AWSサービスのデータの転送速度や耐久性を向上するオプション|プロビジョンドIOPS、マルチAZ・・・クラウドサービスとはナニモノか?

AUTHOR :   ギックス

本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)

「プロビジョンドIOPS」と「マルチAZ」。これらはストレージ(データ格納場所)に関する付加機能です。機能をONにすることで、データの転送速度や耐久性が向上します。

本日はクラウドサービスであるAmazon Web Services(AWS)を利用する上でたびたび登場する用語である「プロビジョンドIOPS」と「マルチAZ」いう言葉を解説します。みなさんがAWSのサービスで「仮想サーバを作成する」「仮想データベースを作成する」といった事を行う際にこれらの言葉を目にすると思いますが、これらの単語としての意味を理解しておくことで、最適なAWSのサービスを利用することができます。

プロビジョンドIOPS:クラウド内部でのデータ転送スピードを約束する

プロビジョンドIOPS(=PIOPS)について、まず単語を和訳してみましょう。プロビジョン=Provisionとは「支給・貯蔵」という意味があります。AWSにおける「支給・貯蔵」の意味は「AWSが利用者のために「何か」の支給量を約束しますよ」ということを意味します。この「何か」がIOPSにあたるのですが、この「IOPS」は比較的一般的なIT用語で「Input Output Per Second」の略称です。「1秒間にどのぐらいのインプット(入力)やアウトプット(出力)ができるのか」ということを意味します。上記二つを合わせると「プロビジョンドIOPS」とは、「1秒間にどのぐらいの入力や出力ができるのかという支給量」が「AWSから約束される」という事を意味します。つまりプロビジョンドIOPSの付加機能をONにすることで、例えば仮想データベースがストレージとの間でデータを入出力する際のスピードをAWSから保障してもらうことができるのです。これによって仮想データベースの平均的なデータ入出力速度が向上することになるのです。プロビジョンドIOPSの付加機能をOFFにしている場合、仮想データベースとストレージとのデータ入出力速度はAWS全体の混み具合によって低下することがあります。このような「スピードを保障しない」状態でのサービス提供形態を「ベストエフォート(=最大限の努力)」と呼びます。IOPSにおいては「プロビジョンドIOPS」と「ベストエフォートIOPS」は相反する状態として用いられる言葉です。

マルチAZ:データの耐久性を向上させる

次にマルチAZについて説明します。これも単語の意味から紐解いてみましょう。ご存知の通り「マルチ」は「複数の」という意味です。AZですがこれはAvailability Zone(アベイラビリティ ゾーン)の略でAWS内部におけるコンピュータ管理体系の一つです。「マルチAZ」とは「AWS内部でデータを保存する時”複数のアベイラビリティゾーン”にデータをコピー(≒バックアップ)して格納する」という意味なのです。
ここでAZをより理解するために以下の表を用意しました。これはAWSが内部でコンピュータをどのように管理しているかを簡単にまとめたものです。region1AWSはコンピュータ(サーバ・ストレージ)を管理する単位として以下のような構造を持っています。

リージョン:

リージョン(Region)は呼んで字のごとく「地域」です。AWSサービスを利用する際に「どの地域のクラウドサービスを利用するか?」を指定するものです※。サービス利用料金もリージョンによって値段が異なるものがあります。
※…AWSのサービスにはリージョンを意識させないサービスもあります(例:Amazon S3)。

AZ:

以下に述べる「データセンタ」を複数まとめた管理単位です。各AZは地理的にある程度離れているといわれています。

データセンター:

数十台~数千台のコンピュータをまるで図書館の本のように格納した施設です。オフィスの一区画に設置されたものから、ビルの1フロア、はたまた複数のビルまるごとデータセンタとして運用している施設もあります。この施設にはたくさんのコンピュータを安定的に稼動するための電源設備(自家発電機)や冗長化対策が施されたネットワーク設備(回線・機器)が備わっています。ちなみにAWSは企業の方針としてこのデータセンタの物理的な所在場所を公開していません。ちなみに筆者の知識として、このデータセンタは自然災害に対して堅牢な場所(=地盤が固い場所や海から遠い場所)に場所が選定される傾向にあります。

コンピュータ:

皆さんご存知のコンピュータとほぼ同じものです。データセンタ内の「サーバ ラック」と呼ばれている本棚のような入れ物に整然と並べられています。上記データセンタの場所がAWSとして非公開になっているので、当然これらコンピュータの場所に関しても非公開になっています。つまりAWSはクラウドサービスを実際に提供するハードウェアの場所を公開しないという企業方針をもっているのですね。この意味でもAWSは「クラウドらしい」といえるのでしょう。

複数のAZにデータがコピーされることで、データを失う確率が劇的に低減される。

ここまで説明させていただくと、マルチAZの意味するところがお分かりいただけると思います。上記表の東京を例に取るとマルチAZをONにする事でデータは「ap-northeast-1a」と「ap-northeast-1c」の複数個所に保存されます。つまり「遠隔地の複数のコンピュータ」に保存されていることになります。データセンタを襲う自然災害の一つとして「落雷」がありますがマルチAZを選択しておくことによって、万が一の巨大落雷でデータセンタの一つが機能不全に陥ったとしてもクラウドサービスは継続的に提供されることになります。

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