ソーシャルゲーム分析におけるKPIの定義のチューニング|ソーシャルゲーム分析(4)

AUTHOR :   ギックス

本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)

分析官がKPIの定義をチューニングしよう

今回は、ソーシャルゲームにおけるKPIの定義のチューニングについて説明します。「アクティブユーザ数」の定義について考えることで、KPIの定義のチューニングという作業を理解していきましょう。
もちろん、この考え方は、アクティブユーザ数だけではなく、すべてのKPIに応用できます。

アクティブという言葉の定義は曖昧である

皆さんは、ユーザが「アクティブ」になったという状況はどのような状況だと考えますか?例えば、下記のような状況などが考えられるでしょう。

  1. ユーザがゲームサーバと何かしらの通信を行ったとき
  2. ユーザがゲームのホーム画面に遷移したとき
  3. ユーザがログインボーナスを受け取ったとき
  4. ユーザが何かしらのステージに挑戦したとき

1をアクティブと定義すると、アクティブユーザ数の集計にゲームサーバのすべてのアクセスログが必要になります。また、2をアクティブと定義するとホーム画面へのアクセスログが、3をアクティブと定義するとログインボーナスの獲得ログが、4をアクティブと定義するとステージの挑戦ログが必要になります。
このようにアクティブという言葉の定義は、アクティブユーザ数の集計元のログが何であるかで変化します。まずは、アクティブユーザ数を集計するSQLを確認し、集計元テーブルがどのようなテーブルであるか確認しましょう。

「アクティブユーザ数」の定義は多種多様に変化する

過去の記事で説明したように、アクティブユーザ数は、売上に関する方程式において非常に重要な指標のひとつです。しかし、別の記事でお話ししたように、アクティブユーザ数にはブースト施策で流入したユーザリセマラで生み出されたユーザが含まれるため、アクティブユーザ数は外的要因の影響を受けやすい指標になります。ブースト施策やリセマラによりアクティブユーザ数が急増した場合、ARPUやPURが低下するため、チームや経営層が混乱する原因になりかねません。
あなたが分析官であれば、PMやゲームプランナから、これらのユーザを除いて集計した値を新しいアクティブユーザ数として定義してほしいと要望がくるでしょう。例えば、下記のような新しい定義が考えられます。

  • チュートリアルを突破したユーザのみを対象としたアクティブユーザ数
  • チュートリアル後の最初のステージをクリアしたユーザのみを対象としたアクティブユーザ数
  • レベルが20以上のユーザのみを対象としたアクティブユーザ数

何も考えなければ、これらの新しい定義はPMやゲームプランナの思いつきでどんどん増えていくことになるでしょう。その結果、多種多様な定義が生まれ、アクティブユーザ数に関する議論をしている人たちが各々で想定している定義が異なるという状況が多々発生し、意思疎通に必要以上に時間がかかったり、ミスリードが頻繁に発生したりといったことにつながります。
分析官として、アクティブユーザ数の定義を増やすよう依頼された場合は、この値は必要な値であるのか、何のために使うのか、誰が使用する値であるのか、などを依頼者と検討しましょう。

KPIの定義は分析官が調整しよう

アクティブユーザ数の定義は、PURやARPUなどといった指標にも影響を与えるため、ソーシャルゲームを分析する上で非常に重要です。この定義ひとつでゲームの運命が決まることも少なくありません。
アクティブユーザ数だけではなく、多くのKPIの定義は既に決まっていることが多いでしょう。しかし、既に決められた定義に満足するのではなく、どのような定義であればゲームの健康状態を把握する上で最適な値になるのかを常に考えて、必要に応じて定義を修正するようにしましょう。この作業のことを、定義のチューニングといいます。

異なるゲーム間でKPIを比較する際は定義を合わせよう

アクティブユーザ数に限らず、複数のゲームにおいて横串でKPIを比較する機会は多いと思いますが、注意が必要です。
例えば、アクティブユーザ数の定義を、ゲームAでは「ゲームサーバと何らかの通信を行ったユーザ数」と定義し、ゲームBでは「ゲームのホーム画面に遷移したユーザ数」と定義していたとします。この場合、ゲームAではアプリを立ち上げてホーム画面に遷移しなくてもアクティブユーザとカウントされることになるため、ゲームBに比べてアクティブユーザ数が多くなる可能性が大きいです。
単純にゲームAとゲームBのアクティブユーザ数を比較するのではなく、ゲームAのアクセスログからホーム画面にアクセスしたログのみを抽出して集計した値とゲームBのアクティブユーザ数を比較することで、定義が合っている状態で比較することができます。定義の違いを考慮せずに比較してしまうと、間違えた比較結果で間違えた判断が下される事態につながります。
上記のように、ゲーム間でKPIを比較する際には、片方の定義をチューニングしてもう片方の定義と可能な限り近づけように心がけましょう。

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