(1)まずはビジネスを覚えよう!:事業会社の新入社員が知るべき「データ分析」のお作法

AUTHOR :   ギックス

本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)

データ分析は「ビジネスに活かすため」の手段に過ぎない

本日は、新入社員の皆さんが知るべき「データ分析」および「データ活用」についてご紹介していきたいと思います。
※ちなみに、本稿の対象とする「新入社員」は、各種分析系のソリューションプロバイダー/ベンダーに入社して「分析結果が売り物だ!」と日々ガシガシ分析作業に身をやつす方々でもなければ、データサイエンス系の大学院を出て戦略コンサルティングファームに入ってアナリティクス専門チームでモデリングするのだ!という方々でもありません。あくまでも「一般の事業会社」の新入社員です。もっと言えば、製造業や小売業などの”伝統的事業会社”だと考えていただくとよろしいかと思います。

新入社員が「データ分析」をする・・・その前に

事業会社に入り、新人研修をこなし、晴れて部門に配属された皆さんが、最初にすることは「仕事を覚える」ことです。データをこねくり回す事ではありません。
「仕事を覚える」とは、例えば・・・

  • 名刺交換の作法、電話対応のやり方 などの基本ビジネスマナー
  • 自社の”業界”が、どういう事業環境にあるのか、どういう競合がいるのか、収益構造や顧客企業群はどういうものか、などの業界構造
  • 自社のビジネスの内容、何が競争力の源泉で、何が競合と違うのか、業界内での位置づけはどうなっているのか
  • 自社(あるいは自分の所属部署)の重要顧客の社名や事業内容、自社との取引状況
  • 所属部署のやっている業務内容の理解と、先輩・上司の担当領域や得意領域は何なのか
  • 自分がまかされる業務領域は何で、そのために、どういうスキルが求められているのか

という感じです。
仮に「データ分析」を命じられたとしても、その作業の前提として、上記を頭の中に叩き込んでください。
なぜ、こんな「当たり前」のことをクドクド書いているのかというと、「データ分析は目的ではなくて手段」だからです。

何のために「分析」するのか

事業会社において、分析業務はあくまでも「手段」です。何のための手段かというと「知りたいことを知るため」あるいは「考え(仮説)が間違っていないかを確かめるため」です。分析そのものがお金を生むわけではありません。分析した結果(output)を受けてなんらかの意思決定が行われ、その意思決定に従ってビジネスが運営され、成果(outcome)を生むことがゴールです。
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その成果を得ようとすると、「自社/自部門の目指すものは何か」「そのために、どういう打ち手を打とうとしているのか(あるいは、打ってきたのか)」「競合はどのように動いているのか」「顧客はどのように考え、どのように行動しているのか」などを把握しておくことが求められます。
データ分析を行う、という場合、上記のような事柄を「データを基に推測する」というケースもあります。例えば、競合の動きは、商品別・市場別の売上構成比などから透けて見ることができるはずです。あるいは、上記のような事柄を前提として、その結果を「データを基に検証する」ということもあります。過去の打ち手の効果を知る場合には、打ち手の前後で、対象顧客の反応や購買行動の違いを見ていくことになります。
要するに、まず大切なのは「目的が何なのか」を考えることなのです。これを怠ると「分析中に、何のためにやっているのかを見失い、”出した結果”と”求められていたもの”が乖離してしまった」という悲しい結果になりがちです。

