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【後編】データがつなぐ顧客体験の深化 ― LINEミニアプリ×マイグルが描くCRM設計と“ゲーミフィケーション活用” ―

AUTHOR :   ギックス

前編より続く


リアルとデジタルをつなぐハイブリッド時代の顧客接点設計

吉田:
デジタルマーケティングの世界は、この数年で大きく進化してきました。
「どうしてここまで知っているんだろう」と思うほど、自分の興味関心に沿った情報がオファリングされてきて、驚きと、若干の怖さを感じることもあります(笑)。

そうした“デジタルの世界”が成熟する一方で、顧客との接点はリアルとデジタルの両方に広がっています。
例えばアパレルであれば、ECサイトというオンラインの接点もあれば、スタッフの対話や商品の試着が可能な、店舗というオフラインの接点もある。重要なのは、どのチャネルを経由しても、最終的に購買につながってくれることだと思います。

ただ、従来のデジタルマーケティングでは、一度顧客がオフラインに移ると、その行動が把握できず、接点が分断されてしまうという課題がありました。ECサイトで商品を閲覧し、店舗で試着や相談を経て購入に至ったとしても、そのプロセス全体を認識することは難しかったのです。

これからは、このリアルとデジタルが交差する”ハイブリッドな世界”において、オンラインとオフラインを一気通貫で捉え、顧客との関係を継続的に設計していくマーケティングが重要だと考えています。

店舗やアプリなど、どのチャネルを経由しても最終的に購買につながることが重要

関野:
おっしゃる通りです。
ただその一方で、店舗の担当者からすれば、店舗の売上を自分たちの評価指標として見られているため、どうしても部分最適になりがちです。

たとえば、店舗でスタッフが商品を案内し、後日お客様がオンラインで購入された場合、その売上はECの成果としてカウントされてしまう。
しかし、もしLINEなどを活用して「このお客様はこの店舗で接客を受けた」という情報を紐づけられれば、店舗としての間接的な売上貢献も可視化できるはずです。さらに、顧客とのコミュニケーションツールという観点でも“ハイブリッド”な発想が大切になってくると感じています。

LINEだけでなく、メールマガジンやネイティブアプリのプッシュ通知など、様々なチャネルが存在します。
その中で、すでにアプリのプッシュ通知を見ているロイヤリティの高いお客様に、同じ情報をLINEでも送るのはあまり効果が高いとは言えません。
むしろ、アプリの通知をオフにしていたり、あまり閲覧していないお客様に対して、「アプリにクーポンを配信していますので、ぜひチェックしてください」とLINEで促す―このように、複数チャネルの役割を掛け合わせて最適化していく、そんな“ハイブリッドなマーケティング”の世界が、これからもっと広がっていくと感じています。

ギックス吉田とLINEヤフー社関野氏
(左)株式会社ギックス Data-Informed事業本部 Business ExecutionDivision Division Leader
 吉田 周平
(よしだ しゅうへい)

(右)LINEヤフー株式会社 DXソリューション本部 APIソリューションマネジメント部 CXエグゼキューションチーム リーダー
 関野 聡史(せきの さとし)

吉田:
そうですね。その中でも、コミュニケーションツールとしてのLINEのシェアは本当に圧倒的だと思います。
最近では、店舗やスタッフとLINE公式アカウントでつながることが当たり前になりつつありますよね。QRコードを提示して「ここを読み取ってください」と案内するようなコミュニケーションも、すっかり一般的になりました。

こうした接点を活用して、「どの店舗に行ったか」という情報はもちろん、商品ごとにQRコードを設置して、お客様がそれを読み取ることで「この商品に興味を持った」というシグナルを得ることもできます。
オフラインの場でQRコードを読み取る、という行為のハードルが低くなってきたことで、そうした“自然な行動の中で情報を取得できる仕組み”が整ってきたと感じています。

関野:
QRコードの一般化に加えて、NFC(近距離無線通信)の浸透も着実に進んできていると感じます。
先日、都内のゲームセンターに行った際、NFCでスマホをタッチしてそのまま決済して遊べる仕組みが導入されていて、想像以上に多くの方が利用していました。

