SONYはなぜGoProを作れなかったか?(WEDGE 8月号)/ニュースななめ斬りbyギックス

AUTHOR :  田中 耕比古

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田中 耕比古
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”目的”が明確でなければ、勝負しても徒労に終わる

本日は、WEDGE 2014年8月号の「SONYはなぜGoProを作れなかったか?(p.45-48)」をななめ斬ります。[追記:WEDGE Infinityで公開されていました。]

記事概要(※”超”意訳です)

  • GoPro(記事中ではゴープロと表記)の出荷台数がIPOに伴って公表され、台数ベースでソニーを抜いてビデオカメラ市場のトップに躍り出ていたことが分かった。ビデオカメラ市場の縮小に伴ってソニーの出荷台数が減少している一方、GoProは快進撃を続けている。
  • GoProは機能を絞り込んでおり、ズームはできない、液晶モニターもついていない、ブレ防止機能もない。これは、従来の「ビデオカメラ」を基準にすると「引き算」のように見えるが、少し違う。
  • GoProは、「サーフィンの凄い映像を撮影できるカメラ」をつくる、ということで開発されたため、「必要な機能だけ」を選んだ結果であって、引き算ではない。ゼロからの足し算。
  • 機能が少ないことが良いことなわけではなく、余計な機能がついていないことが素晴らしい。コンセプトが際立つ。顧客が求めていることを明確にし、それを満たすためのプロダクトを作ることが重要。
  • GoProの成功によって明らかになったのは、「特に新しい機能がなくても、新しいコンセプトの商品が作れる」「その商品は、3Dプリンタでモックアップを作り、クラウドファンディングで資金を募り、小ロットで生産できる工場に製造をアウトソーシングすることで事業化できる」ということ。
  • 日本企業も、折角の「資産(技術やリソース)」を活用して、飛躍してほしい。

GoProって凄い

既にご存知の事と思いますが、GoProというのは凄いモノです。

念のため、基礎情報をお伝えしておきますと、サイズは約 6cm x 4cm x 3cmで、重さは74g。小さいですよね。(使用時は、これにハウジングというカバーをつけるため、外寸は一回り大きくなり、重さも140g弱になります)

外観はこんな感じ。

HERO3+ silver

公式サイトより

このカメラの登場によって、安価に「無茶な」映像を取れるようになりました。壊れても惜しくない価格設定。レンズさえ遮らなければ、ガムテープでぐるぐる巻きにしても良いやという気軽さ。映像の世界を変えたと思います。

映像クリエイターの友人はさまざまな撮影にGoProを活用しています。また、別の友人は、プライベートでスキーを楽しむ際にGoProを装着しています。最近、犬に取り付けるマウントキットが発売されたようなので、僕も、このマウントを買って、実家の犬(イングリッシュスプリンガースパニエル)に装着させて高原を走り回る映像を撮影してみたいなと思う今日この頃です。ホントに世界が広がりますね。

世界中で、バカ売れしているのも納得です。

「目的」をセットしないと戦えない

WEDGEの元記事では、従来のIT系スタートアップだけではなく”モノづくり系”スタートアップが増加している状況や、事前設計主義から脱却する必要性などにも触れられており、確かにそうだなーと思うものの、今回は「必要な機能だけでプロダクトを作る」という部分に注目してお話を進めます。興味のある方は、是非、WEDGEのバックナンバーをお買い求めの上ご一読ください。[追記:WEDGE Infinityで公開されていました。]

さて、こういう話になると、いつも僕は、過去にもご紹介したマイクロソフト日本法人の元社長である成毛眞さんの「マーケティング辻説法」の一節を思い出します。

まずは「戦略(ストラテジー)」と「戦術(タクティクス)」の峻別だ。一言でいえば、競争相手が誰で、どの段階で相手に「勝った」とするかを判定するためのものが戦略。どうやって売るか、価格をいくらにするかという話が「戦術」だ。

「何を目指しているのか」「どうなったら勝ちなのか」を設定しないと、そこに至る道筋の設定なんてできません。(先日公開した ニュースななめ斬り|パノラマ日本史「関ヶ原の決戦」でも同じことを書いてますが。)

今回のケースで言えば、目的・ゴールが明確でないと、何が必要で、何が必要でないのかが見極められません。

最近、「仮説不要論」「データが答えを導く」という間違ったデータ解釈論が隆盛な気がしていて、いつも気になっているのですが「目的を設定しないで、データを眺めたら何か見えてくる」なんて都合のいい話があるわけない、ってのと同じです。まず、目的ありき、がホワイトカラーとして暮らす上での鉄則です。(関連記事:ギックスの本棚/1億人のための統計解析