”ツールは何が良いか” とか ”統計的に優位なのか” とかは「その次」の話

この時点では、「ExcelがいいのかAccessがいいのか(あるいは、RがいいのかPythonがいいのか)」であるとか、「Rスクウェア0.8だから、相関していると言ってよいのか」であるとかは、さして重要ではありません。というか、はっきり言って「どうでも良い」です。
なぜなら、検証したいもの、あるいは、知りたいこと、によっては、今、やるべきことがデータ分析ではない可能性さえあるわけです。この時点で大事なのは「何をデータ分析の結果として出したいのか」を明確にしておくことです。
「なんでもいいから、とにかく分析しろ」というような無慈悲な指示をしてくる先輩・上司はそうそういないはずですので、(多少、ウザがられるかもしれませんが)しっかりと目的を理解できるまで質問をして、納得してから進めたほうが良いと思います。
尚、分析ツールは、新入社員が「学生時代にSPSSを使っていました」と言ったからと言って、会社が「よし、じゃぁ、君のためにライセンスを買ってあげよう!」と言ってくれたりはしませんので、「あるものでなんとかやりくりする」ということになります。(まぁ、500万行超のデータを恒常的に扱うのに、エクセルしか与えられないような不幸な境遇なら、頑張って、Microsoft POWER BIの購入くらいは交渉しても良いかもしれませんが・・・)

この連載でお伝えしたいのは「シンプルに考えよう」です

ここから先は、大学で統計学を学んだり、予測モデルをバリバリつくってたりしていた方は「えっ」と思うかもしれません。
しかし、敢えて言い切ります。分析には複雑な理論は一切不要です。誰が何と言おうとも、極力シンプルに行うべきです。なぜなら、「大半の先輩・上司は、複雑な理論を理解してくれない」からです。(笑
もちろん、場合によっては多変量解析をかけて、クラスター分析をしたい!みたいなこともあるでしょうけれど、多くの場合は、そんな依頼は飛んできません。
ちなみに、一般的な事業会社における「分析作業」というと・・・

  • 「顧客別に売上と利益を集計して、前年度データと比べておいて」という作業指示が飛んできた
  • 上述したように”目的”を確認すると「昨年度までは売上至上主義でやってきたのだけど、今季からは、利益も指標としてしっかり見ていこうということになったから、月次で顧客ごとの利益目標を算出する必要があるのだ」と言われた
  • その結果、以下のようなことを考えながら、エクセルで作業を進める
    • 「あぶねー。年次で集計して終わりにしちゃうとこだったよ。月次もつくっておかないとヤバいな、こりゃぁ。」
    • 「結局、顧客をセグメントに分けてセグメント別利益目標を出すことになりそうだから、セグメントフラグとかつけられるように考えといた方が無難だな」
    • 「予算を作るインプットにするってことは来年も使うから、ちゃんと考えて再利用性を高めとかないと来年の後輩が死ぬな」
    • 「月次予算を作ったら、結果の振り返りが月次で走るってことで、下手すると、週次で進捗確認したいとか言われそうだから、そのあたりも見込んで考えておかないと来月の俺が死ぬな」

みたいなところに落ち着くでしょう。この程度の「分析作業」(というか最早大半が「集計作業」)が多いのだとすると、「作るべきグラフ」も必然的に限定されてきます。(詳しくは次回以降でご説明します。以下、頭出しです)

とりあえず、グラフは、5つ覚えておけば足りる

グラフというと、いろいろ種類がありますが、新入社員の皆さんが覚えておくべきは、とりあえず下記の5つで十分です。

  • 棒グラフ
  • 折れ線グラフ
  • 散布図
  • 円グラフ
  • 面積グラフ

graph_howto_00

ぶっちゃけ、2つあれば「意思決定」には困らない

そして、この中で、最初の二つ、棒グラフと折れ線グラフがあれば、大抵の場合困りません。特に「意思決定をする」ということであれば、十分です。(散布図があれば、無敵と言っても良いくらいです)
graph_howto_01

というわけで、次回以降、(伝統的事業会社における)分析の基本思想と、5つのグラフ(特に、棒グラフと折れ線グラフ)の使い方について考えていきます。
(※ちなみに、本連載では「エクセルをガンガン使って××を○○しよう」みたいな内容にはなりません。エクセルの使い方で困っている新入社員の方は、google先生に訊いてみると良いと思いますよ。)

連載 事業会社の新入社員が知るべき「データ分析」のお作法 記事一覧
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コチラの書籍では、分析の前に、果たして何を考えるべきかを中心に解説されています。今回の「分析のお作法」のお話も収録されています。是非、ご一読ください。
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