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【前編】約300万ダウンロード「WESTER」の“生みの親”JR西日本内田修二氏が語る「お客様志向」の実践力

AUTHOR :   ギックス

JR西日本が提供する移動生活ナビアプリ「WESTER(ウェスター)」。MaaS(Mobility as a Service)アプリとして2020年9月にリリースされてから会員数を伸ばし、2023年9月現在でWESTERアプリダウンロード数は約270万件、グループの共通会員であるWESTER会員数は約800万人にものぼっています。

その成長を裏側で支えたのがギックス。2021年に「マイグル」を導入いただき、同年8月京都サンガF.C.ホームゲームにてWESTER de スタンプラリーを実施しました。これを皮切りに、2年半の間で約160ものマイグルキャンペーンを実施いただくことになります。

大小さまざまな企画を実施し、取得できたデータで分析を行い、次の新たな企画や開発に活用する――そうした一連のPDCAが好循環を生み出し「WESTER経済圏」を創り出しています。どのような過程を歩んできたのか、WESTERをリリース当初から推進してきたJR西日本 デジタルソリューション本部 WESTER-X事業部 次長 内田修二氏と、ギックス 代表取締役COO/Data-Informed事業本部長 花谷慎太郎が対談しました。

「WESTER」の船出・コロナ禍で移動が制限される中…

内田:WESTERのリリース時はコロナ禍でした。MaaSという時代の潮流に乗るものであり、マスコミにも大々的に取り上げていただき、華々しくデビューさせていただきましたが、提供しているコンテンツもまだまだ不十分で、1日のダウンロード数が100以下を記録する日々が続くという悲惨な目に遭いました(笑)。やはり緊急事態宣言などで人流が無くなってしまい、「目的」の無い人が電車に乗らなくなってしまった。移動をシームレスにするだけでは人は動かない、では、その「目的」をWESTERでどのように創出するか?とマイグル導入前からずっと考えていました。

JR西日本では「WESPO(ウエスポ)」とグループ商業施設の会員向けアプリを2019年にリリースしていましたが、そこで試行的にマイグルを使っていたんですね。WESPOでの体験創出やデータ活用のサイクルを、WESTERでも活用できるのではないかと思ったのが2020年度の終わり。やるのなら藁にもすがるつもり、ガッツリやろうと、部分的にではなく完全接続を決めました。アプリを開いてすぐのホーム画面に「おトクにGO!」というメニューを作って、マイグルの可能性に賭けてみようというのがスタートでした。

西日本旅客鉄道株式会社
デジタルソリューション本部 WESTER-X事業部 次長 兼 関西MaaSプロジェクト マネージャー
内田 修二氏

2002年に西日本旅客鉄道株式会社に入社、福知山支社に配属後、運転士や営業を経て、総合企画本部にて運輸調査や経営企画を担当。2016年には日系商社のブラジル現地法人へ出向。2019年に帰国後、鉄道本部技術企画部(技術収益化PT)兼オープンイノベーション室担当課長、総合企画本部MaaS推進部課長、デジタルソリューション本部課長を歴任し、2024年4月より現職。

花谷:そうでしたよね。最初から完全接続という形を取っていただきとても有難かったです(笑)。2021年夏に接続してから、いきなりマイグルキャンペーンを半年間で20件くらいやっていただいたんですよね。正直、最初はそんなに数ができると思っていなかった。

内田:大阪環状線活性化、大手テーマパークとの相互送客、それから山口県の観光需要創出などマイグルを使って、色々とご一緒させていただいて。それと同時期に、別プロジェクトでICOCAをどのように活性化するか?というテーマで分析をかけていました。WESTERを開いて、鉄道に乗って、目的地に行って、お買い物をするという体験設計・カスタマージャーニーを設計して、ICOCAも活用しながらモビリティの体験を活性化させていこうと。その中で良かったのは、WESTERの「おトクにGO!」を押したらすぐに「マイグル」に飛ぶ設計にしたことでしょうか。

花谷:それはめちゃくちゃ大きかったですよね。WESTERはマイグルの入り口を設置しているだけなので、新しいキャンペーンを実施するにあたってWESTERの開発やアップデートを行う必要がない。マイグル側はWebViewで独立して新しい企画を追加できる形にしました。

内田:アプリのアップデートは手間で、コストもかかるので、マイグルはデータは完全接続、コンテンツ設計はアプリと独立する形として新しい企画をどんどん打ち出せたのがよかったですね。