元記事より引用します。

他社の競合商品と機能を比べた星取り表で負けてしまうという不安をぬぐい去ることができない。

こういう状況になるのは、「誰と戦ってるのか」が明確ではないからです。そして「どうなったら勝ちか」の設定がおかしい、もしくは、設定していないということです。

一方、GoProの機能の割り切りは、明確です。

モニターを見たりファインダーを覗いたりしながら撮影することが難しい状況が多いからそれらははじめから不要であり、そうなるとだいたいの方向に向ければ撮りたいものが画面に入るように広角のレンズが必要になる。もちろんズーム機能は必要ない。ブレ防止機能はぜひとも欲しい所ではあるものの、一般のビデオカメラについている手振れ補正機能ではアクションカメラの利用シーンでの激しい動きに対応するには不十分であり、中途半端なものは搭載しない方がいいと割り切ってしまう。

この割り切りは、「運動などを行いながら、その光景を撮影する」ということに特化しているからこそできるわけですね。反対に言えば、運動会での子供の動画を取りたいとか、そういう目的には向いていないわけです。(子供に装着する、というのはアリですけどね。)

要するに、プロダクト側が買う人を限定していて、分からない人・必要ない人は買わなくていい、ということです。「狙った人にだけ、ピンポイントで響くプロダクト」をつくり、「狙った人が買ってくれたら勝ち」という勝利条件を設定し、実際に勝利したのは、まさに”戦略的”だと思います。(この考え方は、ギックスの考えるHeadShotMarketingに通じます。)

余談ですが、こういう立ち位置に立てるのは、すでに、世の中に「一般的な動画撮影プロダクト」が溢れているからです。黎明期の製品領域では、ここまで割り切った目的特化型商品が流行るかは疑問です。プロダクトの置かれた状況を冷静に把握する事が重要なのは言うまでもありませんので、何卒ご注意ください。

日々の仕事だって同じ

この話は、商品戦略や経営レベルでの判断に限った話ではありません。日々の業務においても、同じことが言えます。

例えば、消費者調査をする際、「何を知りたいのか」をクリアにしないと始まりません。あるいは、コンサルに仕事を発注するときに「何が分かればいいのか」を明確にしないと思った成果は得られません。広告を打つ際に「誰に何を伝えたいのか」が無いとクリエイティブも出稿先も決まりませんし、データ集計の際にも「その数字を使って、どういう意思決定をしたいのか」が無いとただの数字遊びに終わります。

目的をクリアにするために

目的をクリアにする、と言われても、どうすればよいのか分からない、という方には、最初に下記3点を明らかにすることをお勧めしています。

  1. その仕事の「責任者(オーナー)」は誰か
  2. 責任者が報告する必要があるのは誰か
  3. 報告を受けた人は、何を判断するのか

これが明確になれば、「3」を業務の目的としてセットできます。

どうしても、近視眼的に「先輩」「直属の上司」を見てしまったりするものですが、もう一歩引いて、状況を俯瞰し「そもそも、これ、なんのためだっけ?」と問うことが、目的セットのコツになります。

セットした目的を忘れない

こうやって折角、目的を置いたのに、作業に埋没すると忘れてしまいがちです。この”目的”を常に意識していくことが重要ですので、その為のコツもご紹介しておきます。

  • 最初に、報告資料の「骨子」を作る=その分析・その作業の位置づけが決まる (関連記事:プレゼンのコツ|骨子を作る
  • 中間報告などのマイルストーンを決め、そこで「何を報告するか」を事前に周知する=そこまでに何をするかがブレにくくなる
  • 同僚とのピアレビュー(相互チェック)を行う=強制的に”客観チェック”を行う

つまり、「全体の中で、自分はどこにいるのか」を常に意識し、それを「客観的に判断する」ということですね。これらを意識していただくことで、業務遂行力は確実にあがります。

いきなりGoProは作れないにしても、日々の業務改善から始めていくことが、結果的に企業としての競争力強化につながると僕は思っています。本記事が、皆さんの業務遂行力向上のお役にたてば幸いです。

 

参考:SONYも頑張ってます

尚、9/4公開のGIZMODEの記事によると、SONYのアクションカム(HDR-AS100V)が、さらに小型化されるそうです。世界を席巻するという意味では、GoProに先を越されたSONYですが、アクションカムによって、どれぐらい巻き返すのか(あるいは、新たな市場を作るのか)には注目したいところですね。

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