今期、当社でもNFCを活用した新しい仕組み「LINEタッチ」を発表しました。スマホをかざすだけでLINE公式アカウントやLINEミニアプリにアクセスできる、というものです。
これにより、 “自然な行動の中で”の情報取得が、よりスムーズに実現できるようになる、まさに今はその転換点に差しかかっていると感じています。

新規顧客を“データで拡張”する――広告×CRMが生み出す次の成長循環

吉田:
キャンペーンを実施する際に課題となるのが「新規顧客の獲得」です。
著名なアーティストが関わるようなエンタメ系の施策(※)であれば、たくさんのファンが一気に参加してくれますが、店舗業態やメーカーのような企業では、まずキャンペーンそのものを知ってもらう必要があります。

(※)「マイグル」がMrs. GREEN APPLE デジタルスタンプラリーに採用(2025.04.14)https://www.mygru.jp/customers/Ybv9j_SP

もちろん、既存顧客のロイヤル化も重要です。
ただ一方で、新規の流入やキャンペーン参加を促すこと自体が、今後のマーケティングにおいて非常に大事なテーマだと考えています。

そこでお伺いしたいのですが、まだ接点のないユーザーに対して、LINEのデータを活用したバナー広告で特定の興味関心を持つ層だけにキャンペーン告知を配信し、マイグルを通じて新たに友だち登録してもらう――そんなアプローチも有効だと思うのですが、いかがでしょうか?

関野:
その点では、昨年の弊社カンファレンスでアサヒビール様にご紹介いただいた事例が、とても示唆に富んでいると感じています。

一般的に、新しい商品やキャンペーンを展開する際には、「できるだけ多くの人にリーチしたい」という考えがあります。
一方で、その中でも特に関連商品を日常的に楽しんでいる層――つまり、参加意欲の高い方々を見極めて情報配信を行うことが重要です。

今回の事例をもとにすると、たとえば、ある広告配信で最初に10万人にリーチしたとして、最終的に購買まで進んでくれた人が1,000人だったとします。
一見すると「1,000人しか残らなかった」と捉えられがちですが、実はその1,000人こそが非常に価値の高い顧客層です。

重要なのは、そのコアとなる1,000人の「属性」や「興味・関心」をしっかり分析し、共通点を抽出したうえで、同じような傾向を持つ新しい顧客層にアプローチしていく――これが、いわゆる“類似拡張配信”の考え方です。

吉田:
なるほど。最初は「広く当てる」フェーズから始まり、徐々に“実績に基づいた精緻なセグメント配信”へと移行していく、という循環により、広告の効率はどんどん高まっていくわけですね。

類似拡張配信の模式図

関野:
はい。CRMの世界ではどうしても“既存顧客の中での最適化”――いわば「縮小最適」に陥りがちな傾向があります。
今回ご紹介した取り組みは、まだ一部の企業様で実証実験的に進めているものですが、将来的には、単純に顧客ロイヤルティを高めてターゲットを絞り込むだけのCRMから脱却し、より発展的な形を作っていけるのではないかと考えています。

吉田:
消費者ニーズが多様化し、商品・サービスの種類もどんどん増えていくなかで、消費者自身も「どれが自分に合うのかわからない」状態になっています。マスマーケティングだけでは適切な情報が届かなくなりつつある今だからこそ、きちんとしたセグメンテーションのもとで、顧客一人ひとりに合った情報を届けることが、より大切になってきますね。

マイグルが得意とするのは、オフライン・オンライン両方の行動データを取得・分析し、そこから得られた示唆をもとに施策へつなげていくことです。
究極的には、こうしたデータを活用して“リアルタイムでの1to1コミュニケーション”を実現していく――この領域こそ、私たちの強みであり、目指したい方向だと考えています。

関野:
ちなみに、新規顧客の獲得という観点では、実は“オフラインでの接点”が最も強いんです。
アプリのダウンロードやLINEの友だち登録も、やはり店頭でスタッフの方が直接お声がけするのが最も効果的です。
しかしメーカー様の場合、スーパーマーケットなどを通じて商品が販売される構造上、“詳細な顧客データを自社で取得しづらい”という課題があります。

