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「顧客理解と施策実行の断絶」をどう乗り越えるか ―マイグルが実現する“Data-Informedな行動変容”とは―|社長ブログ:ギックスが目指す世界

AUTHOR :  網野 知博

こんにちは。ギックス代表の網野です。

データ分析を行っても、それが必ずしも施策にうまくつながらない。こうした場面に直面したことがある方も多いのではないでしょうか。
私自身も、これまでのプロジェクトの中で同様の状況に何度も向き合ってきました。その中で感じてきたのが、「顧客理解と施策実行の間にある距離」です。

ギックスは創業以来、顧客の行動データを起点に、クライアント企業が自社の顧客を理解し、事業成長につなげる支援を行ってきました。
その中で一貫して向き合ってきたのが、「顧客理解と施策実行の断絶」という課題です。

今回は、この課題に対する解として生まれたプロダクト「マイグル」の開発経緯と、その現在地について整理したいと思います。


すべての出発点となった原体験

ギックスは創業当初、JR東日本グループ様のクレジットカード子会社であるビューカード様に対して、データに基づく戦略立案およびマーケティング施策の伴走支援を、約3年半にわたり行ってきました(当時はCMO代行業と称していました)。

このプロジェクトを通じて、私たちはある構造的な課題に気づきます。

データ分析を通じて、顧客一人ひとりの属性や行動は深く理解できる。
しかし、いざ施策の段階になると、その粒度を維持したまま実行することが難しい。

結果として、細かく分析した顧客も、最終的には粗いセグメント単位での施策に戻らざるを得ない。

分析と実行の間に、構造的なギャップが存在している。
この点は、さまざまなプロジェクトを通じて共通して見えてきた課題でした。

また同時に、企業側から顧客に対して一方的に働きかける施策が多く、顧客が自然に行動を選びたくなるような設計にはなっていないケースも多いと感じていました。

「行動のTo Doをデザインする」という考え方

こうした問題意識のもと、複数のクライアント企業での実践を通じて検討を重ねる中で、「バラエティ理論」という考え方にたどり着きました。

これは、「顧客の利用カテゴリが増えるほど、ロイヤルティが高まり優良顧客になる」という考え方です。

この構造を前提にすると、重要なのは「何を買ってもらうか」だけではなく、「どのような行動を積み重ねてもらうか」という視点になります。

そこで私たちは、顧客に対して単にクーポンや情報を提供するのではなく、一人ひとりにとって意味のある「次に取るべき行動」を設計するというアプローチを考えました。

場所、カテゴリ、店舗、時間、天候、商品・サービスといった複数の要素を踏まえながら、顧客が自然に選びたくなる行動の選択肢を提示する。

これを「スタンプラリー」という形に落とし込んだものが、マイグルの原型です。

そして、この理論を実務レベルで実現するための手段として、2019年にアプリケーションの開発を決断しました。

1to1マーケティング実現の壁

当初、私たちは顧客データ基盤とリアルタイムに連携し、一人ひとりに最適化された施策を実現する、いわゆる1to1マーケティングを構想していました。

一方で、実務の中では以下のような課題がありました。

  • 会員アプリと顧客データ基盤のリアルタイム接続の技術的難易度
  • 施策実行までのシステム統合にかかるコスト
  • マーケティング投資としての費用対効果

そのため、初期のマイグルは顧客データ基盤とは切り離し、アプリ内で取得できるデータを活用した形で提供を開始しました。

また、顧客自身が選択できる「個客選択型スタンプラリー」という設計とすることで、行動の主体を顧客側に置き、自発的な行動を引き出すことを重視しました。

理想形とは一定の距離がありながらも、現実的に価値を提供できる形としてスタートしたのがマイグルです。

導入の広がりと見えてきた課題

その後、JR西日本グループ様の商業施設を皮切りに導入が進みました。2022年からは同社のMaaSアプリ「WESTER」にも採用され、観光回遊や購買促進を目的とした施策など、活用の幅は徐々に広がっていきました(※1)。

