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データインフォームド思考③:文系人材のリ・スキルは「データ×業務改善」から

AUTHOR :  田中 耕比古

これまでの2回()で、勘・経験・度胸に「データ」を組み合わせることの大切さ、および、データを用いる際の「文系ビジネスパーソン」のポジション取りについてご説明してきました。

本日は、文系ビジネスパーソンがとるべきポジション(=ビジネス人材)をしっかり狙っていくうえで、どのようなスキルを身に着けるべきなのかについて解説します。なお、今回も拙著 「仮説とデータをつなぐ思考法」 に基づいていますので、ご興味を持っていただいた方は、ぜひ書籍も一読いただければと思います。

データを駆使するビジネス人材になろう

前回ご紹介した通り、ビジネス人材はデータ分析をビジネスにつなぐ役割を担います。対となるのは、データを取り扱う役割であるデータ人材です。ビジネス人材は、ビジネス経験から培ってきた勘と経験を軸にした「仮説」を持ち、それをしっかりとデータで検証しながら「業務をより良いものへと変革する」「事業成長を推進する」ことを目的に活動します。

経験豊富なビジネス人材が、日々データを見て判断していくことのメリットは、

  • 昇進や移動に伴い「現場」から離れても、仮説(勘)を最新のものに保つ・更新することができる
  • 自信の勘・経験を、部下や後輩、あるいは別部門の人たちに、客観的で再現性のある情報として伝達できる

という2点です。

そして、これは若手社員や特定部門だけの経験しかない方たちにとっても

  • 自分がまだ経験したことが無い業務やシチュエーションについても、具体的な知識を身に着けられる
  • 隣の部署、店舗、工場などで何が起こっているのかを、データから類推可能となる
  • 職階や職種などの壁を越えて「同じ事実(データ)」に基づいて議論することが可能となる

といったメリットにつながります。

つまり、会社全体の知識・ノウハウの共有が加速すると共に、議論のレベルが底上げされるわけです。これが「データインフォームドな企業文化」が浸透した状態だと言えます。この状態を実現するために、できるだけ多くの方がビジネス人材を目指していくことが望まれます。

「リ・スキリング」はPythonやTableauだけじゃない

一方で、昨今「リ・スキリング」という言葉が注目を集めています。

しかしながら、リ・スキルの文脈においては、PythonやSQL、あるいはtableauなどのデータを実際に触る技術に注目が集まっています。しかし、これまで論じてきた通り、文系ビジネス人材が最初に身に着けるべきは、それらの技術ではないと私は考えています。

多くのビジネスパーソンは、日々、”事業推進活動”に従事し、価値創出に勤しんでいます。そうした人からすると、データを実際に触って、分析アウトプットを作り上げるというのは、なかなかハードルが高いチャレンジです。むしろ、その領域よりも、自身の日々の業務に近い「データを使って自らの業務をどう変えるべきか」を考える部分に注力するほうが、成果につながりやすいと言えるでしょう。

(なお、リ・スキリング文脈において、上述した分析スキルの他にも、デジタル技術もしくはデータを用いて「新しい価値を創造する」という、ハードルの高い「企画業務」を学ぼう、というお話もありますが、その場合も、日々従事している「事業推進活動」からは縁遠い領域のスキルになっているのは間違いありません。)

リ・スキリングにおける業務の位置づけ

関連記事) 考察:労働生産性向上に向けた”ビジネス人材”リ・スキリングの重要性

「仮説の鏡」としてデータを見る

何度も申し上げている通り、いきなりデータ分析技術を身に着けようとしなくても良いのです(もちろんしても良いです)。

ビジネスパーソンが最初にトライすべきは「仮説の鏡」としてデータを使うことです。自分の類推をデータ(事実)と照らし合わせる。これを意識してください。この活動がすなわち「データを使って考えを深める」ということです。この領域のスキルを鍛えれば、”データを読む” ことができます。

つまり、

  • 自分の見聞きした情報は、データで表現すると、どのようになるのか(自分の経験とデータの紐づけ)
  • 自分の感覚は、データで見ても正しいのか(データによる実態理解、感覚補正)
  • 見ず知らずの状況・状態を、データからを類推する(データからの類推)
  • 自分の知りたいことを知るために、必要なデータが何なのか分かる(データ分析の要件出し)

といったことが可能となるわけです。そして、こうした思考態度を身に着けると、データ人材との円滑なコミュニケーションが実現します。

データ”も”使うと、思考の幅が広がる

KKD(勘・経験・度胸)ベースで仕事をするのは、決して悪いことではありません。日々の業務の中で培ってきた経験、積み上げてきた知識は、非常に尊いものです。

ただ、それだけに頼るのをやめて、データの力 ”も” 借りましょう。

一方で、データの力だけに頼るのも愚かな行為です。データが無いと何もできない、ということではビジネスは回りません。

データと経験・知識は、どちらも重要な思考の材料です。あるだけの材料を使って、より良い成果を導き出す。この意識を持って日々の業務にあたっていただくことが「ビジネス人材」としてのキャリアを築くことにつながります。是非、トライしてみてください。

なお、本書「仮説とデータをつなぐ思考法」では、今回の連載の内容に加えて、組織におけるデータ共有、情報連携のあり方などにも触れています。また、実践的な仮説思考の例も挙げて解説していますので、よろしければ、お手に取ってお読みいただければ幸いです。

書籍のご案内

仮説とデータをつなぐ思考法 ‐Data-Informed‐(SBクリエイティブ)

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