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マクドナルドは再生できるのか|馬場正博の「ご隠居の視点」【寄稿】

AUTHOR :   ギックス

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ギックス
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マクドナルドのハンバーガーの味を懐かしく思い出す時代がくるか?

マクドナルドが不調です。日本マクドナルドの2014年12月の決算は前年比で11.5%のマイナス、営業利益、純利益とも赤字転落というのは好不況の波に影響を受けにくい「食べ物屋」としては惨状と言っても良いほどです。この背景には、中国で製造したナゲット用の鶏肉の衛生管理の問題や、異物混入などの事件があったのは事実ですが、問題の根はもっと深いように思えます。

日本のマクドナルド1号店は1971年に銀座三越にオープンしました。戦後の高度成長も後半にさしかかり、日本人の生活水準は欧米に迫りつつありましたが、アメリカ文化の輝きはまだ色あせておらず、マクドナルドのハンバーガーは「洒落ていて、美味しく、しかも驚異的に素早く食べられる」先進的な食べ物でした。ハンバーガーの値段は1個80円。大卒初任給との比較すると、現在の4百-5百円くらいでしょうか。「速い」が「安い」わけではありませんした。

味も当時の日本人には、とても美味しいものに感じられました。ハンバーグステーキはあっても、パンにはさんで食べるハンバーガーは珍しく、本場そのもののパテやパンはまさに「アメリカの味」がしました。マクドナルドの成功で日本でもマクドナルドを真似たファーストフードのチェーンができますが、しばらくはマクドナルドの本物感に及ぶものはありませんでした。

「洒落て、美味しくて、速い」マクドナルドは日本で驚異的な成功をおさめます。フランチャイズチェーンによる急速な店舗展開もあって、文字通り全国津々浦々までマクドナルドの味は広がりました。しかし、最初の頃のアメリカ文化の輝きは失われていきます。マクドナルドは「洒落て、美味しくて、速い」から「清潔で、まずまずの味で、速い」レストランになっていきます。「まずまずの味」には見知らぬ土地でもマクドナルドなら同じものが食べられるという安心感も含まれていました。

しかし、拡大された店舗網を維持し、しかも成長を続けるのは容易ではありません。マクドナルドは1990年代からバリューセットなどのお得戦略、要するに低価格路線を走り始めます。ハンバーガーの価格は130円から80円と創業当時の値段に戻ります(それでも平日半額の65円からの値上げと非難されました)。マクドナルドは「安い、安い、速い」を売り物にするようになってしまいました。

それでも、マクドナルドの価格を「安い」と感じたのは、最初の頃の「洒落て、美味しい」のイメージが残っていたからでしょう。低価格路線でマクドナルドのハンバーガーは次第に安いだけの安物になってしまいます。マクドナルドの安売り戦略はブランド価値を食いつぶして売り上げに替えていただけだったのです。

改めて考えると、マクドナルドの状況は厳しいものがあります。「安い」を売りものにしていたはずなのに、コンビニで買った3百円以下の食品で昼食をすませる若者たちに、バリューセットで6百円以上のマクドナルドは決して安い店ではなくなってしまいました。高価格路線も簡単ではありません。安い店のイメージのついたマクドナルドで千円以上を顧客に遣わせるのは簡単ではないでしょう。しかも、熟練していないアルバイトでも一定の品質の料理が作れるように、マクドナルドの厨房は高度に機械化され、その分柔軟性がありません。「今月だけの特別メニュー」を全国一斉に影響するのは大きな投資を伴います。

こうして見ると、マクドナルドの苦境は構造的なものです。メニューを簡単に変えられないというのは、アルバイトによる非熟練労働者に依存して均一の味を提供するというマクドナルドのビジネスモデルそのものに起因します。何より、一度ついた安物のイメージを取り戻すのは容易ではありません。メニューの柔軟性がないままで、短期的な業績向上を無理に達成するために、ブランド価値を食い潰してしまったのは、もはや取り返しがつかないでしょう。

マクドナルドの状況は、何のプロセスや技術上のイノベーションがないままで、業績向上のために低価格路線を取ることがどんなに危険かを示す例と言えます。もちろんマクドナルドに何の手立てがないわけではありません。従業員の削減、賃下げ、不採算店の整理などで出血状態を止めることはできるでしょう。しかし、それは縮小均衡でしかありません。そして多くの場合、何の成長戦略もなく縮小均衡を続ければそのまま消滅の憂き目にあってしまいます。そうなった時初めて、人はマクドナルドのハンバーガーの味を懐かしく思い出すのでしょうか。

 

(本記事は「ビジネスのための雑学知ったかぶり」を加筆、修正したものです。)


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馬場 正博 (ばば まさひろ)

経営コンサルティング会社 代表取締役、医療法人ジェネラルマネージャー。某大手外資メーカーでシステム信頼性設計や、製品技術戦略の策定、未来予測などを行った後、IT開発会社でITおよびビジネスコンサルティングを行い、独立。

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