それでは、次回以降、それぞれのポイントについて解説していきたいと思います。
次回につづく
 
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