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「一休.com」、サイト上の検索データに基づく「リアルタイムレコメンド」機能を導入(日経デジタルマーケティング5月号)|レコメンドの目的とアルゴリズムについて考える(グラーフの眼)

AUTHOR :   ギックス

本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)

レコメンドの目的を考えて、採用するアルゴリズムを決める

日経デジタルマーケティング5月号P23に掲載された記事『「一休.com」、サイト上の検索データに基づく「リアルタイムレコメンド」機能を導入』から、レコメンド機能の活用について考察します。

記事要約

高級ホテル予約サイト「一休.com」では、今年の2月から、「おすすめホテル・旅館」というレコメンド枠の表示を、ユーザの予約履歴を基にした表示から、検索結果に応じて即時に変える「リアルタイムレコメンド」に変更しました。
一休.comの優良顧客にはホテルを「指名買い」するような会員が多く、こういった会員は満室だと他のホテルは探さずに離脱してしまう傾向にありました。この離脱を防止し、CVRの向上を狙うことが、「リアルタイムレコメンド」を導入した目的です。

“優良顧客”向けに作られている「リアルタイムレコメンド」

「一休.com」のサイト(www.ikyu.com)にアクセスして「リアルタイムレコメンド」の内容を確認すると、直前に詳細ページを閲覧したホテルと関連度の高いホテルが詳細ホテルページのサイドバーやトップページの「おすすめホテル・旅館」に並ぶ仕組みであることがわかります。一休.comにとっての優良顧客である「指名買い」ユーザにとって、この「リアルタイムレコメンド」は「ホテル名で検索→希望日が満室と知り代替案を探す必要が出る→レコメンド機能で代替のホテルを知る→代替のホテルを予約」という流れで活用できます。
一方で、「日時・地域など条件指定してホテル一覧を表示→一つ一つホテル確認しながら予約」という流れで利用しているユーザにとっては、現状の「リアルタイムレコメンド」でレコメンドされているホテルを見に行くことはまず無いでしょう。このように、「リアルタイムレコメンド」のアルゴリズムは、一休.comの優良顧客である「指名買い」タイプに合わせたものとなっており、理にかなっています。(現状導入可能なアルゴリズムに合うのがたまたま優良顧客の「指名買い」タイプだった、という可能性もありますが・・・)
レコメンドアルゴリズムの1つの理想形は、全ユーザに向けて的確なレコメンドが出せることでしょう。ただ、一休.comのように、「指名買いユーザをターゲットにする」という明確な戦略がある場合には、ターゲットを広げないほうがよりユーザに”刺さる”レコメンドが出せるはずです。

現状は「商品間の関連度」に基づくレコメンド。「ユーザ間の関連度」に基づくアルゴリズムへの改善が必要

レコメンドアルゴリズムには、 – 決め打ちレコメンド – 商品間の関連度に基づくレコメンド  – ユーザ間の関連度に基づくレコメンド があります。
一休.comのサイトを確認したところ、現状のアルゴリズムは、「商品間の関連度に基づくレコメンド」であると推測できます。すべてのユーザの利用履歴や閲覧履歴などからホテル同士の関連度をあらかじめ計算しておき、閲覧されたホテルと関連度の高いホテルを表示するというものです。
しかしながら、「指名買い」ユーザが各ホテルを選ぶ理由は様々です。全ユーザで”平均化”された関連度では、各個人に合ったホテルを的確にレコメンドできるとは思えません。一方で、「ユーザ間の関連度に基づくレコメンド」は、購買履歴や閲覧履歴からユーザの好みを判別して、似た好みのユーザが利用しているホテルをレコメンドするというアルゴリズムになります。このアルゴリズムであれば、「指名買い」ユーザをより満足させることのできるレコメンドが出せるのではないでしょうか。
記事中では、

表示するホテルを選ぶロジックを、購買や地域以外の閲覧データなどを加味したものに変更するなどして、レコメンド機能をさらに強化。CVRの一層の向上につなげていく。

とあり、一休.com側もこの課題を認識しているようです。

検索履歴情報と紐づけることで、より精度の高いレコメンドへ

もし、「ユーザ間の関連度に基づくレコメンド」でレコメンド内容を決めるのであれば、ぜひ活用したいデータが検索履歴情報です。
検索履歴情報には、ユーザの”好み”に関する情報がたくさん詰まっているはずです。例えば、ホテルの検索画面では、検索の条件を入力する事ができますが、ここにはユーザの趣向がダイレクトに反映されます。実際に、一休.comのホテル検索画面では、「部屋のこだわり」「施設のこだわり」を選べるようになっています。検索履歴情報を利用履歴情報と組合せて、ユーザの関連度を求めることができれば、より精度の高いレコメンドを出すことができるでしょう。
現在では、機械学習の実用化が進んできており、ここで書いたようなレコメンドアルゴリズムの実現も可能ではないでしょうか。利用できるレコメンドアルゴリズムは多様化しているので、レコメンドにより顧客を動かすためには、どのようなデータを使い、どのようなレコメンドアルゴリズムを採用すべきかを考えることがより重要になってきていると言えるでしょう。

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