計画・非計画を”しっかりと想像”できれば、打ち手を決められる:誰に何を伝えたいのかを考えよう

AUTHOR :   ギックス

本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)

ターゲットとメッセージを決めて、施策を打てば、効果検証ができる!

前回は「計画購買と非計画購買の境界線」について考えました。今回は、その「境界線」に対して、どんなことを考えていくべきなのか、解説します。

境界線は”多段階”になってる

前回記事で、以下の画像を掲載しました。
plan_nonplan_purchase03
この図では、計画・非計画の境界線は「多段階」になっている、ということを述べています。そして、前回の締めくくりとして、これを「××計画」=「○○非計画」と読み替えて考えようというお話をしました。即ち、

  • 入店計画購買=便益非計画購買
  • 便益計画購買=カテゴリー非計画購買
  • カテゴリー計画購買=ブランド非計画購買
  • ブランド計画購買=(非計画要素ゼロ)

ということになります、と。
前置きが長くなりましたが、上記段階別”非計画購買”に対して「何を伝えるべきか」を本日は考えていきましょう。

伝えたいことは何か?

1.顧客が「伝えてほしいこと」は何か?

まずは「王道」として、顧客が知りたいことに愚直に答えていきましょう。

  • 入店計画購買=便益非計画購買 のお客様には”こんな便益がありますよ”とお伝えするべきです。例えば、エントランス付近に「おでんであったまろう」とか「寒い日には暖かい缶コーヒー!」とか、「肉まん!あんまん!ピザまん!ぜんぶ取り揃えてます!」とかいうのも(商品の皮を被って)便益を伝えていることになるでしょう。
  • 便益計画購買=カテゴリー非計画購買 のお客様は、すでに「寒いから暖かいものが良い」というように”獲得したい便益”が明確になっているわけなので、鍋料理やスープなどを進めていくことになります。これは、具体的にいえば、来店客に求められている”便益”を想像して、適切なカテゴリーのキャンペーンを張ることになります。
  • カテゴリー計画購買=ブランド非計画購買 のお客様は、カテゴリーは決まっているわけなので、当該カテゴリーに向かって、いかに効率的に導線を設定してあげるかということでしょう。POPや誘導用の看板などが効果を生むと思います。
  • ブランド計画購買=(非計画要素ゼロ) は、もっとピンポイントで「何を買うか」が決まっているので、あとは”探しやすい環境”をつくることになります。ドン・キホーテのように戦略的に店内の動線長を伸ばしたいなどの調整をするのは構いませんが、目的買いの顧客に対しては、愚直に”探しやすい環境”を作る方が良いと思います。(ドン・キホーテやヴィレッジ・ヴァンガードなどは”ブランド計画”の人にとっては、厳しい店づくりをしていると思いますね)

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この時点で、考えるべきことは「自社/自店のお客さんって、どのステージのお客さんが多いの?」あるいは、「どのステージのお客さんにたくさん来てほしいと思ってるの?」ということです。これが「戦略」です。どういうお客さんがたくさん来て、どういうお金の使い方をしてくれるのが”理想”なのか。その理想の姿=”勝ち”の定義が「戦略」であり、そこにむけて、どういう店づくりをしていくのかというのが「戦術」に落ちていくわけです。(上述の例だと、ドン・キホーテやヴィレッジ・ヴァンガードは、おそらく「入店計画=便益”非”計画」あるいは「便益計画=カテゴリー”非”計画」の人たちが対象なので、それに応じた店づくりをしていると考えられるわけですね)

2.自社が伝えたいこと、は何か

ここまでは「お客さんが知りたいこと」に対して、何を伝えるのか、というお話でした。これは「相手を慮る、受動的な思考」です。
しかし、利益最大化を目指す”事業体”として小売店を捉えると、「積極的にお客さんに伝えたいこと」があるべきです。これは「能動的な思考」となります。
そうすると「お客さんが買いたいと思っているもの」だけではなく「是非、買ってほしいもの」をお勧めしていくわけですね。これは「スイッチ(乗り換え)の喚起」ということになるでしょう。
スイッチの喚起、という観点で見ると、先ほど述べていた「決めている人にはより固い・具体的な情報を提供する」とは逆の発想で「入店時に何を買うか決めていた=より深いレベルで”計画”していた人に対して、その計画より前段でのスイッチを喚起する」ということになります。ここでは、最終段階まで決めていた=ブランド計画の来店者を例にとってみます。
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先ほど述べたとおり、ブランド計画来店者に合わせると、「その商品がどこにあるか」を伝えるのが王道ですね。
この人に、違うものを買ってもらうのは「ブランドスイッチ」あるいは「カテゴリースイッチ」となります。具体的には、鮭茶漬けふりかけを買いに来た人に、梅茶漬けを買わせたり(ブランドスイッチ)、スープパスタの素を買わせたりする(カテゴリースイッチ)ということです。このスイッチは比較的イメージしやすいでしょうけれども、実際に、これらを意図的に起こそうとしているインストア・プロモーションがどの程度あるかは、疑問が残るところです。
ただ、このスイッチの概念は、便益のスイッチに適用するのは難しいでしょう。便益スイッチは「目的」のスイッチであり、カテゴリースイッチ・ブランドスイッチは「手段」のスイッチだからです。「お腹すいた=何か食べたい」という人に「いや、あなたはお腹がすいていなくて、喉が渇いているのだ」というのはなかなか難しそうだ、というとご理解いただけるかと思います。
そうすると、この場合には「便益の追加喚起」を狙うのが良いでしょう。例えば、「お腹すいた=何か食べたい」という便益を持っている人に「一緒に飲み物があった方が良いよね?」は便益追加ですね。この便益追加が起こると、その追加喚起された便益は「カテゴリー”非”計画」の状態ですので、その顧客にどういうカテゴリーを提案すべきかという勝負になります。

伝えたいことを、ちゃんと伝えていますか?

このように「伝えたいこと」が明らかになった暁には、それを伝えるためのプロモーション(インストアに限らず、すべてのプロモーション)が”どうあるべきか”を決めることができます。これは非常に重要なプロセスです。なぜなら、この”プロモーションはどうあるべきか”が明らかになって初めて、”そのプロモーションは妥当だったか”を検証することができるわけです。
よく「プロモーションの効果検証をしたいが、どうしたらよいか」というご相談を耳にするのですが、「そもそも、何が効果なんでしたっけ(=どうなっていることを期待していたんでしたっけ)」とお聞きすると、明確な答えがなかったり、あるいは、最終売上があがるはず、という”遠い指標”が出てきてしまうことが多いです。
どういうお客さんに、何を伝えたいのか。そして、その結果、どういう行動をしてもらいたいのか。という狙いを定めた施策を考えるために、今回の「段階的な計画・非計画の境界線」という概念を活用していただければと思います。何も、性・年代だけが、顧客を分ける軸ではないのですから。

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