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「戦略×アナリティクス」に「デザイン」を掛け合わせる意義とは?〜対談:ギックス代表 網野・ギディア代表 上山〜 

AUTHOR :   ギックス

ギックスはL&D社のブランディング/クリエイティブデザイン事業を譲受し、新たに設立した100%子会社である株式会社ギディアにて、2023年8月21日、ブランディング/クリエイティブデザイン事業を開始しました。
ギックス代表網野とギディアの代表に就任した上山の対談を通して、ギックスがデザイン会社を新設するに至った経緯や、自社プロダクト「マイグル」にデザインの力を掛け合わることでどのような未来を描くのかについてお話します。

出会いから8年、協業により深まった相互理解

株式会社ギックス 代表取締役CEO 網野知博(写真右。以下、網野):上山さんと初めてお目にかかったのは、8年前でしょうか?当時は株式会社TSUTAYA(現カルチュア・コンビニエンス・クラブ、以下CCC)の北関東カンパニー社長を務めておられました。音楽や映像などコンテンツを愛する一方で、Tポイントのデータ活用に関しても詳しくて、意気投合しました。また、それ以前の経歴などもなかなかユニークで。

株式会社ギディア 代表取締役 上山顕(写真左。以下、上山):学生時代の話ですね。私が京都で学生をしていた頃、蔦屋書店の一号店が大阪府枚方市にできました。そこのオーナー、つまり、現在のCCCの創業者である増田宗昭さんに、私たち学生が企画したイベントへ協賛いただくなどの色々なご縁があって社長室のカバン持ちアルバイトをやらせていただくことになったんですよ。大学卒業後にCCCに入社し、TSUTAYAのフランチャイズ事業をメインに、イベント事業立ち上げやグループの旅行会社に関わる事業などに携わってきました。
ちなみに、1985年当時、枚方エリアに”モテるバイト先”が「TSUTAYA」、「Pub HEIDI」、「サーフショップHILLHOUSE」と3つありました。その中のひとつ、Pub HEIDIでバイトしている時に、そこの常連だった増田さんとお会いしたんですよね。それから、私、実は、俳優をやっていたこともありまして…。

網野:そのあたりのお話、めちゃめちゃ聞きたいのですが、インタビューが違う方向に行っちゃうので、別の機会にしましょう。(笑)
お仕事の話に戻すと、昨年(2022年)秋に経営者仲間の集いでお会いした際に、当社のマイグルのデモをお見せしたら非常に興味関心を持っていただいて。その後すぐに連絡をいただき「マイグルを用いた提案を、とある自治体向けに一緒にやってみませんか?」というお話になりまして、そこから協業が始まりました。
※マイグル:ギックスが提供する商業施設・観光事業向けに提供するキャンペーンツール

上山:「マイグル」は多くの場合、デジタルスタンプラリー形式で複数のスポットを回っていただくための回遊施策として利用されています。マイグルの利用者が「実際に訪れるリアルな場」に対してデザインの力を加えることで、「マイグル」をサポートしたり、強化したりできる場面は多いと考えました。

行動変容を強化する、マイグル×デザインの可能性

網野:「マイグル」が商業施設や自治体・観光事業者にご活用いただけるのは、デジタル上で気軽に施策を実行できる点にあります。一方で、お客様がショッピングセンターなどで買い物をしたり、観光回遊を行うのはリアル、フィジカルな場です。マイグルの価値をより高め、参加者の皆さんの顧客体験をより豊かなものにしていくためには、フィジカルな”場”づくり、つまり空間演出が必要だと常々感じていました。まさに、欲しかったファンクションをお持ちになっている上山さんのチームと協業していくのは、とても相性が良いと思いました。

上山:L&D時代には、大手スポーツジムが新たに展開する新業態の立上げ案件で、内装デザインはもとより、ロゴマークやコンセプト設計なども含めて幅広いブランド構築のお手伝いをさせていただきました。網野さんに見ていただいたのは、百貨店で実施した某ジュエリーブランドの空間演出でしたよね。

株式会社ギディア 代表取締役 上山 顕
大学在学時、CCC創業者の増田社長のスカウトにより同社の社長室アルバイトを開始、大学卒業後入社。Tポイントの前身となるADMS1号社員、TSUTAYA一号店枚方店の店長からスーパーバイザー、支店長の経験を経て、上場プロジェクトに抜擢。各地域の支社長、FC副本部長、子会社役員を歴任し、海外プロジェクトへの参画後、子会社の旅行会社アークスリーインターナショナルとCCCフロンティアの役員に就任。システムとデザインの会社をMBOし、株式会社Lab&Design株式会社に参画。