WESTERに対するマイグル連携の概要:WESTER上の「あなたへのおすすめ」や「おトクにGO! 」からマイグルに連携できる形になっている

“MaaSアプリは収益化できない”という常識を打ち破るために

内田: WESTERは、MaaSというコンセプトを実現するために、自社グループだけでなく、他社様も参加しやすいようにというビジョンがありました。もともと「WESTER」という名前も、普通に考えると「JR西日本アプリ」という名前をつけたくなるのですが、そうなるとどうして外から参加しづらくなってしまう。そこで「WEST」を「MASTER」するという意味合いを込めたアイデアを若いメンバーが出してくれて、社内を説得してユーザーさん目線のネーミングにしたんです。

花谷:そのおかげで、かなりサードパーティーコラボのマイグルキャンペーンも他社様にやっていただいて、日本コカ・コーラさんやセブン銀行さん、京都サンガさんと、最初から本当に多かったですよね。

内田:完全接続という形で、データをお預けできて分析結果からのPDCAサイクルが高速化できたのも大きかったです。我々のCVC(JR西日本イノベーションズ)がギックスさんに出資をしているのもありましたが、データを扱う技術がすごく優れていたので、自前よりもオープンイノベーション型でやったほうが早く進むだろうと。それがお互いの成長に繋がればWin-Winだということで。

花谷:当時ICOCA利用を活性化するというミッションもお持ちで、その文脈で、マイグルを企画出来たのもよかった。ICOCAでユーザーさんが何かしらのアクションをしたら、ミッションクリアでスタンプが付くという機構が作れたので。そのあたりは、“ICOCAの活性化はしっかり仕組みを作って連携する”、“それ以外の部分はマイグルのデフォルト機能を使う”など、うまくバランスを取って設計いただいたのが良かったかもしれません。

株式会社ギックス
代表取締役COO/Data-Informed事業本部長
花谷 慎太郎

京都大学工学部卒業後、日本工営株式会社、IBM Business Consulting Services 社(現日本IBM株式会社)を経て、2012年、株式会社ギックス創業メンバーとして取締役に就任。

内田:そうやって軌道に乗ってきたら、2022年度はマイグルキャンペーンを100やれという上司からの冗談とも受け取れない発言が(笑)。この目標をどう達成するかと考えた時に、これはプラットフォームとして開放すれば”量産”と“収益”が両立できるんじゃないかと思ったんですよね。もともとMaaSというのは“収益化できない”と言われていますが、僕としてはWESTERで収益を生み出したかった。

それで日本旅行さんを通じて観光の案件を取って来ていただいたり、事例ができてきたところで当社でも支社を取りまとめている地域共生部門が“地域と展開したい”と言ってきたりと、徐々に色々なプレイヤーを巻き込んで広がってきた。そんな中で鉄道マーケティング部門から「サイコロを使った企画(サイコロきっぷ)を作りたいが、デジタルを活用して実現する良いアイデアがないか?」と相談が来たんです。このとき「マイグルを応用したらできるのでは」とピンと来ました。

「サイコロきっぷ」のヒット、多様なアイデアが集まるように

花谷:内田さんが画を描かれて、これなら実現できるんじゃないかという話になって。第1弾は2022年の7月でしたが、これがバズったんですよね。おそらく当時WESTER×マイグルで史上最大の参加者を集めたんじゃないかと。

内田:そうなってくると、鉄道マーケティング部門もWESTERを積極的に使っていこうという話になってきて、もともとのIPを使った企画――たとえば名探偵コナンのキャンペーンなどもWESTERに寄せてくれるようになったり。なんでも紙でやるという文化だったのが、変わってきましたね。

マイグルがすごく良いのは、企画~設計~実行~評価が詰まっていて、これを一人の担当者がやり遂げるとひとつのプロジェクトを完遂したことになる。セブン銀行さんと協業させていただいたプロジェクトは、当時3年目のICOCA担当社員が持ち込みでやってくれて。外部や施設の調整、実際にオープンして、もしエラーがあればサポートを行い、終わったらデータを読み解いて報告と、プロジェクトマネジメントの縮図になっていたんですよね。社員教育にもすごく良い。僕自身も色々なアイデアがあふれ出てくるので、ギックスさんに相談しまくっていました(笑)。

花谷:ICOCAの利用とスタンプを紐づけた以外にも、GPS、歩数、動画、抽選会など、新規の開発要素は多かったですね。当初から、毎週2時間の全体定例会議を行っていたんですが、JR西日本様から参加されていたのは、最初は内田さんと周辺の方々だけだったのが、外部の方も入ってどんどん裾野が広がって、発言する人もアイデアも増えてきて。でもそうしたアイデアが技術に繋がっているんですよね。

内田:例えば抽選会を1つやるにしても、かつてはユーザーさんにフォームを入力してもらって…とやっていたのが、WESTERでID連携する機能ができたので、であればいちいち入力の手間をかけずにWESTER会員IDにある情報を活用した方がコストもUI的にも良いよねと。そのように、大小さまざまな改良を重ねていきました。

後編へ続く

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