一方で、市場全体として高度なデータ活用が可能な環境が整っている企業はまだ限定的であり、マイグルはキャンペーン用途で活用されるケースが中心となっていきました。

これは一定の価値を提供できている一方で、当初構想していた1to1での顧客理解・行動変容という領域には十分に踏み込めていない状態でもありました。

また、単発施策としての利用が多いことから、事業としての安定性という観点でも課題が残っていました。

(※1:参考記事)
・WESPO、WESTERポイント…JR西日本の「ポイント」をめぐる8年物語 対談:JR西日本SC開発 石神孝浩氏 ギックスCOO 花谷慎太郎(2024.09.20)https://www.gixo.jp/blog/25395/
・今や年間約100キャンペーンが走る「WESTER」、多彩なアイデアから生まれる企画で、企業・自治体とユーザーの「好循環」へ(2024.11.12)https://www.gixo.jp/blog/25848/

データ基盤との接続による転機

こうした中で大きな転機となったのが、JR西日本様における顧客データ基盤の進化です。
多様なシステムの顧客データをリアルタイムに接続し、大量のデータを処理可能な基盤が構築されました(これを支援しているのが、当社のCU/ADS(クアッズ)です)。
これにより、従来は難しかったリアルタイム分析に基づく施策実行が可能になります(※2)。

この基盤と連携することで、マイグルは単なるフロントツールではなく、顧客理解と直接接続された「行動変容の実行ツール」として機能するようになりました。

マイグル単体で完結するのではなく、データ基盤と組み合わせることで価値が最大化され、ここで、当初の構想に近い形が実現され始めています。

これらの成果と実績を起点に、現在他のクライアント様への展開も広がっています。

(※2:参考記事)
・DIサミット2025セッションレポート「JR西日本におけるシステムモダナイゼーションの取り組み」(2025.06.13)https://www.gixo.jp/blog/27690/
・リテールAIのネクストステージ~GiXo・GROWTH VERSE・BIPROGYが考えるリテールAI~|BIPROGY FORUM2025セッションレポート(2025.07.18)https://www.gixo.jp/blog/28097/

マイグルの現在地と展開

マイグルは、当初のキャンペーンツールという位置付けから進化し、現在は顧客データ基盤(CU/ADS)と連動した「行動変容の実行レイヤー」として位置付けています。

データによって顧客を理解し、その理解をもとに行動を設計し、実際の行動変容につなげる。マイグルは、その「実行」を担うプロダクトです。

創業以来向き合ってきた「顧客理解と施策実行の断絶」という課題に対し、試行錯誤を重ねながら、その間をつなぐ存在へと進化してきました。

また現在は、単一のプロダクトとしてではなく、クライアントの状況に応じて役割を変える複数の形で展開しています。

その活用は、大きく4つに整理できます。

① キャンペーン型(入口)
短期的な施策実行ニーズに応えつつ、顧客理解やデータ活用へとつなげる入口として機能します。

② データ基盤連携(中核)
CU/ADSと連携し、リアルタイムかつ1to1での行動設計を実現する中核領域です。

③ ロイヤルティ・マイグル(育成)
ライトユーザーに対し、継続的な接点を設計することで、中長期的な顧客価値の向上を目指します(※3)。

④ エンタメ領域(拡張)
LINEヤフー社との連携などを通じて、ファン育成やBtoC領域での展開を進めています(※4)。

マイグルは、これらを通じて、顧客接点の創出から顧客理解、行動変容、事業成長までを一体で設計するプロダクトへと進化しています。

(※3:参考記事)
・ギックス、ライトユーザーを“習慣化”へ転換する新サービス「ロイヤルティ・マイグル」を提供開始 ~データ・AI×ゲーミフィケーションにより、顧客接点創出から行動変容までを一体設計~(2026.03.25)https://www.gixo.jp/news-press/29935/
(※4:参考記事)
・ギックス、LINEエンタメアカウントの機能連携を強化 LINEエンタメアカウント向け「マイグル」LINEミニアプリを提供 アーティストのLINE公式アカウント運用におけるファンの体験価値を向上(2026.02.13)https://www.gixo.jp/news-press/29650/

おわりに

データは分析すること自体に価値があるのではなく、意思決定や行動につながって初めて価値を発揮します。

顧客理解と施策実行が分断されたままでは、その価値は十分に発揮されません。

マイグルは、その間をつなぐための一つの解として生まれたプロダクトです。

顧客理解から意思決定、そして行動変容までを一貫して設計する。そうした「Data-Informedな行動変容」の実現に向けて、これからも取り組みを進化させていきたいと考えています。


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