網野:造形物を作り空間演出を行うことのチカラを実感しました。デジタルだけで完結するサービスの弱点は「認知」です。デジタルスタンプラリーなら、「いつでも」「(施設内の)どこからでも」始められるメリットがありますが、最初のとっかかりが”スマホ画面”に限定されてしまう。しかし、造作物を作って「スタート地点」や「途中の通過ポイント」、あるいは「ゴール」を視覚的に目立たせることができれば、ユーザーの行動変容を促すことが可能です。あえて、それらのチェックポイントに必ず立ち寄る必要を設けるなど、一定の制約を用いる事で、ゲーム性を組み込むこともできますし、リアルな場での訴求につながるぞ、と大きな可能性を感じました。

上山:リアルの場で認知を促す方法としては、仮設ブースを作ったり、案内板を作ったりと、いくらでも考えられますね。
「マイグル」を使ったキャンペーンは、スマートフォンだけで参加できるために、キャンペーンに参加中のお客様かどうかを、見た目で判断することができません。そこに、空間デザインの力を加えていくと趣が変わります。例えば、ゴールやスタート地点、チェックポイントなどに「分かりやすい」ブースを設置すれば、そこに集まっているお客様はマイグルのキャンペーンに参加してくださっているんだな、と一目でわかります。
お客様が楽しく参加してくださっている状況が可視化されれば、クライアント企業は声掛けなどの施策を組み合わせやすくなりますし、まだキャンペーンに参加していないお客様にも「あれはなんだ?」と興味を持っていただけますから、キャンペーン参加のきっかけづくりにもなります。

網野:マイグルの機能として、デジタル上でスタンプを押す際にQRやNFCを使うケースが多いんですね。買い物をしてくれたお客様に、店員さんがQRを提示してスタンプを押してもらう、というような使い方です。ここにデザインのチカラを加えることで、お店の店員さんも、サービス利用者も、もっと楽しく、もっと面白く感じてもらえるように変えていけるんじゃないかと思っています。
上山さんと一緒に提案したスイーツ店では、ひとつひとつの食品サンプルに個別のQRを付けて、「自分が購入したスイーツ」のスタンプを貯めていくやり方を考案しました。お客様からすると他のスタンプも貯めたいから次は違う種類も買ってみようと思うでしょうし、店側からすると、味気ないQRを提示するのではなく購入頂いたスイーツのサンプルを提示するので、そこでお客さまとのコミュニケーションも生まれてくる。
上山さんと打ち合わせてくると新しいアイデアが次々生まれてくるんですよね。(笑)

上山:当初はいわゆるビジネスパートナーとしてのお付き合いでしたが、色々な企画を検討し、アイデアを話し合っているなかで、より多面的・多角的に協業していけそうだな、とお互いに感じるようになりました。そうした流れを受けて、「経営を一体化することで、より一層、ギックスの各種サービスを強化できるのではないか」と、お誘いをいただきました。
網野さんは、とても尊敬できる経営者だと思っていましたから、非常に嬉しかったですね。

網野:いやいや、そういっていただけると本当にありがたいです。とても良いご縁だったなと思っています。M&Aは相性だけでなく、タイミングもとても大切ですからね。こうして、ご一緒することができたことは、私もとてもうれしく思っています。

CCC時代の経験と異才との出会いから生まれた空間デザイン事業

網野:上山さんが空間デザインの領域に踏み込んでいかれたのは、どのような経緯なのでしょうか?

上山:2つあります。1つはCCC時代に感じた「デザイン」の重要性です。90年代前半、多様なコンテンツをワンストップで取り扱う、という考え方は存在していませんでした。本屋は本屋、レコードショップはレコードショップと、それぞれが独立した店舗であることが普通でした。しかし、CCCはライフスタイル全体の提案をコンセプトとして、それらを1つの店舗でワンストップで提供してきたのです。
その際に、ロゴや店舗の内装なども趣向を凝らし、若いお客様からは「オシャレ」という理由でご来店いただけるようになっていきました。多様なコンテンツを取り扱うお店において、店舗そのものもひとつのコンテンツにしていったわけです。これを間近で見ていて「これはすごいぞ」と感じていました。店舗にくる人をインスパイアする「デザイン」の力に、とても感銘を受けたんですよね。

