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中国経済の停滞を考えさせる幾つかの理由|馬場正博の「ご隠居の視点」

AUTHOR :   ギックス

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ギックス

15年ぶりの中国訪問で思うこと

上海を訪ねてきました。上海には8万人の日本人が在住しており、日本以外では世界最大の日本人都市です。今さら私が、目を見張る上海の発展ぶりや、いたる所で続いている建設工事を見て不動産バブルの崩壊の危険の報告をする意味は何もないでしょう。

しかし、わずか数日の滞在でしたが、2000年に北京を訪れて以来久しぶりの中国旅行はそれなりに考えさせるものでした。私が宿泊していたのは旧フランス租界にある上海の中心部のホテルでしたが、付近にはプラダ、ベルサーチなどの高級ブランドショップ、それも東京のものより大規模なものが並んでいます。朝でスターバックスでコーヒーを買い、散歩がてら見る並木道を通勤に急ぐ人達の風景は東京と変わりません。

細かく見れば服装は男女とも何となく野暮な印象ですし、女性の髪形、化粧などは東京の方が洗練されています。それでもその差は大きなものではありません。私が初めて中国を訪れたのは1985年の北京でしたが、その時は女性で化粧をしている人はほとんど皆無でしたし、夜ホテルの窓から外を見るとネオン一つない街並みは驚くほど暗いものでした。それと比べれば現在の上海は中国最大の都市というより、東京やニューヨークとの共通点の方が目立つ大国際都市です。

それでも中国が共産党という巨大な権力による厳しくコントロールさせられているのはネットをアクセスすると実感されます。まず、グーグルが使えません。私はいくつものメールアカウントをすべてGMAILに転送するようにしているのですが、GMAILも見られないため、電子メールをまったく見ずに何日も過ごすというここ10年ではなかった経験をさせらることになってしまいました。

グーグルだけでなく、携帯電話も日本のものはそのままでは使えず、ラインも本当に時々なぜか使用できるタイミングがあるのですが、ほぼつながりません。試しにエロ画像のサイトへのアクセスをしてみましたが、これも私程度の知識の持ち主ではアクセスは不可能でした。

グーグルがアクセスできないことがどれほど経済活動でマイナスなるかはわかりません。エロサイトの遮断も子供を持つ親にはむしろありがたいくらいかもしれません。それでもインターネットのような世界を一つにする技術に中国が頑固に抵抗を続けていることは厳然たる事実です。

かつて中国が開放改革路線に舵を切って経済発展を目指した時、一党独裁で民主主義を許さない国で経済発展は難しいだろうと多くの人が指摘しました。しかし、今や中国のGDPは日本をはるかに超え、アメリカに迫ろうとしています。中国の製品は世界に溢れ、中国経済の停滞は世界経済にとって脅威になるとまで言われるようになりました。民主主義や自由がなくても経済発展が可能だったということになります。それでも私には本当にこのまま中国は自由に大きな制限を加えたまま発展を続けることができるかどうか疑問に思います。

中国は日本と比べはるかに汚職が多い国です。それも業者に便宜を図って数十万円を受けとるというレベルではなく、経済活動には一種の税金のように袖の下を役人に払うことが必要です。これは役人だけでなく企業でも同様で、購買権限を持つ立ち場になると月収の数倍もの賄賂を毎月業者から振り込ませるというのは普通に行われています。

このような汚職体質と自由や政府への批判に制限を加える制度と結びつくと、権力を握るものは批判を受けることなく汚職を続けることが非常に容易になります。また、政府や企業にとって都合の悪いことを隠蔽することもずっと簡単です。

今年、天津で起きた爆発事故は当局の17人死亡という発表に対し、数万人が犠牲になったという説が国民の間で根強く語られています。事実、中国政府は爆発事件の際、50のウェブサイトと360のSSNアカウントの凍結をしたと伝えられています。インターネットの自由な情報伝達を中国政府が嫌っていることは間違いありません。

政府が公式の報道では都合の良い事実ばかりを流すことになると、報道は信用されず逆に巷の噂、場合によれば流言飛語の方が信頼されるということになります。第二次世界大戦中、日本軍の被害を隠し誇大な戦果ばかりと軍が発表しつづけたため、戦後「大本営発表」は誇大宣伝と同じ意味で使われることになってしまいました。中国政府の発表は基本的に大本営発表と変わらないように国民から見做されているということです。

権力者が旨い汁を吸い、国民は絞り取られる一方というのは、経済発展が続き国民が豊かになっていっている間は大きな問題にはなりにくいでしょう。一般の国民が政治的な関心を持つことは、日々の生活が無事で豊かであればあまりありません。しかし、ひとたび経済発展がスローダウンし失業者や生活困窮者が増えると、報道の自由がないことは不満を鬱積されることにつながります。

政府が強権的であることは急速なインフラ整備には有効である場合があることは確かです。上海の高速道路網は東京より道幅が広く、東京がいまだに完成していない都市を取り巻く環状道路も完備しています。成田空港を田舎のみすぼらしい空港のように思わせる巨大な上海浦東国際空港と30km離れた都心を7分半で結ぶリニア鉄道で車内に掲示される400kmの速度メーターを見ると、中国の方が日本よりはるかに効率的に経済運営を行っているように思えてきます。

しかし、インフラ投資は極めてインフラが貧弱な時は高いリターンがあっても、次第に収益逓減の法則に支配されます。電気もない、道路もない、港もないという状況では何倍、何十倍もの経済的効果があるインフラ投資も次第に投資に見合った効果は得られなくなります。中国の経済成長がスローダウンしつつあるのは、もはやインフラ投資の効率的な成長エンジンは動きを止めつつあることを示しているのでしょう。

開発独裁型の経済発展が難しくなれば、経済を発展させるのはより自由な経済活動です。その経済活動に汚職が消費税のように組み込まれてしまっており、それが極めて不公平な分配をもたらしているとすれば、これからの経済発展は少なくとも国民の中の大きな軋轢を伴うものになるのではないでしょうか。

日本では中国に対する警戒感や敵意から必要以上に中国バブルの崩壊のような中国弱体化論に与する人が多いのは事実です。中国経済が弱体化しつつあるというのは、少なくとも上海の高層ビル群を見ている限りあまり信じる気にはなりません。しかし、自由なしでどこまで中国がこのまま経済成長を続けるかは、やはり疑問です。

上海から帰りの飛行機便が成田に着くと、今まで溜まっていたGMAILへのメールが嵐のようにスマホの受信ボックスに表示されてきました。入国手続きの長い列で一つ一つのメールを読みながら、あまりのメールの量に中国にはあまり行きたくないなとつい思ってしまいました。

(本記事は「ビジネスのための雑学知ったかぶり」を加筆、修正したものです。)


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馬場 正博 (ばば まさひろ)

経営コンサルティング会社 代表取締役、医療法人ジェネラルマネージャー。某大手外資メーカーでシステム信頼性設計や、製品技術戦略の策定、未来予測などを行った後、IT開発会社でITおよびビジネスコンサルティングを行い、独立。

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