そこで、従来から当社が運営する「LINEで応募」というキャンペーン情報配信アカウントと、メーカー様のLINEミニアプリを連携させる取り組みも進んでいます。
この仕組みにより、キャンペーン参加意欲の高いユーザー層に対して、ミニアプリを通じた参加導線を提供できるようになりました。
このように、様々なソリューションを組み合わせて、新規顧客獲得の可能性を広げていきたいと考えています。

“楽しさ”が行動を変える、ゲーミフィケーションが育てるロイヤル顧客

ゲーミフィケーションが顧客のロイヤル化につながる

吉田:
スーパーやコンビニで買い物をすると、レジから出てくるクーポンや、ハガキで応募するタイプのキャンペーンなど、紙媒体もまだ多く存在しています。クーポンは購買データなどをもとにある程度セグメントして出力されていますが、結局使われずに終わってしまうことも少なくありません。

もちろん、対象年齢層や地域性など、様々な理由から紙媒体が適している場合もあります。ただ、よりユーザーに響く顧客体験を設計するうえでは、LINEミニアプリとマイグルで提供しているデジタルスタンプラリーの仕組みが有効だと感じています。

ポイントプログラムの世界では「いつの間にか勝手に貯まっていたが、自分では把握していない」「いざ使おうとアプリを開くが、ログインの手間が障壁となって離脱してしまう」ということも起こっています。 

やはり、「スタンプを自分の手で主体的に貯めている」「あとこれだけで達成して特典がもらえる」といった実感やモチベーションとともに、楽しみながら続けていただける“ゲーミフィケーション”の要素を取り入れることが大切です。

関野:
「お客様は、ポイントを増やせば行動してくれるわけではない」という話は、小売業の現場でもよく伺います。マイグルの「ゲーミフィケーション」の要素を活かした顧客体験の設計は、今後ますます重要になると感じています。

吉田:
先の特典やゴールが明確だからこそ、「もう少し頑張ろう」と思える。その仕組みが見える化されていることで、人は自然に動いてしまうんですよね。
これこそまさに、ロイヤルカスタマー化につながる行動変容だと思います。

データをつなぎ、体験を進化させる ――「LINEミニアプリ×マイグル」が描くこれからのマーケティング

吉田:
マーケティングの選択肢が急速に増え、テクノロジーも日々進化する中で、「“全体最適”や“ハイブリッド”と言われても、何をどう組み合わせて、どのように設計すればいいのか」と感じる企業様も少なくないと思います。

だからこそ、私たちギックスはLINEヤフーさんと連携し、マーケティング活動全体を踏まえた包括的な解決策を提案していきたいと考えています。
自社サービスだけを紹介するのではなく、「LINEにはこういう仕組みがあります」「これと組み合わせればより効果的です」といった形で、クライアントの成果を第一に考えた提案を続けていきたいですね。

関野:
はい。クライアントの課題を本質的に解決していくには、LINEヤフー社が提供しているプラットフォームだけでは不十分です。
弊社が出しているプラットフォームに、マイグルのような別の強みを持つツールを合わせて活用いただくことで、企業と顧客の“つながり方”をより豊かにしていく。そのうえで顧客体験の質を高めながら、“次の一手”やクライアントの成果につなげていきたいですね。

吉田:
企業が保有するファーストパーティデータ(自社で収集したデータ)に、マイグルが取得する顧客の行動データ、そしてLINEプラットフォームのデータを掛け合わせることで、より確度の高い施策を実現できるはずです。

「顧客一人ひとりのLTVを高める」という大きな目的を達成するためには、キャンペーンを単発の“打ち上げ花火”で終わらせてはいけません。
様々な顧客接点とデータを活用し、広告施策・キャンペーン・セグメント配信などを積み重ねながら、中長期的なマーケティングモデルとして体系化し、発信していく。
それこそが、両社にとっての新たな価値提供になると確信しています。これからも引き続きよろしくお願いいたします。

関野:
こちらこそ、よろしくお願いいたします。


※マイグルやLINEミニアプリの詳細は、各公式サイトをご覧ください。

※記載内容は2025年12月時点のものです。

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