網野:確かに、蔦屋書店は、現在も店舗のデザインが他社とは全く異なりますよね。コンセプトそのものが違う。スターバックス コーヒーと相性が良いのも頷けます。

上山:もう1つはブランディングディレクターである石山との出会いです。L&Dの前身である、CCCフロンティア・デザインは、プロダクトデザイン領域から始まりましたが、石山の参画で大きく方向転換をしました。石山は、建築周りの知識があり、グラフィック・空間演出などを一気通貫で行うことができるケイパビリティを持っていたんですね。この力を最大限に活かしていくべきだと捉えて、空間デザイン事業に大きく舵を切りました。
石山はフラワーボックスで有名なニコライ・バーグマンの20周年展覧会の企画に際して、直接お声掛けいただいたりもしているんです。その時は、六本木ヒルズ52Fの会場内にデジタルインスタレーションアートやインタラクティブコンテンツの仕掛けを作りました。さらには会場内のBGM制作・音響設計には著名な方にご参画いただくなど、空間全体に対してつながりのある演出・プロデュースを行いました。お客様からの信頼も非常に厚く、同じお客様に何度もお声がけいただいたり、新しいお客様をご紹介をいただいたりと、色々な機会を頂いて数多くの空間デザインを手がけています。

社名の由来は「G」+「idea」。データインフォームドの”先”を見据えて

網野:今回の経営統合に際して、設立した新会社の名前は「ギディア」となりました。せっかくなので、上山さんの口から、そこに込めた想いや意図を語っていただけますか?

上山:これは、網野さんと取締役の田中さん(ギディア取締役も兼務)の案に、我々の案をミックスしたものです。ギックス(GiXo)の「G」に、「イデア(idea)」を組み合わせました。イデアとはアイデアの語源ですが、ギリシャ語で「哲学」「思想」という意味があります。
ギックスの「データインフォームド」の思想は、人がデータによって情報、つまり「アイデア」を得ることができます。生まれてきたアイデアをもとに、我々のクリエイティブやデザインの力で具象化していくという意味を込めました。

網野:ロゴは石山さんに考えていただきました。可愛らしい仕上がりで、とても気に入っています。

上山:このロゴは黄金比に沿って「gidia」のアルファベットを並べました。「a」の前に「+」を入れているのは、アートやデザインを“+α”していこうという意思を込めています。

網野:上山さんは当初、別の案も考えていただいていましたよね。

上山:個人的には「ガーディアンズ(GUARDIENS)」なんて良いんじゃないかと思っていました。本来のスペルはguardiAnsですが、AをEに置き換えた表記です。ギックスの「G」に加えて「デザイン(design)」がアナグラムみたいに含まれるという構造です。何よりMARVELの代表的な映画である「アベンジャーズ」みたいで格好いいじゃないですか。…と、思って強く推してみたんですが、石山からすぐ却下されてしまいました(笑)

「マイグル」をデジタルからリアルな施策へ拡張

網野:新たな冠を掲げて、これからプロジェクトを一緒に進められるのはとても楽しみですね。

上山:ありがとうございます。我々の発想は、デザイン会社の中では少し変わっていて、「企画」の要素が強くあります。モノは存在するだけでは売れなかったり、使ってもらえなかったり、認知されなかったりします。そこに「企画」を組み合わせることで、人の心が動いて、どこかに足を運んだり、手に取ったりといった、「行動」につなげることができる。その味付けをするのが「デザイン」だと捉えています。
「マイグル」に「デザイン」を組み合わせれば、お客様ごとの好みに合わせた「味付け」ができる。網野さんにも賛同いただいたこのケイパビリティをもとに、まずは「マイグル」事業の強化に尽力していきます。

網野:上山さんが仰るとおり、デザインは「アイデア」を社会実装する役割を持つものだと考えています。ギックスはこれまで、データを用いて生まれた情報をお渡しして、クライアントに「データインフォームド」な状態になっていただくことを生業にしてきました。ただ、情報をお渡しした後は、クライアント企業に自力で考えて、自力で歩んでいただくことが前提になっていたわけです。
ここに「デザイン」の力を加えることで、その先の領域、つまり人の判断・意思決定に直接的に関与する領域まで踏み込んで価値提供ができると考えています。
今回のM&Aに限らず、いろいろな取り組みを行いながら、当社の創出価値最大化を目指して邁進していきたいと思っています。

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