分析企業:ダンハンビー(dunnhumby)とは? ~TESCOファミリーの優秀な分析子会社~|データ分析用語を解説

AUTHOR :   ギックス

本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)

小売業ビッグデータ分析を行う上では外せない”ダンハンビー”

もしあなたが小売業界でビッグデータ分析を行う担当者であったり、マーケティング/プロモーションを考えなければならないポジションにいるときには、必ず知っておかなければならない“ダンハンビー”について解説します。

顧客ロイヤリティプログラムの「雄」

ダンハンビーは1989年に英国で創業しました。サービス開始当初はケーブル&ワイヤレス社やBMW社などが主要顧客であり、データ分析によりマーケティング支援のコンサルティングを行っていました。しかし、この創業期にイギリス大手小売のTESCO社に出資を受け、小売向け分析サービスを強化してから、その様相は一転します。
テスコのロイヤリティプログラムのデータを分析し、2003年に“商品DNA”を活用して顧客をクラスタに分け、マーケティングを細分化する手法を発表してから一躍その名を世界に轟かせます。dunnhumby
(図:ダンハンビー社Webサイト
 
その後も、アメリカに進出し、アメリカ大手小売クローガー社の業績回復のカギとなる分析を行ったり、コカ・コーラ社、P&G社の分析を請け負ったりと名実ともにトップクラスのID-POSデータ分析企業です。

商品DNAによる顧客クラスタリング

ダンハンビーを一躍有名にしたのが、顧客クラスタリングです。同社は「個客の見える化」を標榜し、TESCO社のクレジットカードとポイントカードを使う顧客のユーザー属性と購買情報から、購買行動の特性をDNAという形でクラスタリングしました。顧客をクラスタリングするにあたっては、それぞれの商品が持つ特徴から「新製品」や「ブランド品」、「低カロリー」「テスコPB」「お買い得品」「調理済み商品」などの分類を作成し、その購買から顧客を推定していきます。更には購買の仕方から「まとめ買い」「リフィル買い」など行動特性とカード登録情報である属性を加味し、顧客クラスタの情報を取り纏めていきます。このように細分した顧客クラスタデータを基に、顧客ごとに異なるクーポンや情報を送り、非常に高い確率で店舗に誘客し、購買に至らしめているのです。

分析から成果まで

ダンハンビー社の歴史を見ると、単に分析だけで終わらせるのではなく、実際の施策実施のところまでをカバーしていったことがよくわかります。(もちろんTESCO資本が入っていますので、潤沢な資金力を背景に必要となる企業を買収していったことは想像に難くありません)
もともとTESCOが主要株主でありTESCO顧客のデータ分析・マーケティングが主だったため、TESCO顧客向けのマーケティング会社を子会社で保有したことを皮切りに、
2010年買収 KSS Retail(分析ソフトウェア・サービスプロバイダ)
2011年買収 BzzAgent(ソーシャルマーケティング)
2014年買収 Sociomantic(広告テクノロジーファーム)
と、実際にデータ分析で終わらせるのではなく、どうビジュアライゼーションしていくのか、実際に顧客に届けていくにはどうするのかをTESCO内だけで完結するのではなく、他社に向けてもどうするかという視点も加えて拡大して行った結果でしょう。BzzAgentPulse-Shopper-Insights
(図:BzzAgentが提供する分析結果画面 出所:AdvertisingAge

ダンハンビーの今後の動向

そんな順調なダンハンビーですがTESCO本体の業績不振により、アメリカ子会社のダンハンビーUSAを2015年4月に売却してしまいました。(売却価格は推定3,500億円)
また、アジアにおいても、ダンハンビーアジアのヘッドが来日したり、特許申請したりと日本市場にも進出するような気配が感じられつつあります。(この辺りは、ダンハンビーが新たに申請した特許「小売販売分析を行う方法」に絡め、別途お話ししたいと思います)
特殊性の強い国民性や言語によって意図しない鎖国状態の日本の小売ID-POSデータに彼らがどう立ち向かっていくのか、彼らの手法がそのまま通用するのか、じっくり見守りたいと思います。
データ分析用語:索引

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